「素人でもクソだとわかる」パリ五輪、負けた選手が叩かれた背景。日本にある3つの「引き金」

AI要約

パリ五輪での日本選手の活躍と誹謗中傷の問題について

バレーボール男子日本代表や他選手への誹謗中傷の実例

アスリートを傷つける行為の背景と問題点について

「素人でもクソだとわかる」パリ五輪、負けた選手が叩かれた背景。日本にある3つの「引き金」

金メダル20個、銀メダル12個、銅メダル13個――海外で行われた大会としては、日本が過去最高のメダル数で幕を閉じたパリ五輪。陸上競技の北口榛花選手、飛び込みの玉井陸斗選手、レスリング78キロ級の鏡優翔選手、近代五種の佐藤大宗選手など、史上初の競技でメダルをもたらした選手も多い。また、メダルを取らなくても、自力で五輪出場を果たした男子バスケットボールは銀メダルをとったフランス戦で勝利が目前だったし、バレーボールもイタリア戦は勝利目前で大接戦だった。なにより素晴らしいプレーを見せてくれたアスリートたちに心からの賛辞を贈りたい。

しかし、それと同時に残念な現象も多く見られた。ジャーナリストの島沢優子さんが日本で起きた「敗者への誹謗中傷」の背景を分析する。

日本時間12日未明に閉幕したパリ五輪は、日本選手たちが連日の活躍を見せてくれた一方で、選手らへの誹謗中傷が大きな問題になった。52年ぶり金メダルを目指したバレーボール男子日本代表が準々決勝で22年世界選手権王者のイタリアに惜敗すると、敗戦の責任を追及するような投稿がSNSに寄せられた。

最終第5セットでサーブをミスした小野寺太志は「サーブミスとかゴミ」「素人でもクソだとわかる」など、侮辱的かつ汚い言葉を浴びせられた。小野寺は自身のXで「一部の方からの誹謗中傷もコメントやDM(ダイレクトメール)に届いています」と明かしている。

陸上女子競歩の個人の出場を辞退し、混合団体に専念することを発表した柳井綾音も「なぜ辞退するのか」と責められた。柳井はXで「たくさんの方から厳しい言葉に傷つきました。試合前は余計神経質になり、繊細な心になります。批判ではなく応援が私たち選手にとって力になります。批判は選手を傷つけます。このようなことが少しでも減って欲しいと願っています」と発信した。

ほかにも柔道女子52キロ級2回戦敗退した阿部詩など複数の選手たちがSNSで誹謗中傷を受けたことを明かしており、これを重く見たJOC(日本オリンピック委員会)は「侮辱や脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討する」と表明。「心ない誹謗中傷、批判などに心を痛めるとともに不安や恐怖を感じることもある」と訴えた。日本バレーボール協会も川合俊一会長による「アスリートに愛のある応援を」「誹謗中傷は見過ごせない」といったメッセージを発表した。

手を焼いているのは日本だけではない。中国では男子器械体操の鉄棒で2度落下した選手が凄まじい暴言を受けXのアカウントを閉鎖する事態に追い込まれた。さらに卓球女子シングルス決勝で世界ランキング1位の孫穎莎を下し東京に続く2連覇を遂げた陳夢が試合後にスタンドに手を振ると、一部の孫穎莎ファンと思われる中国人客がブーイング。中指を立てる者まで現れた。これに対し中国当局は、SNSで選手を中傷した女性を拘束したと発表している。

それにしても、日本でアスリートを傷つける行為はなぜこんなにもハードルが低いのか。悪口やひどい言葉をつい打ち込んでしまう背景に何があるのだろうか。

ここでは3つの「引き金」を挙げてみる。