シミを消したい! 治療を受けるなら押さえておきたいポイント

AI要約

シミの種類を正しく診断することが重要であり、治療法は種類によって異なる。

肝斑やADMなどのシミの種類ごとに適切な治療法があり、医師の経験が必要とされる。

シミ治療は自由診療であり、皮膚がんのリスクを考慮し、信頼できる医師に相談することが重要である。

シミを消したい! 治療を受けるなら押さえておきたいポイント

 シミができやすくなる季節。肌のシミを薄くしたいなら、シミの種類をしっかりチェックすべきだ。順天堂大学医学部皮膚科学講座非常勤講師の木村有太子医師に話を聞いた。

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「シミ治療は正しい診断から始まります。シミの種類を見極めることが非常に重要」

 木村医師は、こう強調する。というのも、シミにはさまざまな種類があり、種類が異なれば、治療法が異なるからだ。

「紫外線を長年浴び続けてできるシミが『日光黒子』です。年をとるごとに濃くなっていくので『老人性色素斑』とも呼ばれ、シミの中では最も多い。この日光黒子ではレーザー治療が効きます。一方、『雀卵斑(そばかす)もレーザー治療が効きますが、顔全般に広がっているので、痛みが少なくダウンタイムが短い光治療(IPL)が向いています」

 よくあるシミとして「肝斑」もある。紫外線や女性ホルモンの影響で表皮内のメラノサイトが活性化されてできる。

「肝斑ではレーザーを照射すると増悪して色が濃くなってしまうことがあります。肝斑には、トラネキサム酸の内服と、ハイドロキノンをはじめとする美白剤の併用を第一選択として行います」

 トラネキサム酸は、肝斑の形成に関係するアラキドン酸、プロスタグランジン、ロイコトリエンといった生体内情報伝達物質の産生を抑制する働きがある。それによってメラニン合成が減少し、肝斑が改善される。

「肝斑では、トラネキサム酸と美白剤の併用を8週間を一つの目安として使ってもらいます。効果がイマイチであれば、ケミカルピーリングやトレチノイン併用療法で表皮のターンオーバーを亢進させてメラニンの排出を促します。一方、肝斑との鑑別が困難なシミとして、『後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)』があります」

 見た目はそっくりだが、肝斑は皮膚の浅い部分に原因があるのに対し、ADMは、皮膚の深いところに原因がある。

「そのためADMでは強めのレーザー治療を複数回行う必要があります。とにかくADMはレーザー治療一択。肝斑で用いる美白剤は皮膚の深部まで届かず、全く効果が見られません。逆に肝斑をADMと間違えて強いレーザー治療を行うと、肝斑が増悪しかねない」

■シミの種類と場所によって治療法を変える

 シミの種類を探るには、シミができた時期、場所、色調、形態、色が濃くなる時はあるか、家族歴、日光によくあたる趣味があるか、服用している薬など、患者が語るエピソードが大きなヒントとなる。鑑別がつきにくければ、画像診断機を用いることもある。

「顔にできたシミの種類が全て同じであるとは限りません。その場合、例えば『頬の下のところにある大きいシミは日光黒子だからレーザー治療。上頬の両側にできたシミは肝斑だから内服薬と美白剤』と場所によって治療法を変えます」

 また、肝斑かADMか、画像診断機を使っても鑑別がつかないケースでは、まずは肝斑の治療をし、様子を見てADMが疑われるようならレーザー治療を検討することも。

「シミ治療には、紫外線が多い時期を外してやった方がいいものもあります。その時期に応じた治療を行うことも必要」

 いずれにしろ、医師の腕が問われる。近年、シミ治療で問題となっていることの一つは、皮膚がんの見逃し。経験の浅い医師が十分な診断なしにシミ治療を行い、なかなか良くならず、挙げ句の果てには大学病院で「シミではなく皮膚がんだった」と判明するケースだ。

「紫外線暴露は皮膚がんのリスク因子でもあり、シミがたくさんできている人は皮膚がんリスクが高いともいえます。皮膚がんの見逃しを避けるためにも、シミを軽く考えず、最初は皮膚科医に診てもらうことを強くお勧めします。また、『治療を数回受けたが、改善しない』という場合は、別の医療機関への受診を検討すべきです」

 シミ治療は自由診療だ。金額もピンキリ。「安かろう、悪かろう」とまでは言わないが、値段だけに惑わされず、信頼できる医師のもとで適切な治療を受けたい。