「生きてほしい」「いつまで続くんだろう…」の狭間で 介護は愛犬への恩返し

AI要約

愛犬の突然の体調不良に焦る飼い主の姿

獣医師との選択肢に悩む愛犬家の苦悩

飼い主と愛犬の最後を迎える決断に向き合う心情

「生きてほしい」「いつまで続くんだろう…」の狭間で 介護は愛犬への恩返し

 いつか訪れるかもしれない愛犬の介護――。

「覚悟していたつもりですが、全然足りませんでした」と話すのは、sippoで「犬や猫のために出来ること」を連載している「公益社団法人アニマル・ドネーション」代表理事の西平衣里さん。

 保護犬・猫のために日々駆け回るなかで愛犬について語られることは少ないですが、西平さんは、6月16日に19歳の誕生日を迎えたトイ・プードルの男の子「トゥルー」と暮らす、生粋の愛犬家です。

 近所の散歩仲間から“奇跡の18歳”と言われるほどに元気で若々しかったトゥルーに、4月11日の晩、突如異変が起きました。

「昼間大好きなカフェに行って、ご飯ももりもり食べていたその日の晩、噴き出すほどの鼻血が出て……。呼吸がしづらいようで、夜中うろうろと歩きまわって、その日は眠ることができない状態でした」

 翌朝一番に、酸欠状態で舌が真っ青になったトゥルーを抱えて動物病院へ行くと、「鼻腔(びくう)がんの可能性が高い。3、4日が山で、安楽死も選択肢として考えてください」と獣医師に告げられます。

 歯みがきの習慣はつけていたものの、それでも年とともに歯周病に悩まされていたトゥルー。今年3月に意を決し、全身麻酔で17本の歯を抜歯しました。しかしそれ以降も、ときどき鼻づまりのような症状が見られ、ステロイドや抗生物質で症状を見ながら過ごしていたなかでの出来事でした。

「思い返せば、抜歯手術のときに獣医師から『がんの兆候がある』とは言われていたんです。でも歯周病の影響かなと思ってしまっていた自分がいて……。獣医師の先生からは病理検査も勧められましたが、トゥルーは18歳。検査をしたところで年齢的にその後の治療は難しいことも考えられたため、とにかく今、呼吸が苦しい状態をどうにかすることに目を向けることにしました」

 西平さんは、その日のうちに犬が入る酸素ルームのレンタルを予約します。午後には自宅に届き、呼吸を少しでも楽にしてあげたいとの思いでトゥルーを入れてみたものの、普段から家の中を自由に過ごしてきたトゥルーは、力を振り絞るように出してほしいと訴えました。

「この期に及んで、嫌がることはさせたくない」という思いが勝った西平さんは、トゥルーが自ら眠る場所で酸素を吸入させることに。常にトゥルーを目で追い、トゥルーが落ち着いたらすぐさま酸素を吸入させる、ということに専念します。

「それから、『息苦しさから休みたくとも休めない。鎮静剤を入れましょう』と獣医師の先生から言われ、せめて夜だけでもしっかり寝られるよう、夜間の往診で鎮静剤を始めました。でも、鎮静剤もいざ始めてみるといいのかどうかわからなくて。瞳に力がなくなり、いつもぼんやりしている姿を見て複雑な気持ちになりました。往診中に『医療麻薬を使って、腕の中で旅立たせてあげては』という提案も改めてされて……。この頃は自分の気持ちが迷うばかりでした」