AI半導体首位のNVIDIA、好調な決算も成長鈍化

AI要約

エヌビディア(NVIDIA)の好業績が続いており、売上高や純利益が過去最高を更新した。ただし、一部の投資家が売上高見通しに失望し、株価が一時的に下落した。

エヌビディアは主力事業をデータセンター向けAI半導体にシフトし、売上高のほとんどをこの部門が占めるようになっている。かつての主力事業であるゲーム部門の売上比率は低下している。

エヌビディアは次世代GPUの開発を進めており、AIへの支出が増加する環境下で業績を伸ばしている。最新のGPUシリーズ「Blackwell」が高速性を実現し、海外製造の遅延報道にも対応している。

 米テクノロジー大手のAI(人工知能)投資が加速する中、その計算処理に欠かせないデータセンター向けAI半導体を手がける米エヌビディア(NVIDIA)の好業績が続いている。

■ 売上高300.4億ドル、純利益165.9億ドル

 同社の、2025会計年度第2四半期(2024年5~7月)決算は、売上高が前年同期比約2.2倍の300億4000万ドル(約4兆3500億円)、純利益が約2.7倍の165億9900万ドル(約2兆4000億円)となり、いずれも過去最高を更新し、アナリスト予想も上回った。

 併せて発表した、25会計年度第3四半期(24年8~10月)の売上高見通しは325億ドル(約4兆7100億円)前後で、これもアナリスト予想を上回った。ただ、米CNBCによると、この決算発表を受け、同日の米株式市場の時間外取引でエヌビディア株は一時8%下落した。

 過去1年間のような成長ぶりが見られなかったことや、売上高見通しについて一部の投資家が失望したことなどが要因と考えられる。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、最新製品の複雑化による課題が浮き彫りになったと報じている。

 エヌビディアの純利益は過去4四半期、9倍、14倍、3.7倍、7.3倍と推移していた。ただ、それでも同社の株価は年初から8月28日の終値までに150%以上上昇している。時価総額は3兆ドル超に達し、米アップルに次ぐ世界2位である。

■ AI向け半導体部門2.5倍、全売上高の87.5%に

 24年5~7月の売上高を事業部門別に見ると、AI向け半導体を含むデータセンター部門は、約263億ドル(約3兆8100億円)で前年同期の約2.5倍になった。同部門の売上高全体に占める比率は87.5%に達した。この比率は過去5四半期、59.6%、76.4%、80.1%、83.3%、86.6%と推移。上昇の一途をたどっている。

 一方、かつての主力事業だったゲーム部門の売上高は前年同期比16%増の約29億ドル(約4200億円)だった。売上高全体に占める比率は9.6%に低下した。

 エヌビディアは90年代にGPU(画像処理半導体)企業としてスタートし、その後ビデオゲーム用半導体の主要企業に成長した。その一方で、ジェンスン・ファンCEO(最高経営責任者)は、過去15年間、GPUの新しい用途を追求してきた。その結果、同社製GPUは、暗号資産のマイニングやAI分野で採用されるようになった。昨今の生成AIブームにより、データセンター部門は売上高がゲーム部門を上回り、同社最大の事業部門へと成長した。

■ 次世代GPU、24年11月に出荷開始

 現在、米テクノロジー大手のAIへの支出が、エヌビディアの業績を押し上げるという構図が続いている。米ニューヨーク・タイムズ(NYT)によれば、米アップル、米アマゾン・ドット・コム、米メタ、米マイクロソフト、米グーグルは24年4~6月期だけで、計590億ドル(約8兆5400億円)の設備投資を行った。これは前年同期比で63%増、4年前と比較すると2.6倍になる。アップルを除けば、その大部分をデータセンターの建設と、AI構築のための新しいコンピューターシステムの導入に充てた。

 エヌビディアは24年3月に開いた開発者会議で、次世代GPUシリーズ「Blackwell(ブラックウェル)」を発表した。そのうちの「B200」は、チャットボットのようなタスクにおいて、前モデルに比べて30倍の高速性を実現する。

 Blackwellの生産体制については、一部報道で遅延が伝えられていた。だが、CNBCによると、エヌビディアは今回の決算説明会で、24年5~7月期にサンプル出荷を始めたと明らかにした。CFO(最高財務責任者)のコレット・クレス氏は、「量産を第4四半期(24年11月~25年1月)に開始し、数十億ドル規模の売り上げを見込んでいる」と説明した。

 ファンCEOは「生成AIが進んでいる方向性は非常に多様であり、実際に勢いが加速しているのを目の当たりにしている」と述べ、生成AIが大企業やスタートアップに新たな機会をもたらしていると指摘した。