時代を超越した才能を体感する、リストによる唯一のピアノソナタ作品【クラシック今日は何の日?】

AI要約

フランツ・リストのピアノソナタ作品について

リストのピアノソナタが当時にどのような反応を引き起こしたか

ワーグナーによるリストのピアノソナタ評価について

時代を超越した才能を体感する、リストによる唯一のピアノソナタ作品【クラシック今日は何の日?】

難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。

今日7月31日は、ピアノの鬼才フランツ・リスト(1811~86)の命日です。

75年の偉大な生涯において、リストが手がけた作品の数は1400曲以上。その多くが、ピアノのための作品であることは、史上最高のピアニストと謳われたリストならではの成果でしょう。

しかし、モーツァルトやベートーヴェンが名作を生み出したピアノソナタにおいて、リストはわずか1曲しか残していません。これはまさに、時代の変化といえそうです。

そのリストによる唯一のピアノソナタは、従来の作品とは一線を画す自由な手法で書かれた名作です。当時、有力な批評家や大音楽家たちから散々にけなされたにもかかわらず、今ではピアニストにとっての重要なレパートリーとなっていることは、時代を超越した天才リストならではの凄みを感じる出来事です。

後にリストの義理の息子となるワーグナー(1813~83)が残した「あらゆる概念を超えて、美しく大きく好ましく気高い」という言葉こそが、この作品の本質を物語っているように思えます。

一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。