納豆文化は黄砂の恩恵? 近大教授がオリジナル納豆開発 納豆菌は立山連峰から採取 おおさかラボ

AI要約

近畿大の牧輝弥教授は黄砂によってもたらされた納豆文化に関する新説を提唱し、黄砂から採取した納豆菌を使用したオリジナル商品「やまなっとう」を開発。

牧氏は大気中の微生物の粒子に着目し、能登半島や立山連峰から採取したバチルス株を使用して商品開発を行い、研究成果を医学などに応用するなど重要な成果を挙げている。

「やまなっとう」はそらなっとうより風味や食感が向上し、納豆が苦手な人でも食べやすい特徴を持つ。

納豆文化は黄砂の恩恵? 近大教授がオリジナル納豆開発 納豆菌は立山連峰から採取 おおさかラボ

納豆文化は黄砂によってもたらされた-。近畿大の牧輝弥教授はそんな新説を唱え、黄砂が多く飛来する立山連峰(富山県)の積雪から採取した納豆菌の一種「バチルス株」を使ったオリジナル商品「やまなっとう」を開発した。大気中に存在する納豆菌を使った納豆開発は2度目。牧氏は「まさに黄砂は微生物の空飛ぶ箱船。取り組みを通じて研究に興味を持ってもらえたら」と話している。

牧氏によると、大気中には細菌やウイルス、花粉などの微生物の粒子(バイオエアロゾル)が無数に存在しており、黄砂とともに日本に飛来。微生物は数百種類にのぼるとされ、黄色ブドウ球菌や非結核性抗酸菌など人体に悪影響を及ぼす細菌類も含まれる。

大気汚染を引き起こす「PM2・5」や黄砂による健康被害などが増えていることから、牧氏は黄砂の発生源・中国大陸内陸部の砂漠や黄砂が多く飛来する能登半島で大気を採取し、微生物の種類や特徴を分析。調査結果は病気や疾患の治療法の確立につながったり、疫学調査に応用されたりしており、「一見、地味な研究だが非常に重要だ」と意義を語る。

そうした中で、バチルス株も含まれていることに着目。「悪影響ばかり考えられてきたバイオエアロゾルを有効活用できないか」と、十数年前から納豆の開発に挑んだ。能登半島の上空約3千メートルで採取した菌を使って開発に着手し、数年がかりで「そらなっとう」の完成にこぎつけた。「空飛ぶ納豆菌」を使った商品として話題を集め、日本航空の機内食でも提供されたほどだ。

納豆への挑戦はさらに続く。黄砂が納豆菌を運び、日本に納豆食文化をもたらしたのでは-。牧氏はそんな仮説を立て、注目したのが雪中の菌だ。「黄砂も雪とともに堆積するので積雪から採取したバチルス株で納豆ができればこの仮説が有力になる」

検証のために、立山連峰の雪から採取したバチルス株での納豆開発を開始。石川県のメーカーの協力も得ながら何度も試作を重ねて今年6月、「やまなっとう」として商品化された。

この商品はそらなっとうに比べて、豆の風味や香ばしさが増した。さらに納豆特有のくせが少なく、納豆が苦手な人も食べられるのが特徴だ。牧氏は「粘り気が強くなく、食感もふわっとした感じ。研究室の学生らと試食や議論を繰り返した自信作なので、ぜひ食べてみてほしい」と話している。