空港の中なら電動スーツケースで走行できるのか?成田、羽田、関空の規約を調べてみた

AI要約

電動スーツケースは、公道での走行は原付扱いになり、主に空港内での利用が想定されている。

日本では電動スーツケースに関する法的瑕疵があり、一部空港では走行を制限している。

成田、羽田、関西の主要国際空港も電動スーツケースに関する見解を公式サイトで示しており、走行には注意が必要とされている。

空港の中なら電動スーツケースで走行できるのか?成田、羽田、関空の規約を調べてみた

現在、何かと話題の「電動スーツケース」。都心では主に外国人観光客による走行が目立っている。

電動スーツケースは、公道で走る場合は原付扱いになる。寸法の指定や保安部品の設置などが求められるが、電動スーツケースにそのような仕様を施すことは現実的ではない。

そもそも、この製品は広い空港内を移動する用途で考案されたという背景がある。つまり「私有地内専用」なのだ。

しかし、日本の空港を電動スーツケースで走行することは可能なのか?

電動スーツケースのパイオニアといえば、筆者の知る限りは2015年にクラウドファンディングKickstarterに登場した『Modobag』である。

通常のスーツケースと殆ど変わらない見た目、そして収納機能を持ちながら、本体に人を乗せて最高時速約13kmで走行できる電動バイクである。

空港内を悠々と走行する動画が話題を呼んだが、Kickstarterでは目標額に達する出資を得ることができなかった。

その後、舞台をIndiegogoに移して再チャレンジ。そこからModobagは一般販売を実現している。今ではModobagと同等のスペックを持ちながら、それよりもさらに安価の他社製品も登場している。

筆者はModobagが登場した当時、@DIMEではない別のメディアでこの製品についての記事を執筆した。読者には「珍奇な乗り物」として笑いの種にされていたのを覚えている。「乗ってみたい!」「楽しそう!」という声も少なくなかったはずだ。

それから10年近くが経過した今、我々日本人は電動スーツケースの存在を笑えなくなってしまった。

2024年6月25日、大阪府警は中国籍の女性を道路交通法違反で書類送検した。この女性は、大阪市内の歩道を電動スーツケースで走行していたのだ。

「電動スーツケースの公道走行」に対する摘発は、これは全国初の例である。

ただ、これはあくまでも「公道で乗ってはいけない」ということで、空港の建物内では法的瑕疵はないはず……とここで言い切ることはできない。

「法的」という文言を出すと、メディアとしては弁護士の見解が必要になるはずだからだ。残念ながら、筆者は弁護士資格を有していない。

しかし、日本国内の主要空港の見解を紹介することはできる。

あまり知られていないことだが、既に成田・羽田・関西の主要国際空港が電動スーツケースに関する見解を公式サイトで発表している。まずは成田空港のそれを見ていこう。

「成田国際空港ではお客様の安全のため、電動スーツケースによる走行は原則お控えいただきますようお願いいたします。やむを得ず使用される場合は、ご自身の責任の元、周囲の安全にご配慮いただきますようお願い申し上げます」

「原則お控えいただきますよう」というのは、日本語らしい言い回しである。ただ、その後に続く文章を読む限りは「完全に禁止しているわけではなく、安全に気をつけながら電動スーツケースを利用してほしい」という意味になるだろうか。

次に、羽田空港の公式サイトを見ていきたい。

「他のお客さまとの接触事故を防止するため、羽田空港ターミナル内における電動スーツケースによる走行はご遠慮いただきますようお願い申し上げます」

記載されているのは、この一文のみ。成田空港よりも若干厳しい態度で臨んでいる、という理解で概ね間違いはないか。

後編では関空が打ち出している声明と、今後の電動スーツケースをめぐる見解を予想していく。

取材・文/澤田真一