温泉街のタクシー消えた…対応に苦慮する旅館 唯一の事業者が撤退した大分・日田市天瀬町

AI要約

天ケ瀬温泉街がタクシー空白地となった理由について解説。かつて唯一のタクシー会社が事業廃止し、送迎サービスに影響が出ている状況。

タクシー会社が採算が取れないとして事業廃止を決断した経緯や、温泉街の経営者が送迎車を増やすなど対応策を取っている状況について報じられている。

日田市の観光課は、宿泊施設が自前で送迎を実施しているため、タクシー不在でも温泉街に大きな問題は生じていないとしており、今後の対応について検討するとしている。

温泉街のタクシー消えた…対応に苦慮する旅館 唯一の事業者が撤退した大分・日田市天瀬町

 大分県を代表する観光地、天ケ瀬温泉街がある日田市天瀬町が「タクシー空白地」となっている。町で唯一タクシー事業を展開していた「天瀬観光」(梶原英文社長)が、採算が取れないとして3月末で事業を廃止したためだ。JR天ケ瀬駅から観光客を運ぶことなどがあっただけに温泉街関係者から「業務に影響が出ている」との声が上がっている。

 天瀬観光によると、1961年から町を拠点としていたタクシー会社を2007年に買収し、タクシー事業を続けてきた。タクシーの車両は5台で、天ケ瀬駅前に2台を待機させる形で運行。買収当初は黒字だったが、乗客の多くを占める住民の利用が高齢化で減少傾向だったのに加え、20年7月の記録的豪雨で温泉街に甚大な被害が生じたことや、新型コロナウイルス禍による経営環境の悪化を踏まえて事業廃止を決断した。会社は存続し福岡県内の拠点でバス事業を展開している。

 天ケ瀬駅から車で約5分の距離にある旅館「渓仙閣」は自前の送迎車を1台用意し、駅と旅館の間で送迎サービスを実施してきた。ただ客が多くて1台では対応できないときがあり、天瀬観光のタクシーを月5回ほど利用していた。旅館の経営者で天ケ瀬温泉旅館組合副組合長の江藤俊也さん(61)は「今は送迎車を2台にして対応している。運転手は従来担当していた私に加え、フロント係の従業員に担わせている」と説明し、「フロントが手薄になる問題は解消できていない」と苦慮している様子だ。

 駅から徒歩約5分の「ryokan天龍」経営者で同組合長の大庭龍一さん(72)は「タクシーで観光したいという宿泊客の要望に応じることが難しくなった」と話す。

 日田市によると、天瀬町の延べ宿泊者数はインバウンド(訪日客)需要があった17年は約21万8千人。コロナ禍や豪雨の影響で20年は約7万人、21年は約4万9千人にまで落ち込んだがその後は回復傾向に転じ、23年は約12万7千人。市観光課は「各宿泊施設は自前で送迎を実施しており、タクシー不在でも温泉街に大きな問題は生じてないと受け止めている。ただ今後何か問題が出てくれば、地元と対応を検討したい」としている。 (西山忠宏)