恋愛ドラマの未来とは?【杉咲花・主演『アンメット』】にあって他の作品になかったのもの

AI要約

杉咲花と若葉竜也の好演とともに、大きな感動と反響を呼んだドラマ『アンメット~ある脳外科医の日記~』。

『アンメット』は、主人公の脳外科医・川内ミヤビが、記憶障害を患いながらも全力で患者と向き合っていく物語。

「心が覚えている」というメッセージを通して、究極の純愛を描いた作品として評価されている。

恋愛ドラマの未来とは?【杉咲花・主演『アンメット』】にあって他の作品になかったのもの

杉咲花と若葉竜也の好演とともに、大きな感動と反響を呼んだドラマ『アンメット~ある脳外科医の日記~』。医療ドラマのようにもミステリーのようにも見えるこの作品、じつは究極の純愛を描いていた!

杉咲花と若葉竜也が神がかり的な演技を見せ、大きな感動と反響を呼んだドラマ『アンメット~ある脳外科医の日記~』(関西テレビ放送)。放送中もさることながら、6/24に最終回を迎えてもなお、その熱が冷める気配はない。先日も、同ドラマのギャラクシー賞6月度月間賞受賞や、Filmarksの2024年上半期国内ドラマ人気ランキング1位獲得が発表された。また見逃し配信再生回数も、カンテレ制作の連ドラでは歴代1位となる2200万回を超えたことが伝えられるなど、時間が経つにつれますます評価と関心を高めているほどだ。

『アンメット』は、主人公の脳外科医・川内ミヤビ(杉咲花)が、記憶障害を患いながらも周囲の人たちに支えられ、患者と全力で向き合っていく物語。彼女の記憶障害にはある秘密が隠されており、『アンメット』は一見、医療ドラマのようにも、ミステリーのようにも見える。が、終わってみればこの作品は、史上かつてないほど美しい“心”を描いた究極の純愛ドラマだったと感じるのだ。

ドキドキするような胸キュンシーンや、ドラマチックなすれ違いや修羅場が登場するわけでもない。しかし『アンメット』は視る人たちに愛の美しさを感じさせ、「愛の力を信じられる」と間違いなく思わせた作品だったと思う。恋愛ドラマがヒットしないと言われる今、なぜこのような奇跡の一作が生まれたのか。その理由を考察してみることは、これからの恋愛ドラマの可能性を探ることでもあると考えたので、あらためて少しばかり深掘ってみたいと思う。

『アンメット』の成功に関して(成功という言葉を使うのも無粋なくらい素晴らしい作品なのだが)、個人的な結論を先に述べてしまうと、その秘訣は役者の演技力と脚本力、あまりにもシンプルなこの2点にあったと思う。が、これこそがシンプルなようでいてとてつもなく難しい要素であり、それゆえ昨今の恋愛ドラマが、無意識に避けて通っているものでもあるように感じるのだ。

まず脚本力について考えてみたい。今回、『アンメット』の何が他の恋愛ドラマと比べてとくに優れていたかというと、それは伝えたいメッセージがただ一つ、最初から最後まで1ミリもブレていなかった点にあると思う。ではそのメッセージは何かというと、それは「心が覚えている」だ。

記憶障害を患っているミヤビは、事故に遭う少し前からの記憶がすべて消えてしまっている。そして事故後も記憶が1日以上もたず、翌朝になると前日の記憶はすべて消え去っているのだ。それゆえその日起きたことを逐一日記に書き留めているわけなのだが、事故前の出来事については日記を書いていなかったため、思い出す術を持っていない。ゆえに、事故直前に出会って運命的な恋に落ちた医師・三瓶友治のことはまったく覚えておらず、三瓶が同僚として再びミヤビの前に現れたときも、悲しいことに彼に対して何ら心の動きを見せることはなかったのだ。

しかし三瓶は諦めていなかった。ことあるたびにミヤビに、「記憶を失っても、そのとき感じた強い気持ちは残るんです」と言い続ける。ミヤビはその言葉に励まされ、医師としても勇気を持って一歩踏み出し、再び患者と全力で向き合い始めるのだった。

書き手

山本奈緒子 Naoko Yamamoto

放送局勤務を経て、フリーライターに。「VOCE」をはじめ、「ViVi」や「with」といった女性誌、週刊誌やWEBマガジンで、タレントインタビュー記事を手がける。また女性の生き方やさまざまな流行事象を分析した署名記事は、多くの共感を集める。

Edited by 渕 祐貴