乗客が“ドラハラ”に泣き寝入りしない方法…「エコカード」の威力は凄い!【タクシードライバー哀愁の日々】

AI要約

タクシードライバーもカスハラ被害者になることがある。ドライブレコーダーの存在が抑止効果になっているが、依然として理不尽なお客も後を絶たない。

タクシードライバーがお客に対して行う嫌がらせも存在し、これは「ドラハラ」と呼ばれる。このような行為は場合によっては重大犯罪に該当する。

お客が「ドラハラ」に遭遇した場合、エコーカードを活用することでタクシー会社に問題を報告し、適切な対応を取ることができる。

乗客が“ドラハラ”に泣き寝入りしない方法…「エコカード」の威力は凄い!【タクシードライバー哀愁の日々】

【タクシードライバー哀愁の日々】#24

 テレビ、新聞などでたびたび「カスハラ」が報道される。ご存じの通り「カスタマー=顧客」の「ハラスメント=嫌がらせ」のことだ。コンビニや飲食店のお客が店の従業員に理不尽な言いがかりをつけ、トラブルに発展するケースも多い。

■被害者にも、加害者にも…

 タクシードライバーもそのカスハラ被害者となることがある。私がなりたての頃はドライブレコーダーも装備されていなかったので、お客の理不尽なクレームに何度も泣き寝入りした。いまはお客もレコーダーの存在を知っていて、それが抑止効果になっているようだが、それでもテレビのドキュメンタリー番組などを見ていると、とんでもないお客は後を絶たない。レコーダー装備以前の話だが、私自身、あまりにひどいお客にこう言って黙らせたことがある。

「お客さま、この様子は映像として会社に送られていますけど……」

 もちろん転送はおろか録音、録画もされていない。酒に酔ったお客だったが、まさに「嘘も方便」でお客の態度は一変した。

 しかし、逆もある。英語には「セーラーハラスメント」という言葉があるらしい。つまり「セーラー=売る側、サービスする側」のハラスメントのこと。省略語の「セイハラ」という言葉は聞いたことはないが、行き先を告げても返事もしない、言葉遣いが乱暴なタクシードライバーのハラスメントは「ドラハラ」といっていいかもしれない。同業者としては悲しい話だ。

 随分前の話だが、ある客からこんな話を聞いた。

「運転手さん、この前、深夜にタクシーに乗ったら、ドライバーが乗員者証の写真とは別人なのよ。挙げ句の果てに『エントツでいいかな? いつもはいくらで行ってるの?』だって……。顔を見たら怖そうだったので、言うとおりにしたけど……。もちろん、いつもの料金よりも安い料金を伝えたけどね。でも、気分のいいものじゃないね」

 場所は関東の大都市。「エントツ」とは業界用語で、メーターを“空車”のままにして目的地まで行き、ドライバーはお客と取り決めた料金をもらい、それをソックリ自分の懐に入れてしまう行為。立派な「窃盗罪」だ。ひと昔前までお客を乗せた場合、「空車」表示のバーを横に倒す方式だったが、そうせずにバーを立てたまま走ることから「エントツ」と呼ばれるようになった。さらにこのケースでは、タクシーの「また貸し」で乗員者証とは別人が運転しているわけだから、現行犯で警察に見つかれば重大犯罪だ。お客も事情聴取くらいはされただろう。

 最近は、GPSで自社タクシーの運行状況を会社はリアルタイムで知ることができるから、こんな悪事はできないが、当時はしばしば行われていたことは間違いない。ある意味でサービスする側がされる側に犯罪の片棒を担がせるわけだから、これは「ドラハラ」の極め付きといってもいいだろう。

 これは極端な例だが、もし、タクシーに乗って「ドラハラ」に遭遇したら座席の前のラックに置いてある「エコーカード」を活用することをおすすめしたい。アンケート方式のハガキになっている。不快な思いをしたら、降車時にピックアップして、乗車時のトラブル、ドライバーの対応の問題点を記入して投函すればいい。切手は不要。これがタクシー会社に届く。

 当該のドライバーは会社から厳しく事情聴取を受け、場合によってはクビになるケースもある。お客が「エコーカード」を手にしただけで、ドライバーのそれまでの横柄な態度が変わったという話もある。お客は「ドラハラ」に泣き寝入りする必要はないのだ。

(内田正治/タクシードライバー)