Intelの「Gaudi 3」って何? AIアクセラレーターとGPUは何が違う? NVIDIAやAMDに勝てる? 徹底解説!

AI要約

Intelが開発したAIアクセラレーター「Gaudi 3」の特徴について解説。

過去のCPUやGPUに対する取り組みから、AIアクセラレーター分野での位置づけを説明。

GPUとの違いや、Gaudiがどのような役割を果たしているのか詳細に説明。

Intelの「Gaudi 3」って何? AIアクセラレーターとGPUは何が違う? NVIDIAやAMDに勝てる? 徹底解説!

 6月に開催された「COMPUTEX TAIPEI 2024」の基調講演において、Intelは新型のクライアント向けCPU「Lunar Lake」(開発コード名)と、サーバ/データセンター/HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)向けCPU「Xeon 6プロセッサ」の技術的な詳細を発表した。

 基調講演でもう1つ、同社はAI(人工知能)を運用するサーバ向けのAIアクセラレーター「Gaudi 3」についてもアナウンスしている。

 昨今のAIブームにおいて、AIアクセラレーターの役割は大きい。しかし、クライアント向けのCPUやGPUと異なり“表”に出てくることが少ないこともあり、「Gaudiって何? 3ってことはもう第3世代なの?」と、疑問符が多数浮かんでいる読者もいるだろう。

 そこで本稿ではGaudiが“ナニモノ”なのか、そしてその最新世代であるGaudi 3はどのような特徴を持っているのか、解説していく。

 IntelのAIアクセラレーター「Gaudiシリーズ」は元々、イスラエルのAI関連プロセッサ開発ベンチャー企業である「Habana Labs」が開発していたものだ。Intelは2019年にHabana Labsを買収し、同社が開発を進めていたAI学習アクセラレーター「Gaudi」を主力製品ブランドとして展開していく方針を固めた。

 この分野における競合であるNVIDIAやAMDは、自社開発GPUそのもの、あるいはそれを下地として開発したAIプロセッサを発売している。しかし、Intelは下地そのものがなかった。正直に言ってしまえば、Intelは汎用(はんよう)計算に対応するGPU(いわゆる「GPGPU」)の開発に乗り遅れていたのだ。

 元々が「CPU屋さん」であるIntelは、高密度な演算をGPUにやらせることに肯定的でなかった。同様に元がCPU屋さんで、2006年にGPUメーカーのATIを買収したAMDも、ほぼ同じ理由でGPGPU対応に乗り遅れている。

 ではCPU屋さんだったIntelは、どうしようとしていたのか――メニーコア型のCPUで対抗しようとしていた。

 同社はx86アーキテクチャのCPUコアを大量に載せた「Larrabee」(開発コード名)の開発に取り組み、GPGPUあるいはHPCで求められる「高密度演算」のニーズに応えようとした。その成果は2012年末、「Xeon Phiコプロセッサ」として結実した。

 IntelはXeon PhiコプロセッサをGPGPU/HPCユーザーに売り込もうとした。しかし、ユーザーからは演算性能面で失望されてしまい、2017年をもって展開を終了してしまった。

 この痛い経験から、同社はその後、“待ったなし”で市場に速攻投入できるAIアクセラレーターを切望したのであった。だからこそ、Gaudiの開発に取り組んでいたHabana Labsの買収に動き、自社のポートフォリオに統合したのである。

演算に特化している「Gaudi」

 Gaudiを巡る経緯はこのようなものだが、「AIアクセラレーター」という呼び方にまだピンと来ない人がいるかもしれない。

 分かりやすく説明すると、GaudiはGPUから、普通のGPUに求められるグラフィックス機能を省いたものだ。言うなれば「ガチのGPGPU専用GPU」なのだ。

 「NVIDIA Hシリーズ」や「AMD Instinctシリーズ」といった競合製品は“GPU”で、3Dグラフィックスのレンダリングにも対応している(実際に、クラウドゲーミングや超高度な3Dグラフィックスを扱うサーバでのレンダリング用途で採用されるケースもある)。そういう意味で、ある程度の汎用(はんよう)性も備えている。

 それに対して、Gaudiシリーズにはグラフィックス機能が一切搭載されていないため、HシリーズやInstinctシリーズのようにレンダリング用途には使えない。極端な言い方をすれば超高速な演算をすることにしか、役割を見いだせない。

 普通のGPUとしては利用できないので、「AIアクセラレーター」と呼んでいる――そう解釈してもいいかもしれない。