「百の応援より一つの心ない声…」選手らへのSNS被害続く 解決策は見いだせない

AI要約

五輪選手がSNSの誹謗中傷に対抗するため、高谷大地選手はコメントを見ないようにして集中力を保った。その一方で、SNSは選手を傷つける刃となる場合もあるため、IOCは人工知能を使用したSNS監視システムを導入した。

しかし、SNS中傷は依然として解決されておらず、特に女性選手が標的とされている。この問題はスポーツ界だけでなく社会全体で解決すべき課題である。

選手の心を傷つける中傷が続く中、問題解決のための具体的な解決策が模索されている。

「百の応援より一つの心ない声…」選手らへのSNS被害続く 解決策は見いだせない

「百の応援より一つの心ない声の方が響いたりする。触れないようにした」。レスリング男子フリースタイル74キロ級で銀メダルを獲得した高谷大地(自衛隊)の言葉だ。実際、高谷は4月から交流サイト(SNS)で自らに関するコメントを見ないようにしたという。五輪3大会に出場した兄の高谷惣亮(拓大職)が批判を気にして集中力を欠いた失敗を教訓としたからだった。

SNSは選手とファンをつなぐといったプラスの側面も期待できるが、使い方によっては心をえぐる刃にもなる。今大会でも誹謗中傷が選手を傷つける例が散見された。

国際オリンピック委員会(IOC)は今大会で、初めて人工知能(AI)を使ったSNS監視システムを導入した。多言語で投稿を監視し、中傷が疑われる言葉や画像などを識別して悪質な投稿には運営事業者に対応を求めたという。

ただ、限界がある。パリ大会に関連する投稿は膨大で、選手が目にする前にどこまで防げたか-。柔道男子60キロ級では永山竜樹(SBC湘南美容クリニック)が「待て」で、力を抜いても技を受け続けて一本負けしたととらえられ、対戦相手に誹謗中傷が殺到する事態ともなった。

世界陸連が21年11月、東京大会期間中に陸上選手らがSNSで受けた誹謗中傷を調査したところ、87%は女性が標的になっていたと発表。中傷の内容は性差別が最多の29%で人種差別、根拠のないドーピング疑惑と続いた。パリ大会でも改善されたとはみえない。

11日の日本選手団総括会見で尾県貢団長が語った通り、「スポーツ界だけでなく社会全体で解決する課題」だが、解決策は見いだせていない。(金子昌世)