リンダ・グラットン「部下の“仕事離れ”に悩む管理職よ、いまこそ基本に立ち戻ろう」

AI要約

リンダ・グラットンが変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスについて論じ、人材管理に関するアドバイスを提供。

経営者や管理職にとって厳しい状況が続いており、労働市場の逼迫や生活水準への影響が深刻化している。

グラットンは、自律性、習熟の経験、関係性の3つの要素を通じて仕事を評価し、改善の方向性を示唆している。

リンダ・グラットン「部下の“仕事離れ”に悩む管理職よ、いまこそ基本に立ち戻ろう」

『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンが、変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスを論じる連載。

これからの時代、どうやって人材管理をするのがベストなのか──そう悩む管理職に、グラットンは「基本に立ち戻れ」とアドバイスする。

もしいまあなたが経営者や管理職の立場にあるなら、まさに荒波を航海するような心地だろう。

経済は衰退しているにもかかわらず、労働市場は逼迫している。パンデミック以後、50代以上の労働者の多くがそのままリタイアしてしまい、その穴を埋める人材が見つからないことも一因だ。

物価の高騰は生活水準に関するさまざまな不安を呼び起こし、賃上げの要求も高まっている。他方、在宅とオフィスのハイブリッド労働は、スケジュール調整の地獄を生み出した。

もしあなたが若手のリーダーや管理職であれば、この組み合わせはあなたのキャリア史上最大の困難を生み出しているだろう。そこで、「これからは人材をどのように管理するのがベストなのだろう?」という疑問が浮かぶはずだ。

私は、「基本に立ち戻れ」というアドバイスを贈りたい。人は労働の何が好きで、なぜ会社に入り、辞めたり残ったりするのか、ということを思い出そう。私たちそれぞれに独自の見解があるだろうが、ただいたずらに各自の認識に従う必要はない。1960年代以降積み重ねられてきた、人と仕事を結ぶ「糸」についての根拠を参照してみよう。

数十年にわたる研究で、以下のようなことがわかっている。私たちが仕事を楽しみ、充実感を覚え、成功体験を得るとき、私たちと仕事は、自律性、習熟の経験、関係性の3つの糸で結びついているという。

この3つの糸をたよりに、いまの自分の仕事をどう評価できるだろうか? 周りの人たちはどうだろう。かれらの仕事を、どう評価できるだろう? 

働く場所や、「自由裁量時間」の確保についての自律性はあるだろうか。それはつまり、自分のやることをコントロールできるフレキシブルな時間のことだ。また、仕事のやり方、タスクおよびそのやり方のコントロールはできているだろうか。

次に、ここ数年を振り返ってみよう。あなたは仕事の習熟度が上がったと感じられるだろうか? 仕事がうまくいったことの誇らしさや、やり遂げた感慨を与えてくれるような、達成感や勢いはあっただろうか? 

そして最後に。あなたと職場の同僚たちとの間には、有意義で、喜びをもたらしてくれるような友情やつながりはあるだろうか?

これら3つの糸を、あなたやあなたの部下たちが手に入れるのは、とても難しいことのように思ったのではないだろうか。しかし、改善していく方法はある。