目の前で人が倒れたら…AED、いざというときに使えますか? 市民が目撃する心停止、年間およそ3万人

AI要約

日本では2001年にAEDが一般市民に解禁され、多くの命が救われている。現在は69万台以上が設置され、使えるだけで約4倍の救命率が期待されている。

日本AED財団によると、人が倒れたらまず呼吸確認し、119番通報をして救命措置を取ることが重要。一人の場合も逡巡することなく行動し、AEDがあればすぐに使用した方が良い。

救急車の到着までの時間が重要であり、救急処置の必要性が高まっている。AEDの適切な使用は命を救うのに重要な要素となる。

目の前で人が倒れたら…AED、いざというときに使えますか? 市民が目撃する心停止、年間およそ3万人

年間およそ3万人が、誰かの目の前で突然心臓が止まって倒れている――。そんなとき、使いたいのがAED(自動体外式除細動器)です。一般市民に解禁されてから7月で20周年を迎えましたが、目撃されても実際にAEDで電気ショックが施されたのは、4%程度にとどまっています。目の前で誰かが倒れたときにどうしたらいいのか、AEDの使い方は……。医師や専門家を取材しました。(withnews編集部・河原夏季)

AEDは、心臓がブルブル震える「心室細動」の状態になってしまった際、電気ショックによって元に戻すための機器です。

そもそもは医師たちしか使えませんでした。日本では2001年に国際線の航空機へAEDが搭載され、客室乗務員も使用が認められるようになりました。しかし、一般の市民も使えるようになったのは2004年7月に厚生労働省の通知が出てからのことです。

市民がAEDを使って救った命は、解禁翌年2005年の年間12人から、2022年は618人と大幅に増加。解禁から累計8000人以上とされています。

厚生労働科学研究費補助金による調査では、現在街中に設置されているAEDは推計69万台で、世界的にみても多いそうです。

では実際に、目の前で人が倒れたらどうしたらよいのでしょうか?

日本AED財団によると、すぐに駆け寄って反応を確認し、周囲に人がいたら応援を求めることが大切です。

人が複数いる場合は、119番通報をする人、AEDを取りに行く人、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始める人というように手分けをします。

呼びかけても反応がなく、まともな呼吸がない場合はすぐに胸骨圧迫が必要です。胸骨の下半分に両手を組んだ手の付け根を当てて、胸が約5cm沈むまでしっかり体重をかけて押す必要があります。

1分間に100~120回のテンポで押し、倒れた人が動き出すか、救急隊員が到着するまで続けることがポイントです。このテンポは「アンパンマンのマーチ」の曲などが目安となるとされています。

周りに人がおらず一人のときは、まず迷わず119番通報。電話口で指令員が胸骨圧迫のやり方も教えてくれます。

近くにAEDがあると分かっている場合は、誰かに頼んで取りに行ってもらうとよいそうです。ない場合は救急隊が到着するまで胸骨圧迫を続けます。

心臓が止まってしまった場合、AEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下します。119番通報をしても、すぐに救急車が来るとは限りません。

総務省消防庁によると、2022年現在、救急車の到着時間は全国平均で10.3分となり、初めて10分を超えました。居合わせた市民による救命処置が命を救うカギとなります。

119番通報に加えて、胸骨圧迫をすることで約2倍、AED使用で約4倍、救命率が上がるとされます。AEDが数分以内に使われることで、脳や心臓へのダメージが抑えられ、後遺症なく社会復帰できる可能性が高まるそうです。