「大学の中に入ってもいいの?」 キャンパスが進化し、地域の子どもや企業が気軽に利用

AI要約

大学と地域が連携する取り組みが広まっており、地域住民が大学に入ってくる動きも見られる。

大学キャンパスが地域に開かれ、一般の人々も利用可能な施設が整備されている事例が増えている。

大学と地域が連携し、共に課題解決や社会問題に取り組むための施設やプロジェクトが展開されている。

「大学の中に入ってもいいの?」 キャンパスが進化し、地域の子どもや企業が気軽に利用

この10年ほどで広まった大学の取り組みの一つに、「地域との連携」があります。従来は学生が「大学から地域へ」と出ていくタイプの活動が主流でしたが、最近はキャンパスの移転・再編を契機に、市民や企業が「地域から大学へ」入ってくるという動きです。地域の人が大学に入ってくることで、どのような学びが広がるのでしょうか。

「地域との連携」による学びは、文部科学省や総務省の後押しもあり、全国の大学で定着しつつあります。地域と手を取り合って、その土地ならではの課題に取り組むことは、学生にとっても貴重な学びになります。ただ、これまでは学生が、大学を飛び出して、地域に出かけていき、人と触れあう事例が一般的でしたが、最近はキャンパスの移転・再編に合わせて、地域住民が大学にやってくる「地域から大学へ」という新たな動きが広がり始めています。

例えば、神奈川大学が2021年にオープンしたみなとみらいキャンパス(横浜市西区)は、街に広く開かれ、一般の人々も利⽤可能な施設があります。低層階はソーシャルコモンズとして人が行き交う「知」の交流拠点となっており、1階のカフェやレストランは一般の人々も利用できます。グローバルラウンジでは異文化体験イベントが行われるなど、社会との接点をつくりやすい仕掛けが随所に設けられており、学内外の交流が生まれ、新しい社会的価値が創造されることが期待されています。

また、地域と協力して子どもたちの祭りを開催するなど、以前から周辺とのつながりが強かった都留文科大学(山梨県都留市)でも、23年に大学と社会をつなぐ「Tsuru Humanities Center(THMC)」を開設しました。カフェコモンズやラーニングコモンズなどテーブルといすが置かれた交流スペースのほか、VR(仮想現実)などデジタル系の学びができる施設があり、学生や教職員だけでなく、地域住民も利用できます。また、多様なプロジェクトを実施することで、学内外の人が一緒に地域課題や社会問題を解決することを目指しています。

そして、「地域・社会から大学へ」の姿勢を強く打ち出しているのが、立命館大学の大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)です。24年4月に同大学の衣笠キャンパス(京都市北区)にあった映像学部と、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)にあった情報理工学部をここに移転したことで、学生数約1万人規模の大キャンパスに。15年の開設時から「地域・社会連携」を教学コンセプトの一つに掲げてきましたが、2学部の移転に合わせて新しい教室棟や施設などもつくり、地域・社会に開かれたキャンパスを強くアピールしています。

社会共創推進本部の本部長を務める三宅雅人教授はこう語ります。

「大阪いばらきキャンパスはこの春、2つの点で生まれ変わりました。一つは、それまで文系学部のみだったところに情報理工学部と映像学部が移転し、多様性を増した学部構成となったことです。もう一つは、地域・社会に開かれた『ソーシャルコネクティッド・キャンパス』を推進する組織と施設を設置したことです。同キャンパスはもともと敷地の周囲360度に塀がなく、開放的な造りになっていました。その環境を生かしつつ、地域とのさらなる融合を進めています」