国内市販薬EC市場は904億円(2023年)、2029年は1126億円に拡大と予想

AI要約

市販薬EC市場が着実に成長し、2023年には904億円に達した。特に発毛剤やビタミン剤、ドリンク剤が市場をけん引している。

ECチャネル別ではECモールが7割弱を占め、参入メーカーやドラッグストア・調剤薬局のECサイトも拡大している。特に発毛剤のEC市場が注目を集めている。

2029年までの市販薬EC市場の予測では、さらなる成長が期待される。また、要指導医薬品のネット販売解禁により、市場拡大が見込まれている。

国内市販薬EC市場は904億円(2023年)、2029年は1126億円に拡大と予想

富士経済が7月18日に公表した市販薬のEC市場に関する調査結果によると、2023年の市販薬EC市場は904億円で、国内の市販薬全体市場における比率(EC化率)は6.9%だった。発毛剤やビタミン剤、ドリンク剤が市販薬EC市場をけん引。EC化率も着実に拡大している。

ECのチャネル別需要を見ると、ECモールが市場の7割弱を占める。参入メーカーによるECは市場の2割強を占めており、ブランドの指名買いによる安定した売り上げを確保している。ドラッグストアや調剤薬局のECサイトは、チェーンによって販売に温度差があるという。

富士経済は市販薬EC市場のうち、注目市場として発毛剤に着目。2023年における発毛剤EC市場は110億円で、市販薬EC市場に占める発毛剤ECの割合は12.2%。発毛剤は実店舗での購入で人の目が気になったり、抵抗感を感じたりする利用者がいるため、EC比率は32.2%と高い。毛髪が成長するまで時間を要することから、複数本のまとめ買いニーズに対応した展開(セット販売)のほか、実店舗や競合製品に対して価格面で優位性を打ち出す展開などが行われている。

発毛剤の対象は、発毛促進、育毛、脱毛の予防、ふけ・かゆみの防止、壮年性脱毛症や円形脱毛症、薄毛等における発毛、育毛および脱毛(抜け毛)の進行予防などの効果・効能を持つ市販薬など。ECチャネルでの展開をメインとしているアンファーの「スカルプD メディカルミノキ5」、実店舗でも同様に展開する大正製薬の「リアップ」シリーズなどがある。

市販薬は2014年6月12日の改正薬事法の施行により、一部を除きネット販売が可能となった。参入メーカーのECサイトやECモール、ドラッグストア・調剤薬局ECサイトなどで販売が広がった。特にECモールでの伸長により市場は拡大している。

医療用医薬品から市販薬に移行した直後の要指導医薬品については対面販売義務があったものの、2023年に厚生労働省が薬剤師のビデオ通話による服薬指導を条件に2025年以降ネット販売を解禁する見通しを明らかにした。市販薬のネット販売は全面解禁に向かっている。

市販薬EC市場は今後も成長すると予想。6年後となる2029年の市販薬EC市場は、2023年比で24.6%増の1126億円と予測している。EC化率も同1.2ポイント増の8.1%となる見通し。

発毛剤やビタミン剤、ドリンク剤に加え、実店舗で購入しにくい製品、購入の緊急性が低い製品、持ち運びにくい製品、まとめ買いに向いた製品など、実店舗の棚に入りにくいニッチな製品はECサイトで検索しやすいことから、今後もECシフトは進むと予想する。

また、2025年以降、要指導医薬品のネット販売解禁が予定されていることから市場へのプラス要因になると見られる。2029年における発毛剤EC市場は、2023年比30.9%増の144億円を見込んでいる。

□ 調査概要

・調査対象:ECチャネルを介する市販薬(OTC医薬品)※ドリンク剤は医薬部外品を含む

・品目区分:ビタミン剤(ビタミンB1主薬製剤、ビタミンB2主薬製剤、しみ改善薬)、ドリンク剤、総合胃腸薬、痔疾用薬、便秘薬、総合感冒薬、解熱鎮痛剤、鼻炎治療剤(内服)、外用消炎鎮痛剤、皮膚治療薬、発毛剤、目薬、その他市販薬

・ECチャネル区分:メーカーECサイト、ECモール(メーカー・小売り出店分)、仮想ショッピングモール(ECモール企業仕入販売分)、ドラッグストア・調剤薬局ECサイト、その他ECサイト

・調査方法:富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用

・調査期間:2024年5~6月