「ビジネス書コーナーに乱入! 縁がつないだリアルなビジネス対談本を出版」稲垣えみ子

AI要約

稲垣えみ子さんが新しい対談本『シン・ファイヤー』の出版過程を紹介しながら、人生の縁について考える。

本のコンセプトや製作過程、意外な展開について語る。

人生の縁に感謝し、次々と新たな可能性が広がることを喜ぶ稲垣えみ子さんの姿が描かれる。

「ビジネス書コーナーに乱入! 縁がつないだリアルなビジネス対談本を出版」稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 このたび初の対談本『シン・ファイヤー』が出版の運びとなりました。お相手は『年収90万円で東京ハッピーライフ』の大原扁理さん。大原さんファンから出版社に舞い込んだ「大原さんと稲垣さんが対談したら面白そう」という手紙から話が転がり始め、せっかくなら私らの本など見向きもしなかった人が手に取りたくなる本にしたいというイナガキの思いつきから話はピンボールのように跳ねていき、結局、ビジネス書コーナーに乱入という野心的コンセプトが固まりまして、フタを開けたらちゃんとビジネス書の隣にしれっと並んでいる我らがキュートな新刊を見て、思わずガッツポーズしつつ笑ってしまいました。

 あ、笑ってる場合じゃないですね! 真面目な話、我らはこの本こそ実は、現代を生き残るためのリアルなビジネス(お金をめぐる不安から真に解放される)書と自負しているので、お金儲けを目指してうっかりこの本を手に取ってしまい「ナルホドそうだったか!」となる人が一人でもおられることを切に希望しているのであります。

 にしても、いつも本を出す時は、自分に書きたい何かがあって、つまりは最初からゴールを見据えての孤独な作業となるんだが、今回はたった1通の手紙から人が集い、ああだこうだと必死に走っているうちに中身が少しずつ固まっていき、その中身を面白がり装丁して下さったデザイナーさん、太字部分をノリノリでマーカーしてくれた大学生さん、その全てを気に入って下さった書店さんと、思わぬ輪が広がってパワーアップしていき、果ては関連グッズまで製作という、全く誰も思いもよらなかった事態まで発生するに至った。結果が吉と出るかは全く不明だが、意思や選択でなく「縁」で扉が次々開かれていくことそのものが面白く、そうか人生にはこんなやり方もあったのかと、今とても爽やかな心持ちである。

 人はその時々の縁で自分にできることを一生懸命やれば良し。それが次の縁につながっていく。きっとそれこそを「吉」と言うんですよね。

いながき・えみこ◆1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。著書に『アフロ記者』『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』『家事か地獄か』など。最新刊は『シン・ファイヤー』。

※AERA 2024年7月22日号