最新研究で判明!「お酒を飲まなくても肝臓がんになる」…30歳以上の世代に忍び寄る”新たな肝臓病”の存在

AI要約

肝機能検査結果のALT値が30を超えると慢性肝臓病の可能性があるため注意が必要。

近年、B型・C型肝炎患者数が減少し、新たな概念であるMAFLDやNAFLDが増加している。

NAFLDやNASHは放置すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まるため、早期対応が重要。

最新研究で判明!「お酒を飲まなくても肝臓がんになる」…30歳以上の世代に忍び寄る”新たな肝臓病”の存在

 毎年1回は受けることが義務付けられている職場健診。健診結果の異常を示す「*」がついた数値には、実は気にしなくて良いものもあれば、今すぐに再検査を受けなければならないものもある。果たしてあなたは診断結果の本当の意味を理解しているだろうか。

 BMI・血圧・尿糖・眼底など項目別にその検査結果の正しい見方を解説した『健診結果の読み方』(永田宏著)より一部抜粋してお届けする。

 『健診結果の読み方』連載第29回

 『「日本人の“肝臓がん”の原因は半数がコレ!」…健診で「HCV陽性」と言われたら必ずやるべき「たった一つのコト」』より続く

 肝機能検査の項目にあるALTの基準範囲は30以下で、31~50は要注意となっています。しかし50を少し超えていても、ほとんどの内科医は気にしないでしょう。ところが数年以内に「要注意」が「要精密検査」になるかもしれない雲行きになってきました。

 2023年6月、日本肝臓学会が「Stop CLD (Chronic liver disease:慢性肝臓病)」と題して「奈良宣言2023」を発表しました。「CLD」は見慣れない言葉ですが、腎臓の「CKD(Chronic Kidney Disease:慢性腎臓病)」にならったものかもしれません。

 そのなかで「健康診断のALT値がもしも30を超えていたら、慢性肝臓病(CLD)が隠れているかもしれないので、かかりつけ医を受診しましょう」と一般市民に呼びかけているのです。

 実はこの宣言の背景には、日本肝臓学会が抱えている構造的な問題があると言われています。それは肝臓病患者の慢性的な減少です。

 患者数が多かったB型・C型肝炎は、予防が徹底されたため、患者数が急減したと言われています。さらに治療法が改善されたおかげで、肝硬変や肝臓がんに移行する患者も減りました。

 最近は、国民全体のアルコール消費量が減ったこともあって、アルコール性脂肪肝やアルコール性肝炎の患者も減り続けています。しかも若者たちは酒を飲まなくなってきていますから、将来的にはもっと患者が減ることが見込まれます。

 そんななかアメリカから、脂肪肝と脂肪肝炎の新しい概念が提案され、日本にも入ってきました。代謝異常関連脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、および非アルコール性脂肪肝炎の3つです。それぞれ英語の頭文字をとって、MAFLD(マッフルディ)、NAFLD(ナッフルディ)、NASH(ナッシュ)と呼ばれています。これらをまとめて慢性肝臓病(CLD)と呼んでいるのです。

 MAFLDは肥満、脂質異常症、2型糖尿病などの代謝異常を伴った脂肪肝で、以前はアルコール性脂肪肝と呼ばれていたものと、かなり重なります。それに対してNAFLDは、お酒を(ほとんど)飲まないひとの脂肪肝です。

 以前は非アルコール性脂肪肝と呼ばれていたものと、ほとんど同じです。またNASHはNAFLDが進行して肝炎になった状態で、以前は非アルコール性脂肪肝炎と呼んでいました。呼び方が変わったお陰で、なんだかちょっとオシャレ(? )なイメージになりました。

 いま日本ではNAFLDとNASHが急増しているとのこと。しかもこれらを放っておくと、少しずつ悪化して、やがて肝硬変や肝臓がんになるリスクが増大すると言われています。