「ビジネスフレームワーク」で読み解くアップル経営

AI要約

アップルがスティーブ・ジョブズ亡き後も成長を続ける理由と、ビジネスフレームワークの重要性について解説。

ビジネスフレームワークの学習の重要性と、実践を通じてその真の威力を理解する必要性。

iUでの授業でのフレームワーク活用法と、自ら実際にフレームワークを使って分析する重要性。

「ビジネスフレームワーク」で読み解くアップル経営

 カリスマ経営者のスティーブ・ジョブズ亡き後も、米アップル(Apple)は快進撃を続けて成長し、世界で初めて時価総額3兆ドル企業になった。その成長の背後には、どのようなビジョンやストーリーがあったのか。情報経営イノベーション専門職大学(iU)で講師を務める松村太郎氏と徳本昌大氏は、躍進するアップルでいったい何が起きていたのかを、さまざまなビジネスフレームワークを駆使して読み解く研究に取り組んだ。

 その成果を『最強Appleフレームワーク─ジョブズを失っても、成長し続ける最高・堅実モデル!』(時事通信社)として出版したのを機に、このほど両氏がiUで実施した特別授業で、フレームワークの活用法などを話してもらった。

 ―ビジネスでフレームワークはなぜ必要なのですか?

 徳本 入社した当時の広告代理店での経験が、私にビジネスフレームワークの重要性を教えてくれました。先輩たちから徹底的にたたき込まれたフレームワークの使い方は、ビジネスの問題解決において極めて強力なツールであることを実感できました。現代のビジネス環境では、多くのビジネスパーソンが社会に出てから複雑な問題解決に苦労しています。この背景には、ビジネスフレームワークの知識と実践の不足があると考えられます。この状況を改善するため、私たちの授業では「学生たちが起業し、ビジネスパーソンになった時に社会で困らないようにする」ことを目的としています。

 この目的を達成するためには、ビジネスフレームワークの学習を可能な限り早期に開始することが効果的です。「武器を持つことは、早ければ早い方がよい」という考えの下、iUでフレームワークの授業を実施しています。さらに、この授業内容を誰もが知っているアップルをテーマに書籍化することで、より多くの人々に分かりやすく伝えることができると考えたのが、本書執筆のきっかけになったのです。

 最近、支援しているベンチャー企業の経営者との対話で気付いたのは、多くの経営者がフレームワークの基本は知っていても、その本質的な活用方法を理解していないということです。例えば、「5フォース分析」の具体的な適用方法が分からなかったり、「SWOT分析」は行っても、それをさらに深化させた「クロスSWOT分析」までは行わなかったり、といった具合です。

 しかし、基本的なSWOT分析だけでは真の競争優位性を見いだすことは難しいと私は考えます。クロスSWOT分析まで踏み込んで初めて、自社の強みと機会を結び付けた独自の戦略が浮かび上がってくるのです。

 このような経験から、私は自ら実際にフレームワークを使って分析を行うことの重要性を強く感じています。理論として知っているだけでなく、実践を通じて初めて、フレームワークの真の威力を理解し、それを効果的に活用する能力が身に付くのです。

 松村 フレームワークとは「枠組み」や「構造」のことで、ビジネスフレームワークは、共通して用いることができる考え方や、ある情報や状況を分析するための方法論、問題解決の道筋、戦略立案のテンプレートなど、多種多様なものがあります。

 iUの授業でフレームワークを“共通言語”にしながら議論したり、あるいは何か物事を“共通の物差し”で判断したりしていくことを目指してきました。読者の皆さまにも、このフレームワークを知るだけでなく、自分の手で描きながら活用していただきたい、と考えています。