世界でも共通度が高い「道路」の地図記号。日本の特徴や現在までの変遷をたどる

AI要約

地図記号は地図を理解する上で欠かせない要素であり、社会の変化に応じて増減しています。地図は実質的に世界を記号化したものと言える。

世界的に共通して使用されている地図記号もありますが、実際には言語と同様に地域や縮尺によって異なることが多い。しかし、2条線で表される「道路」の記号は比較的共通している。

日本の地形図では道路の記号が「記号道路」と「真幅道路」の2つに分類され、幅員によって種類が細分化されています。道路の重要性に応じて縮尺に合わせて太く描かれることもある。

世界でも共通度が高い「道路」の地図記号。日本の特徴や現在までの変遷をたどる

地図を読む上で欠かせない、「地図記号」。2019年には「自然災害伝承碑」の記号が追加されるなど、社会の変化に応じて増減しているようです。半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた「地図バカ」こと地図研究家の今尾恵介さんいわく、「地図というものは端的に表現するなら『この世を記号化したもの』だ」とのこと。今尾さんいわく、「同じ日本国内の地図でさえ種類や縮尺によって地図記号は異なる」そうで――。

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◆世界的に共通度が高い「道路」の記号

地図記号は世界共通ですか、というのは私がしばしば出会う質問だ。

答は否である。言語と同様に似ている部分はあるとしても「共通」ではない。

それどころか、同じ日本国内の地図でさえ種類や縮尺によって異なる。たとえば消防署の記号は、国土地理院の地形図ではサスマタ形なのに対して、民間出版社の地図では「火」の字を囲んだ記号を用いる例があり、寺の記号に「卍」を使わない地図もある。

それでも世界的に最も共通度が高そうな記号といえば、2条線の「道路」だろう。

もちろん細道なら1本線や破線で示すこともあるが、自動車が走るふつうの道路は圧倒的に多くの国が2条線を使っている。鉄道や送電線など、他の「線状の記号」と比べても2条線はあまりに自然な形なので、「地図記号」と認識していない人も多そうだ。

◆「記号道路」と「真幅道路」

日本の地形図では道路の記号を「記号道路」と「真幅(しんぷく)道路」に分類している。

「記号道路」とは文字通り道路の記号によって描くもので、現在は幅員によって5種類に分類され、実物より太く表現されている。

空中写真と地図を比較すればすぐわかるが、空から見た道路は意外に細くて目立たない。それでも地図上で道路は交通路として重要度が高いので、大縮尺の地図を除けばあえて太く強調している。

「平成25年図式」の分類は、(1)13~19.5メートル(歩道のある2車線)、(2)5.5~13メートル(歩道のない2車線)、(3)3~5.5メートル(1車線)、(4)3メートル未満(軽車道)、(5)1メートル未満(徒歩道)となっており、(1)~(3)が2条線である。

図上での幅は(1)が0.8ミリ、(2)が0.5ミリ、(3)が0.4ミリ、(4)は1本線、(5)は破線である。

これに対して「真幅道路」は、最も太い記号道路の(1)より広い幅員があれば縮尺通りで描く。たとえば東京の銀座四丁目交差点を通る晴海(はるみ)通りのように6車線と両側の歩道を合わせて36メートルに達するような大通りは、縮尺通り(この場合は約1.4ミリ)で表現する。

4車線以上の道路であれば中央分離帯が設置されていることが多いので、その場合は「分離帯」という細線を真ん中に入れるが、交差点などで分離帯が途切れている場所はその通りに細線を分断させて表現する。トンネル内では同じ2条線を破線で表現するのだが、分離帯は描かない。

「平成25年図式」からは、それまでの3色刷から多色刷(印刷インクは4色)となり、道路にも種類別に色を付けることになった。高速道路(高規格道路、首都高速などを含む)は緑(C70+Y70)、国道が赤(M55+Y35)、都道府県道が黄(Y35)に色分けされ、それぞれ2条線の内側に着色されている(トンネル内を除く)。

ただし軽車道と徒歩道は1本線なので線の左右に色が見えるよう、線より太い0.4ミリ幅で色を載せてあり、しばしば話題になる山間部で自動車が走れない国道は、黒い破線が赤く着色されて印象的だ。