折りたたみスマホが次々と登場する中国 カワイイニーズ&成金ニーズがキーワードか

AI要約

中国市場では、折りたたみスマホが人気急上昇しており、5大メーカーから次々と新製品が登場している。

中国市場において、価格やデザインなどのニーズがカワイイと成金を中心に高まっており、ファーウェイが最もシェアを持つ。

カジュアル化や価格の下落が進む中、耐久性や修理費用の面で課題もあるものの、中国国内での折りたたみスマホ市場は大きな拡大が期待されている。

折りたたみスマホが次々と登場する中国 カワイイニーズ&成金ニーズがキーワードか

日本で折りたたみスマホと言えば、Galaxyかモトローラだが、中国市場では主要5社から、次々と新製品が登場。今年にはその台数は1000万台を超えると言われている。そのキーワードはカワイイニーズ&成金ニーズ!?

 中国のスマホ市場でシェアを獲得しているファーウェイ、シャオミ、OPPO、vivo、Honorといったメーカーから次々と折りたたみスマホが登場している。

 

ファーウェイは縦折りと横折りを両方リリース

価格は高価だが、折りたたみ機の50%以上のシェアを持つ

 折りたたみスマホは、ASCII読者ならご存じのように横折りと縦折りに分けることができ、さらに横折りは外側折りと内側折りがある。前述の5社とも横折りで内側折りのスマホをリリースしており、中国では最も競合が激しい。

 

 続いてずんぐりコンパクトな形状となる縦折りのスマホはファーウェイとOPPOとvivoが、横折りで外側折りのスマホはファーウェイとHonorが発売している。つまり、ファーウェイは全タイプを用意しており、かつ日本円で約60万円はすると言われる3つ折りスマホまで噂になっている。平均価格は最も高いが、それでも中国国内での折りたたみ機では50%超の高いシェアを得ている。

 

 一方で、中国では各メーカーが折りたたみスマホの値下げをしている。これは製造技術と歩留まりの大幅な向上による部分と、ユーザーがコスパを最優先していることで、販売促進が目的という2つの側面がある。軽さや薄さに注目が集まる一方で、折りたたみ式スマホの画面の耐久性やヒンジの故障率の高さ、それにかかる修理費という部分はやはり課題だろう。

 

 日本のガラスメーカーの日本電気硝子によると、中国メーカー各社への強化ガラスの納品実績が折りたたみスマホを含めてあるとのことで、同社の化学強化専用超薄板ガラス「Dinorex UTG」は多くの問い合わせがあるという。

 

 

 モトローラのrazrシリーズに採用実績がある「Dinorex UTG」は、同社製品の動画を見るとわかるように、心配になるほどよく曲がり、それでいて薄く強いのが特徴だ。中国でも競合製品が製造されていて薄く加工することはできるが、その分強度も弱まってしまうという。Dinorex UTGの導入が各社で進めば、より小さく軽く壊れにくく、修理に出さない製品が期待できるというわけだ。

 

中国国内での折りたたみ機の市場規模は1000万台を超えそう

でも年間3億台の中国市場ではまだまだマイナーな存在

 さて調査会社のiResearchによると、中国向けの折りたたみスマホの出荷台数は年々増え、2023年は610万台になり、2024年には1000万台を超えると予想している。メーカー別では前述のようにファーウェイが50%以上のシェアを獲得。カジュアル化され男性よりも女性の購入者が上回るようになっている。

 

 年間1000万台以上と聞くと、相当に売れてるように思えるが、なにせ中国は人口が多い。スマートフォン全体の出荷台数では四半期で7000万台前後を推移。単純計算で中国では年間3億台弱のスマートフォンが出荷されているのだ。中国の都市のモールなどにある、各メーカーのショップではよく売れているようだが、だからといって普及しているかというとそうでもない。

 

 中国各地で暮らす日本人に現地での折りたたみスマホを使っている人を見るかと聞いてみた。

 

 上海在住の人いわく、「ちょくちょく見ますね。でもまあかなりマイナーな気がします。使ってる人をたまに見ると『おっ、折りたたみだ!』と感じる程度にはマイナーです。身近だとうちの上司くらいです。学生でも飛びつきそうな人が多そうではあるのですが、実際そんなでもないです。折りたたみスマホはファーウェイのお店とかでプッシュされていますが、やっぱ高いですよね。同じ高いのなら普通の学生はiPhoneとかを買うんじゃないですかね。まだまだ好きモノじゃないと手を出さないレベルの気がします」とのこと。上海は最も平均所得が高く、ハイエンド製品への情報を多く得ているが、それでもその程度だ。

 

 上海に続いて、平均所得の高い北京在住の人はにも聞いた。「普通のスマホを折りたたみしたサイズ(縦折りスマホ)のものは、20代の若い子が持っているのはたまに見かけます! 大きめのタブレットにもなるもの(横折りスマホ)は、30~40代くらいの人が持っている印象です」。縦折りスマホは若い人、横折りスマホはもうちょっと年上というのは中国のネットでも日本でも似たような傾向かもしれない。

 

 たとえば、縦折りのOPPO Find N3 Flipはポップで女性も持ってデコレーションするような使用レポートを多く見るのに対し、横折りのOPPO Find N3ではタワーオフィスからのデキる男を演出するような見せかたを見る。

 

 上海に加え業務で内陸の都市をよく移動する人によれば、「上海で見たのは、会社の経営者や成金マダム、あとドラマや映画などの動画を見たい層です。また上海以外では持っている経営者が日に日に多くなっている感じです。飛行機で移動していると、中年以上の人が持っているのもよく見ます。高所得者層で中年の50代後半ですかね、特に老眼が始まった世代が多いように思います。逆に30代まではあまり使用しているのを見ません。普通のスマホサイズから縦に折れるタイプはほぼ見た事がなく、見たことがあるのは横折りタイプが多いです」とのこと。

 

若い人はお金があるならiPhoneを購入する!?

お金持ちの象徴としての価値 三つ折りスマホもそこにハマる!?

 「キーワードはお金と老眼かと思います。iPhoneと同じかそれ以上の値段を出すなら、iPhoneのほうがいいという若者は多いのでは」と分析した。近年中国で「国潮」と呼ばれる自国製品推しがトレンドとなっているが、それなりにお手軽価格でないと実際に購入には繋がらないようだ。ましてや財布事情が厳しく、消費が進まない今ならなおさらである。

 

 またASCIIでの筆者の中国連載でもノートパソコンが高価だった10数年前の記事で、高価なThinkPadは中国人経営者にとって商売がうまくいっている証となるガジェットであったことを紹介したことがある。

 

 当時はデデンと定番の金持ちガジェットを持っていることがデキる男の証だった。これと同じような現象が、横折りスマホで起きている可能性があったのだ。高価なファーウェイのハイエンドスマホが売れるのも腑に落ちるし、そのファーウェイから約60万円もする三つ折りスマホがリリースされても市場で受け皿がある可能性は考えられる。

 

文● 山谷剛史 編集● ASCII