「グーグルにも負けない」富士通、阪大が「使える」量子コンピューター早期実現へ新手法。5年の計算、10時間で

AI要約

大阪大学と富士通が共同で使える量子コンピューターの可能性を開拓

量子ビットのエラーを訂正する取り組みにより、実用的な量子コンピューターへの道が広がる

100万量子ビットのハードルを下げ、世界をリードする存在として注目を集める

「グーグルにも負けない」富士通、阪大が「使える」量子コンピューター早期実現へ新手法。5年の計算、10時間で

「今回の成果は、グーグルにも負けない成果だと思う」

大阪大学で量子コンピューターの研究に携わる藤井啓祐教授はそう話す。

8月28日、富士通と大阪大学が「使える」量子コンピューターの実現に向けて、時計の針を大きく早める可能性を持つ技術を確立したと発表した。

次世代コンピューターとして期待されている量子コンピューターの実現に向けて、世界ではグーグルやIBMなどの巨大企業が先行して研究開発・商用化を進めている。富士通も、理化学研究所との共同研究などを通じて2023年春に国産の量子コンピューター1号機を開発。国内ではトップランナーとして存在感を放っている。

量子コンピューターでは、「量子ビット」と呼ばれる量子力学の原理を活用した装置を使い計算する。ただ、量子ビットは非常に不安定で、ノイズなどの影響でどうしても「エラー」が生じてしまう。

「量子ビットの数や計算のステップが増えるほど、(エラーによって)量子コンピューターでうまく計算できる確率は下がってしまう。これが、量子コンピューターのボトルネックなんです」(藤井教授)

だからこそ、世界ではエラーを訂正する仕組みを導入した量子コンピューター(FTQC)の実現に向けた研究開発が進められている。

これまでの研究によって、量子ビットを複数使う(冗長化する)ことで、エラー訂正を実現できることが知られている。ただ、実用的な計算をする(使える)量子コンピューターを実現するには、理論上100万個もの量子ビットが必要だとされていた。世界中を見渡しても数十量子ビット、数百量子ビットの装置しか構築できていない現状からすると、100万量子ビットの量子コンピューターの実現に向けたハードルは高い。

これが使える量子コンピューターの実現がまだかなり先だと言われる大きな要因となっている。

今回、富士通と大阪大学が共同発表した成果は、この100万量子ビットの壁を引き下げ、早期に実用可能な量子コンピューターへの道を開く可能性を持つ。