「シカが食べ尽くして斜面崩壊」3度続けて発生した土石流 増えたシカが植物食べ「裸地化」 全国各地で山肌むき出し「土砂災害のリスク増加」

AI要約

滋賀県米原市で起きた異例の3度の土石流被害。原因はシカの食害による裸地化。今後の災害リスクについての懸念が高まっている。

米原市の伊吹山では水の蓄える力が低下し、土砂崩れが起きやすくなっている。被災者らの復旧作業が続いている。

様々な地域で同様の危険が潜んでおり、環境保護や災害対策の重要性が再確認されている。

「シカが食べ尽くして斜面崩壊」3度続けて発生した土石流 増えたシカが植物食べ「裸地化」 全国各地で山肌むき出し「土砂災害のリスク増加」

滋賀県米原市で7月、3度の土石流が住宅を襲った。

現場を取材すると被害のメカニズムと、この場所だけではない、私たちの近くにも潜んでいる危険が見えてきた。

8月2日、米原市の伊吹山を訪れた平尾道雄市長。今年に入って3度、土石流が発生した現場の状況を視察した。

7月1日、米原市伊吹地区で大雨が降り、土石流が発生。

大量の土砂が複数の家屋や道路に流れ込み、災害発生の危険度レベル5の「緊急安全確保」が発令された。

その後、土石流は15日、25日と立て続けに3度も発生。

のべ7軒の浸水被害が確認され、8月2日午後5時現在も26世帯、66人に「緊急安全確保」が発令されている。

(※8月2日午後5時30分に「この先の天候が比較的安定し、えん堤の浚渫の進捗や監視・警戒態勢が整った」として、レベル3「高齢者等避難」に警戒レベルが変更された。)

短期間に3度の土石流という、異例の事態を引き起こした要因を探ると、意外な事実が明らかになってきた。

なんと原因は「シカの食害」。

米原市によると伊吹山は、10年ほど前からシカが増えはじめた。温暖化により、伊吹山で冬を越せるようになったことが原因と見られている。

そのシカが山に生えていた植物を食べ尽くすことで、土がむき出しになる「裸地化(らちか)」が進んでいる。

9年前と比較してみると、地表の土の部分が露出しているのが分かる。

この「裸地化」が進むと、山が水を蓄える力が弱まり、水が流れやすくなって土砂崩れが発生しやすくなるのだ。

伊吹山で撮影された映像には、むき出しになった地表に大きな岩や水が勢いよく流れる様子が映し出されている。

山の頂上付近で起きた、こうした水の流れが、最終的に土石流となって今回の地域に流れ込んだと見られている。

2日の現地調査では、伊吹山に起きている深刻な異変が明らかになった。

視察に同行した市職員:(Q.地面がえぐれてしまっている?)えぐれてしまって、水路ができている。

米原市 平尾道雄市長:僕の身長を超えるほど、(地面が)掘られている。

視察に同行した市職員:ここが一番ひどい。

そこには水が流れたことによって、深いところで4メートル近くも削られた谷のような場所があった。 多くの岩も転がっている。

米原市 平尾道雄市長:伊吹の集落を襲っているのは、こういう石が家に入り込んでいる。山が大きく崩れ始めている。この延長に何があるかというと、あってはならないですけど、もっと広範囲に山麓が崩壊するという前兆すら感じる。

これからの台風シーズンなど、より大きな災害が起きる危険を感じる状況だった。

さらに山の上部へ進むと…。

米原市 平尾道雄市長:(Q.前は草木が生い茂ってた?)そのあたりにシカがずらーっといた。今もいますけど。シカが全部食べ尽くして、こういうふうになって、斜面崩壊が起きた。ここが元々の災害の現場です。

2日は調査と並行して、シカが入ってこないように、ネットを設置するなどの対策も行われた。

長年、伊吹山の環境を守る活動をしてきた高橋さんも危機感を持っている。

ユウスゲと貴重植物を守り育てる会 高橋滝治郎さん:われわれは伊吹山から、色んな恩恵を受けて生活してきました。(以前は)雨を山がいったん受け止めてくれて、山の中を浸透して、ふもとで流れ出して、生活用水とか農業用水として利用してきた。今は保水量がないせいで、雨が一気に流れ落ちて、恵みというよりも災害という形で私たちに影響がある。

最初の土石流から1カ月がたった伊吹地区の住民は、今も復旧作業に追われている。

被災した男性:ここ全部、泥につかってしまったんです。この中、全部に土砂が流れ込んで。

被災した男性:地形図を見ると、ちょうど流れてくる川がありますから。あれがこれから、もっとひどくなるのかなと。こればかりは、わからないですね。私たちも、安心して暮らせるようになってくれたらなと思っています。

思わぬ形で引き起こされた今回の土石流。 こういった危険をはらんだ場所は全国各地にあるということだ。