第10戦 約2,500円のCPUクーラー性能比較!今回の3製品は定番品やリテールより静か?ちゃんと冷える?

AI要約

低価格CPUクーラーの性能を検証するため、Core i5-14500とRyzen 5 7600を使用して3つのCPUクーラーを比較。それぞれの付属クーラーとDeepCoolのAK400もテストに加えられた。温度や動作音のデータを基に各製品の性能を評価。

3つのCPUクーラーごとに長所と短所がある。ID-COOLINGのSE-903-XT-BLACKは性能と使いやすさを両立し、ZALMANのCNPS4X BLACKは高い冷却力を持ちながら取り付け難易度が高い。ThermaltakeのContac 9 SEは手軽な価格と静かな動作を重視した選択肢として考えられる。

記事はプロレスのリーグ戦を引き合いに出しながら、製品それぞれの個性を表現。性能や使いやすさ、価格などさまざまな要素を考慮して、自分のニーズに合ったCPUクーラーを選ぶことが重要である。

第10戦 約2,500円のCPUクーラー性能比較!今回の3製品は定番品やリテールより静か?ちゃんと冷える?

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第10戦は2,500円を目安にした低価格CPUクーラーに注目したい。この価格帯では、9cm角のファンを採用するコンパクトなタイプが中心になる。

 CPU付属のいわゆる“リテールクーラー”と比べて、冷却性能や静音性はどうなのか。ここでは、人気ミドルレンジCPUの「Core i5-14500」、「Ryzen 5 7600」を使って性能を検証していく。比較用として、それぞれの付属クーラーおよび定番の空冷クーラーとしてDeepCool「AK400」も加えた。低価格CPUクーラー選びの参考になるはずだ。

■ 2,500円程度で購入できるCPUクーラーをチョイス!

 早速、今回テストするCPUクーラーを紹介しよう。

 まずは、ID-COOLING「SE-903-XT-BLACK」だ。Amazonでの販売価格が2,580円と微妙に2,500円オーバーしているのはご容赦願いたい。Intel、AMDどちらのCPUソケットもバックプレートにヒートシンク固定用の金具を取り付ける、いわゆる“やぐらを組む”タイプ。取り付けにちょっと手間はかかるが、ヒートシンクをしっかり固定できるので安定性は高い。

 ネジ固定なので、取り外しは案外ラクだ。ヒートシンクのヒートパイプは3本。ファンは9cm角で風量は最大45.8CFMとスペック上は高め。TDPは130Wまで。高さ123mmとサイドフローのCPUクーラーとしては低めなのもポイントだ。

 続いて、Thermaltake「Contac 9 SE」だ。実売価格が2,200円前後と手頃な価格。IntelのCPUは、プッシュピン式のやぐらを組みヒートシンクをフックで固定するタイプ。完全ツールレスで取り付け作業を行えるのが便利だ。AMD系のソケットも標準のリテンションにフックをかけるだけ。フックもそれほど固くないので、比較的スムーズに固定できる。

 ヒートシンクは薄めでヒートパイプは2本。ファンは9cm角で風量は33.12CFMでTDPは120Wまで。スペックで見ると今回の3製品で冷却力は一番低いが、それだけに軽くて取り回しは非常にラクだ。

 最後は、ZALMAN「CNPS4X BLACK」だ。実売価格が2,200円前後とこちらも手頃な価格。固定方法はContac 9 SEと同様で、IntelのCPUはプッシュピン式やぐらにヒートシンクをフックで固定する。AMD系のソケットも標準のリテンションにフックをかけるだけだ。

 ヒートシンクは厚めで、ヒートパイプは3本。対応TDPも150Wと今回の3製品でもっとも高い。ファンは9cm角で風量は38.96CFM。低価格でスペック上の冷却力も高いが、固定するためのフックの可動域が狭く、Intel系もAMD系もフックをかけるのに苦労するのが難点だ。かなり気合いを入れて押し込む必要がある。当然ながらフックを外すのも固くてなかなか大変だ。ちょっと玄人向けの製品と言える。

 3製品の詳しいスペックは以下にまとめた。

■ CPU付属クーラーやAK400も加えて性能チェック!

