アメリカの業界団体が国の「PFAS規制案」を提訴(シェリーめぐみ)

AI要約

化学物質PFAS(ピーファス)は日本でも検出され、問題視されています。アメリカではEPAの基準値を不服として業界団体が提訴。PFASは身近な製品に含まれ、環境中で分解されず残るため、健康リスクが高い。

全米の水道水の45%にPFASが含まれており、EPAは規制を定めたが業界団体が提訴。一部の団体は規制に反対し、水道料金値上げを懸念。一方EPAは科学的根拠に自信を示す。

州や地方自治体では既にPFAS汚染を訴え、製造業者との和解に成功。PFAS対策が社会的に注目されている。

アメリカの業界団体が国の「PFAS規制案」を提訴(シェリーめぐみ)

【ニューヨークからお届けします】

 化学物質PFAS(ピーファス)は日本でも各地の水道水から検出され、問題視されていますが、アメリカでは業界団体が、EPAが定めた水道水中の基準値を不服として提訴しました。

 以前もお伝えしましたが、有機フッ素化合物PFASは、コーティング加工のフライパンから防水の服、食品包装、化粧品やシャンプー、おもちゃなど、あらゆる日用品に使われています。しかし環境中で分解されず残り続けるため、「フォーエバー・ケミカル=永遠の化学物質」として知られています。体内にも蓄積し、肝臓や免疫系にダメージを与え、がんのリスクを増大させることがわかっています。

 アメリカではこの春、全米の水道水の45%に、基準値を超えるPFASが含まれていることがわかり、衝撃が広がりました。

 そこでEPAアメリカ環境保護庁は、水道水中のPFASをほぼゼロに削減する規制を定めたところ、これに反発した業界団体が提訴したものです。

 訴えたのは、アメリカ化学会と全米製造業者協会です。数億人が使用するアメリカの水道水中の合成化学物質を、システムからすべて除去するのを義務づけるのは、政府の権限を逸脱している、というのが訴えの理由です。

 また、アメリカ水道協会とメトロポリタン水道事業体協会は、別に請願書を提出。EPAはこの規則に要する費用を著しく過小評価しているとし、最終的に水道料金の値上げにつながり、利用者がそのツケを払わされる可能性があるとして、反対の立場をとっています。

 しかしEPAは、「今回の基準値は最新の科学に基づいて決定したもので、住民の健康を守るためには当然の措置」とし、「訴訟に勝てるだけの科学的根拠はある」と自信を見せています。

 一方で、州や地方自治体では既に、PFASが飲料水を汚染したとして、デュポンや3Mなど一部の製造業者を訴えて、和解に成功しています。

(シェリーめぐみ/ジャーナリスト、ミレニアル・Z世代評論家)