原因不明の難病、ピアノと乗り越える 「自分が音楽に支えられたように、病を抱える人たちの力になれば」 岡山県の高校3年生、8月に倉敷中央病院でソロコンサート

AI要約

17歳の守谷友希は、呼吸が突然止まったり浅くなったりする難病を持つが、ピアノを通じて生きる原動力を見つける。

友希はソロコンサートに向けて猛練習し、24時間酸素吸入器と人工呼吸器を手放さずに練習に励む姿が描かれる。

友希は難病を持ちながらも前向きに生きる姿勢を示し、ピアノを通して他の人にも勇気や希望を与えようとする。

 寝ている時や体が疲れている時、本人の意思に関係なく、呼吸が突然止まったり、浅くなったりする病気がある。国の指定難病で、患者は全国に100人ほど。原因不明で治療法は確立されていない。

 高校3年生の守谷友希さん(17)=岡山県総社市=は生後すぐに症状が現れ、今も入退院を繰り返している。酸素吸入器や人工呼吸器は24時間手放せない。

 そんな闘病生活を乗り越える原動力になっているのがピアノだ。ショパンの曲に出合った4歳から始め、ほぼ独学で演奏技術を磨いてきた。8月には倉敷中央病院(岡山県倉敷市)でソロコンサートに臨む。

 「自分が音楽に支えられたように、病を抱える人たちの力になれば」。少しでも多くの人に曲を届けたいと友希さんは思っている。

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 今月12日、友希さんの姿は、倉敷中央病院にあった。院内で来月開くソロコンサートに向けたリハーサルのためだった。

 グランドピアノの前に置かれた椅子に腰掛け、鍵盤に指を置く。感触を確かめるように、ショパンの「別れの曲」を弾き始めた。

 傍らには重さ約10キロにもなる酸素吸入器と人工呼吸器が置かれている。練習中はもちろん、寝る時や食事中も身に着ける。本人が気付かないうちに呼吸が浅くなったり、止まったりするためだ。

 「着けるのにもう慣れちゃいました」と軽く話す言葉とは裏腹に、それらの機器がなければ、友希さんは命を保てない。24時間の呼吸管理は一生続く。

■心の支え

 「この子、息してない」。母親の雅美さん(51)は友希さんが生後9カ月の時、異変に気付いた。倉敷中央病院で調べても原因は分からず、その後も昼寝の最中に何度も呼吸が止まった。

 「先天性中枢性低換気症候群」と判明したのは1歳9カ月の時。当時の主治医が繰り返し検査し、海外の論文をいくつも調べ、病名を絞り込んだ。呼吸中枢や自律神経に障害がある疾患だった。

 日常的に人工呼吸器などを使用する医療的ケア児となり、学校は雅美さんが付き添った。毎年秋から冬にかけて調子が悪くなる時は、入院先の院内学級に通った。

 日常生活が不自由でも、体が思うように動かなくても、友希さんは4歳から始めたピアノが心の支えになった。ためた小遣いで買った電子ピアノを相棒に、家で練習するのが日課だ。歩けなくなるほど体が衰弱して入院しても、病室にピアノを持ち込んで弾いた。

 病気は、集中したり緊張したりすると、症状が現れることがあり、ピアノはリスクになる。だが、両親は得意分野が見つかれば、将来の自立につながると見守り続けた。

■誰かのために

 一生の趣味となったピアノを巡って転機が訪れたのは、昨年夏のことだった。倉敷中央病院が企画するコンサートへの出演依頼が舞い込んだ。「人前では絶対弾けない。断ろうと思った」と振り返る友希さん。その時、院内学級支援のボランティア活動を通じて知り合った人の一言が、背中を押してくれた。

 「今まで自分の楽しみだったピアノを、今度は誰かのために弾いてあげたらどうだろう」

 その言葉を胸に出演したステージは、客席から拍手が湧き起こった。2年目の今年はさらに練習を重ね、最高の演奏を届けるつもりだ。

 「難病を抱えていても、医療的ケアが24時間必要でも、自分が前向きで諦めなければ、何でもできる。僕の姿からそう感じてもらえたら、とってもうれしいです」

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 「くらちゅう癒しのコンサート」は倉敷中央病院1階のセントラルパーラーを会場に、毎月2回開かれている。守谷友希さんの出演は8月8日午後0時半~1時、計8曲を披露する。無料。問い合わせは同病院(086―422―0210)。