 さて、本題となる冷却性能や動作音のチェックに移ろう。CPUは、Core i5-14500とRyzen 5 7600を用意した。比較対象として、それぞれの付属クーラーとサイドフローのCPUクーラーとしては定番になっているDeepCool「AK400」(実売価格4,000円前後)も加えている。

 テスト方法はCinebench 2024のMulti Coreテストを10分間連続で動作させたときの温度と動作音をチェックするというもの。温度は「HWiNFO Pro」で測定、動作音はCPUクーラーの上部5cmの位置に騒音計を設置している。室内の温度はエアコンで26度に調整、暗騒音は33.4dB前後だ。CPUグリスはArctic「MX-6」を使用した。

 CPUの設定は、Core i5-14500に関しては「PL1=65W/Tau=28s/PL2=154W」、「PL1=PL2=154W」の2パターンで測定。Ryzen 5 7600に関してはデフォルトの「TDP=65W/PPT=88W」にしている。そのほか検証環境は以下のとおりだ。

まずは、CPU温度の推移から見てみよう。

 Core i5-14500(PL1=65W/Tau=28s/PL2=154W)の結果を見ると、154Wで動くのは28秒だけであとは65W動作になり、温度はすぐに下がっている。その中で冷えている順だとAK400(TDP 220W)、CNPS4X BLACK(TDP 150W)、SE-903-XT-BLACK(TDP 130W)、Contac 9 SE(TDP 120W)、CPU付属クーラーだ。対応TDPの上限、つまりスペック上の冷却力がそのまま結果に出ていると言ってよい。

 また、Core i5-14500(PL1=PL2=154W)では今回の3製品は対応TDPを超えているため、Contac 9 SEはリミットの100℃に到達は仕方ないと言える。CNPS4X BLACKとSE-903-XT-BLACKは80℃前後で推移しているのがスゴイところだ。

 Ryzen 5 7600(TDP=65W/PPT=88W)もほぼ同じ傾向だ。基本PPT(電力リミット)の88Wで動作することになる。温度リミットは95℃なので、平均92.1℃のContac 9 SEはわりとギリギリでの推移だ。それでもCPU付属クーラーよりは冷えている。

 次に推移のデータから平均CPU温度と最大CPU温度をまとめたグラフも掲載しよう。

 推移を見ると、CNPS4X BLACKは2,200円のCPUクーラーとしては優秀と言ってよいだろう。直販2,580円のSE-903-XT-BLACKとかなり競っている。それだけに取り付けにくさが惜しいところ。着脱のことまで考えると、バックプレート型でネジ固定のSE-903-XT-BLACKのほうが扱いやすい。続いて、動作音を見てみよう。

 アイドル時やCore i5-14500などファンの回転数があまり上がっていない状態では、SE-903-XT-BLACKが優秀だ。ただ、高負荷時はCNPS4X BLACKのほうが動作音は小さいとこの2製品はここでも拮抗している。

 そして、Contac 9 SEは冷却力で見るとCPU付属クーラーよりちょっとよいぐらいだが、動作音は明らかに小さい。CPU付属クーラーのファンがうるさいと感じている人がなるべく低価格で別のクーラーに乗り換えたい、という場合の選択肢としてはよいだろう。

■ 驚くほど一長一短のある悩ましい結果!目的にマッチしたのを選ぼう

 ID-COOLING「SE-903-XT-BLACK」は今回一番高い直販2,580円だが、バックプレート型で取り付けにドライバーは必要なもののそれだけにしっかり固定しやすく、取り外しも一番やりやすい。ミドルレンジCPUなら十分冷やせて、優等生というタイプ。

 ZALMAN「CNPS4X BLACK」は、冷却力でトップに立つ場面が多く2,200円前後とは思えない性能。しかし、取り付け、取り外しの難易度も今回トップでクセは強い。玄人向けの実力派だ。

 Thermaltake「Contac 9 SE」は、CPU付属クーラーよりも冷えて静か、取り付け、取り外し難易度もそれほど高くないと、飛び抜けた実力はないが価格も含めて手軽さナンバーワンと言える。

 それぞれ個性があり、筆者としては1994年の新日本プロレス「BEST OF THE SUPER Jr.」を思い出してしまった。獣神サンダー・ライガー、ワイルド・ペガサス、2代目ブラック・タイガー、エル・サムライ、スペル・デルフィンなどなど、その後の世界のプロレス界にも影響を与える超豪華なメンバーで繰り広げられたあのリーグ戦を……。