パリ五輪男子バスケットボール予選敗退の裏で輝いたジョシュ・ホーキンソンの献身

AI要約

バスケットボール男子日本代表がパリオリンピックで3連敗し、予選敗退した過程で、ジョシュ・ホーキンソンがチームを支えた活躍、そして彼のメンタリティが光った。

ホーキンソンは長身ビッグマンとして試合で16得点、8リバウンドを挙げ、3Pシュートも高確率で成功。感情を露にせず貢献したが、フランス戦のディフェンスリバウンドで激しい情熱を示す瞬間もあった。

彼は日本に安定感をもたらし、3Pシュートの高確率を誇示。また、『日々挑戦、日々成長』には自身の多面的なプレースタイルとコンプリートプレーヤーへの志向が描かれている。

パリ五輪男子バスケットボール予選敗退の裏で輝いたジョシュ・ホーキンソンの献身

史上最強の呼び声も高かったバスケットボール男子日本代表。昨年のW杯に続く躍進が期待されたが、随所で輝きを見せつつも、パリオリンピックでは3連敗で無念の予選敗退。

ジョシュ・ホーキンソンは、平均36分以上と長いプレータイムにも関わらず、フィールドゴール成功率は60パーセントを超える高確率をマーク。大舞台でもチームを支え続けた大黒柱の活躍と、それを可能にするメンタリティを振り返る。

◇日本敗退の影で光ったホーキンソンの活躍

残り時間を示す数字は、刻々と少なくなっていく。

いつかは離され始めるのではないか……という思いをよそに、日本はまだ世界トップレベルの相手に食らいついている。気持ちで、気迫で、ついていく。

パリオリンピックに臨み、予選ラウンドの初戦でドイツに敗れていた(77-97)男子日本バスケットボール代表チームは、2戦目のフランスで激闘を繰り広げ、そして最後は延長戦の末、90-94で敗れた。

日本にとっての歴史的な試合を演出した1人が、ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)だった。この試合で身長208cmのビッグマンは16得点、8リバウンドを記録。ドイツ戦では試投すらなかった3Pシュートを6本放って4本という高確率で沈め、日本がフランスに食らいつくのに貢献した。

7月に発売された彼の初著書『日々挑戦、日々成長』(小社刊)では、自身の人生、バスケットボールキャリアを通して、いかに今の位置に至ったか、どのような流儀を持っているのかといったことをつづっている。

その一節でホーキンソンはこう述べている。

「僕は元来、気持ちの浮き沈みが少ない人間で、あまり長い時間にわたって高揚しすぎることもなければ、落ち込みすぎることもありません。ですから、僕が明らかな怒りを表すこともほとんどありません。別の言葉で言うならば、僕は感情にまかせて自身を表現することがほとんどないのです。このことは、客観的に考えても基本的には良いことだと思っています」

日本は3連敗。予選ラウンドでの敗退となってはしまったものの、厳しい戦いが続くなかでも、ホーキンソンは気持ちの揺らぎを見せることなく、愚直で献身的に自分のやるべき仕事をやり続けた。その結果、日本がパリへの切符をつかむ成功を収めた昨年のワールドカップと同様に、チームに安定感をもたらした。

いや、そんなホーキンソンでも感情を露わにした場面が皆無だったわけではない。冒頭に記したフランス戦の第4クオーター最終盤、日本に勝機が見えてくると、フランスの222cmの長身で昨季のNBAドラフト全体1番目指名を受けた逸材、ビクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)との争いのなかで、ホーキンソンはディフェンスリバウンドを確保する。

それは鬼のような表情で、彼が日本を勝たせたいという思いが出た、渾身のそれだった。

その瞬間、ホーキンソンが昨年のワールドカップで、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が出場しなかったこともあり、まさに鬼神のごとき働きぶりをして、日本代表にとって欠かせない選手であることを示し、全国的な知名度を得たシーンを思い出した。

◇世界でも通用することを証明した

ホーキンソン得意の3Pシュートは、予選ラウンド3試合の合計で12分の9。同ラウンド全選手のなかでトップの75%という高確率を記録した。ウェンバンヤマ、ゴベアというツインタワーを擁するフランスとの試合では、ホーキンソンは長距離シュートをねじ込んだことで、ツインタワーを外に引きずり出しディフェンスを広げたことで、日本が速いオフェンスを展開しやすくした。

パリオリンピックでのホーキンソンは、平均18.3得点(予選ラウンド10位)、9.7リバウンド(同3位)、1.7アシスト、1.3ブロックと文句のつけようのない成績を挙げた。しかし、彼自身は、自身の数字に固執する選手でない。それは、彼に万能さがあり、かつそれを試合の状況によって、どう役立てられるかを判断できる賢さを備えているからだ。

『日々挑戦、日々成長』には、このような記述もある。

「(中略)仮に平均で20点を記録したいと言ってしまうと、単なるスコアラーであればいいという気持ちになってしまいます。しかし僕は、得点以外の多くの部分でチームに貢献ができますし、たとえばスコアラーといった一面的であるよりも、より多面的なことができる『コンプリートプレーヤー』でありたいと思っています」

パリオリンピックでのホーキンソンは、選手の貢献度を指す「エフィシエンシー」で予選ラウンド全体4位タイの74を記録している。「コンプリートプレーヤー」たるところを十全に示した形だ。

日本は激闘虚しく3連敗を喫し、決勝ラウンド進出という目標を成就できずに帰国の途についたが、ホーキンソンは報道陣に対して4年後のロサンゼルスオリンピックにも出場したい旨を述べている。

先述の著書では、日本語をもっと話せるようになることも含めて、さらに日本人としての成長を期している。

日本代表活動でも、ここからさらに積み上げをしていくことで、次のオリンピックではより成熟した29歳のホーキンソンが、今以上にチームへの貢献度を高めることとなっているかもしれない。

(取材:永塚 和志)