欧米では主流のBPM--日本企業が推進するためのポイント

AI要約

少子高齢化やグローバル市場進出など、企業を取り巻く課題に対応するためにDXが進む中、BPMが注目されている。

BPMはビジネスプロセスを改革し、経営変革を促進するための取り組みであり、日本企業の課題に有効な特効薬として位置づけられている。

BPMの活用によって組織内の分断や業務のブラックボックス化などの問題を解消し、経営の効率化や業務プロセスの最適化が可能となる。

欧米では主流のBPM--日本企業が推進するためのポイント

 少子高齢化による長期的な労働人口の減少、縮小する国内市場だけでなくグローバル市場に進出するための「稼ぐ力」の向上など、企業を取り巻く課題は山積しています。その解決の一手として、2010年代半ばごろからデジタルトランスフォーメーション(DX)を掛け声に多くの企業でデジタル化が進みました。

 一方で、DXというスローガンが先行し、ただデジタルツールを導入することが目的になってしまった企業も少なくありません。あくまでデジタルツールは、先ほど紹介したような環境変化に対応するための手段にすぎず、本来の目的はトランスフォーメーション、つまり企業変革にあることを忘れてはいけません。

 そして、経営変革に役立つキーワードとして、あらためて今注目すべきキーワードが「ビジネスプロセスマネジメント(Business Process Management:BPM)」です。筆者が所属するフリーダムでは、BPMを通じた各社の経営変革支援を行っており、業界を問わず各社の業務プロセスの可視化や標準化に貢献しています。その経験を踏まえ、今回と次回の2回に分けて「なぜ今BPMに注目すべきなのか」や、実際にBPMを通じて企業変革を成し遂げるためのヒントを解説していきます。

BPMは「日本企業あるある」の特効薬

 まずは、「そもそもBPMとは何か」から解説しましょう。BPMとは一言で表現すれば「ビジネスプロセス志向で、継続的に改革を推進すること」です。さらにかみ砕けば、顧客への価値創出のために必要な構成要素やフローを明確にした上で自社の業務プロセスを俯瞰し、それぞれの要素を段階的にブラッシュアップしていくことともいえます。

 似ている言葉に「ビジネスプロセスリエンジニアリング(Business Process Re-engineering:BPR)」があります。こちらはBPMと違い、既存のプロセスなどをいったんなかったこととし、ゼロから構築し直す取り組みを指します。その意味では、既存のプロセスの延長線上の活動であるBPMの方が着手しやすいといえるでしょう。

 では、なぜ経営変革にBPMが重要なのでしょうか。それは、日本企業が陥りがちな課題に効く取り組みだからです。例えば、多くの企業からお話を伺っていて頻繁に出てくる課題が、経営層と現場の認識がなかなか合わずに前に進まないケースです。「こうしたい」とトップが戦略を示したにもかかわらず、現場サイドから反発が生まれた経験を持つ読者の方も多いのではないでしょうか。

 こうした事態が起こるボトルネックとして、各部署が分断されてしまっていることなどが挙げられます。また「普段の業務で忙殺されているのに、わざわざ新しいことなんてできないよ」という意見もあるでしょう。

 そんな時、BPMの考えを基に全社のプロセスを明らかにすれば、各部署の結びつきを俯瞰できるようになります。すると、何をすべきかが明確になり、かつ取り組みによってどんな効果が生まれるのかも分かりやすくなることで、納得感を持って、前向きに取り組める機運が高まるのです。

 そのほか、日本企業によくある課題が「業務の属人化」です。特に製造業などでは、暗黙知によって動いている現場も多く、作業効率がなかなか向上しないだけでなく、技術継承が難しくなってしまいがちといえます。こうしたケースでもBPMに取り組むことで、業務全体の俯瞰につながり、問題となっている箇所の特定から、業務の効率化や技術伝承しやすい環境構築による人材育成の強化を実現できるでしょう。

 属人化と近しい課題に、業務のブラックボックス化があります。この課題は、取引先に迷惑が及ぶことにもつながります。フリーダムが支援した某メーカーのケースでは、自社倉庫から商品を出荷した後、物流情報との連携が不十分だったため、在庫のリアルタイムな管理が難しく、取引先からの問い合わせに対して対応に工数がかかっていました。

 そこでBPMに基づいた支援を行い、社外の物流情報も含めて業務プロセスを明確化しました。これにより、問い合わせ対応の工数削減だけでなく、取引先を巻き込んだ協力体制も構築でき、サプライチェーン全体の最適化につながりました。

 BPMは、コロナ禍を機に多くの企業が加速させたDXにも効果を発揮します。DXを推進する場合、情報システム部や突貫的に組成された推進室のような部署が主体となることが多いのではないでしょうか。しかし、こうした進め方だと「導入ありき」の名ばかりDXになってしまいがちです。そこにBPMの考え方を取り入れることで、本来の目的である企業成長や、企業が目指すビジョンからブレークダウンする形でプロセスを整理でき、変革に直結するDXが実現するはずです。