米国生まれの「ヨシノパワー」が“固体電池”のポータブル電源に注力する理由

AI要約

ポータブル電源の需要が高まり、固体電池を使用した製品も登場している。

固体電池は耐熱性や長寿命、安全性が高いが、出力が課題となっている。

ヨシノパワージャパンは固体電池を使用したポータブル電源を提供し、技術の優位性を強調している。

米国生まれの「ヨシノパワー」が“固体電池”のポータブル電源に注力する理由

 モバイルバッテリーが市民権を得たと思ったら、家電量販店やホームセンターでは交流100V出力に対応する「ポータブル電源」もよく見かけるようになった。自然災害の多い日本では、突然の停電に備えて会社や家にポータブル電源を用意しておく、というニーズも高まっているという。キャンプによく行く人にも、手軽かつ大容量な電力を持ち運ぶ手段としてポータブル電源を持ち運ぶという話をよく聞く。

 日本におけるポータブル電源市場には、国内外の企業が次々と参入している。ヨシノパワージャパン(東京都文京区)もその1社で、2023年末に世界初をうたう「固体電池を使ったポータブル電源」を発売した。2611Whで40万円を超える超大容量製品を含めて4製品を一気に投入し、一部のギーク層から注目を集めている。

 固体電池は、現在主流のリチウムイオン/リチウムポリマー電池と比べると耐熱性に優れ長寿命で、安全性も高いというメリットがある反面、出力を上げにくいという課題もある。自動車メーカーは次世代の電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV/PHV)向けのメイン電源として固定電池の量産化開発を進めているものの、現時点では実現していない。

 そんなこともあり、筆者は「え、このポータブル電源は本当に固体電池を使っているのか?」と疑ってしまった。読者の皆さんにも、同様の疑問を持っている人がいるはずだ。

 そこで今回、ヨシノパワージャパンの桜田徹社長にインタビューを実施。ヨシノパワーという会社の成り立ちや、同社のポータブル電源に搭載された“固体電池”がどのようなものなのか、話を聞いた。

―― 米国のYoshino Technology(ヨシノパワージャパンの親会社)と、ヨシノパワージャパンはどのようなきっかけで創業されたのでしょうか。

桜田社長 Yoshino Technologyは、2021年に米国のカリフォルニア州で誕生しました。ヨシノパワージャパンについては、同社の日本法人として2023年1月に設立されました。ヨシノパワーは米国生まれのブランド、ということになります。

 Yoshino Technologyの創業者は元々、発電機などを開発/製造する企業を経営していました。しかし、米国の一部の州でガスを利用した発電機の製造に規制が入ってしまい、「だったら(ポータブル)バッテリーなら勝機がありそうだ」と考えたことが創業のきっかけです。

 創業者と私の関係ですが、実は私が米国に交換留学に行った時からの知り合いです。彼から「日本での展開を手伝ってくれないか?」とお願いされたことから、私が日本法人の代表として就任することになりました。

―― Yoshino Technologyは、発電に知見のある創業者のもとで生まれた会社なのですね。とはいえ、技術的にまだ成熟しているとはいえない面もある固体電池を、いきなりポータブル電源に使おうというのはハードルが高く、チャレンジングだと思います。この技術は、どこから来たものなのでしょうか。

桜田社長 先述の通り、創業者には発電機に関するノウハウがあります。その“つて”を使うことで、ポータブル電源をすぐに作ることができました。技術のコアとなる固体電池は、Yoshino Technologyの兄弟会社が製造したものを生産しています。

 製品の金型についてはYoshino Technologyが持っているものの、同社自身はファブレス、つまり生産工場を持っていません。技術力と品質が確保できる外部企業に(金型や部品を託して)生産を依頼する形を取っています。

―― 兄弟会社が固体電池を製造しているとのことですが、固体電池に関する技術面でも優れているということなのでしょうか。実は「世界初の固体電池採用」と言われても、にわかに信じることができなかったので……。

桜田社長 この兄弟会社は、特に固体電池の量産化についてかなり強く優れた企業です。

 固体電池を製造すること自体は、日本企業でも可能です。しかし“量産”となると、まだできていません。世界を見渡しても、固体電池の量産ができる会社は数社しかないはずです。Yoshino Technologyの兄弟会社は、そんな数少ない会社の1つということになります。