やっぱり速かったSnapdragon X Elite!本日発売の「ASUS Vivobook S 15」をテスト

AI要約

MicrosoftのCopilot+ PCの販売が本日(6月18日)より始まっている。業界のプラットフォーマーの役割としてCopilot+ PCはAI PCのマーケティングプログラムであり、要件として40TOPS以上の性能を実現したNPUが必須であり、Snapdragon X Eliteが唯一それを満たす。リコールなどの新しいアプリケーションも提供されるが、まずはInsider Previewで提供され、Windows 11の24H2が一般公開された段階でCopilot+ PCに展開される予定。

ASUSのVivobook S 15(S5507Q)はCopilot+ PCに採用され、Snapdragon X Elite(X1E-78-100)を搭載。CPU性能は高く、シングルスレッド、マルチスレッド共に優れた性能を誇り、GPU性能は他の競合に劣るが、オーバーヘッドの低い性能を実現。ピーク消費電力が高いため90WのACアダプタが必要だが、バッテリ駆動時間への影響は少ない。

Snapdragon X Eliteの性能は驚異的で、最下位SKUでありながらM3比1.64倍、Core Ultra比1.88倍の高性能を発揮。新しいバイナリ変換機能「Prism」により、x86プロセッサとの互換性が向上する一方、ソフトウェアの互換性には課題があり、特に日本語IMEやAdobeのCreative Cloudなどが未対応。ただし、MicrosoftがArm版Windowsに取り組み、ISVとの協力を重視しており、ソフトウェアの互換性に向けて改善が進んでいる。

やっぱり速かったSnapdragon X Elite!本日発売の「ASUS Vivobook S 15」をテスト

 MicrosoftのCopilot+ PCの販売が本日(6月18日)より始まっている。既に製品を手にした方もおられると思うが、本記事ではASUSより提供された「Vivobook S 15(S5507Q)」を利用し、Copilot+ PCの魅力をお伝えしつつ、採用されているSoCとなるQualcomm Snapdragon X Elite(X1E-78-100)の性能評価を行なっていきたい。

 ちなみに結論から言えば、本製品に採用されているSnapdragon X Eliteは最下位のSKUであるのにもかかわらず、競合より高い性能を実現しているのが確認できた。

■ Copilot+ PCは40TOPS以上NPUなど高いハードウェア要件を規定

 Microsoftが推進するCopilot+ PCは、複数の要素が複雑に絡み合ったAI PCのマーケティングプログラムだ。

 ざっくり言えば、Copilot+ PCでは従来はクラウドベースになっていたAIアプリケーションを、ローカルでも実行できるようにする。そのため新しいプロセッサであるNPU(Neural Processing Unit)を利用していることが大きな特徴だ。

 これは、Intelがより使い勝手に優れた薄型ノートPCを普及させるために行なっている「Evo Platform」や、過去に行なっていた「Ultrabook」のプログラムと同種のプログラムだと考えて良い。OEMメーカーはこのCopilot+ PCに対応したノートPCをリリースすることで、Microsoftとの共同マーケティングを行なえ、通常のPCよりも高いリベートを得られるため、積極的に参加している。

 つまり、市場に「鶏」を強制的に誕生させ、「卵」が生まれて次の鶏が誕生する……好循環を実現するためにこうしたプログラムを行なっているのがPC業界におけるプラットフォーマーの役割であり、それを体現している。

 過去のマーケティングプログラムがそうであったように、Copilot+ PCにもスペックの要件が設定されている。今回の場合は、40TOPS以上の性能を実現したNPUを内蔵したSoC、16GBのメモリ、256GB以上のストレージそしてSecured-Core PCになっているなどの要件が設定されている。特に40TOPS以上の性能を実現したNPUが最大の要件になっており、現状それを満たすのがSnapdragon X Eliteのみだ。

 過去のPC業界で言うと、IntelがCentrino Mobile Technologyを導入した時にWi-Fiの採用を要件にしたことはよく知られている。CentrinoでWi-Fiを要件に入れたことで、今ではそこら中でWi-Fiが使えるようになってあたり前という状況が生まれた。MicrosoftはPCプラットフォームを次の段階に大きく進化させていきたいと考えており、それを体現しているのがCopilot+ PCだ。

■ 目玉のリコールは後日提供に

 Microsoftは一般消費者にも分かりやすいように、Copilot+ PCの特徴を見た目で説明できるような、新しいアプリケーションをCopilot+ PC向けに提供する。それが「リコール」、「コクリエイター」、「ライブキャプション」、「Windows Studio エフェクト」、「イメージクリエイター」などの新機能になる。

 目玉機能のリコールは、言ってみればユーザーのPC利用歴をスナップショットの形で記録する。そして、生成AIがそのスナップショットを検索して、過去の曖昧な記憶から必要なデータへとたどりついてくれる。人間が曖昧な形で記憶していることを、AIがその記憶をよみがえらせてくれることを助けてくれる機能と言える。

 もちろん、こうした機能にはプライバシーへの懸念がつきもので、Microsoftもユーザーからの指摘を受けて、よりデータの安全性を高め(具体的にはデータの暗号化を実現し)、かつ必要のない人向けにも有効になってしまうことを防ぐために最初はオフにするなどの改良を加えている最中だ。

 このため、リコールに関してはCopilot+ PCの出荷時には利用可能にならない。現段階では、Windows 11のInsider Previewでのみ有効で、プレビューのユーザーに揉んでもらい、Microsoftが一般のユーザーにも展開して良いとした判断した段階で展開するという形になる。

 なお、今回のCopilot+ PCに導入されているWindows 11のOSは24H2になる。現時点ではWindows 11の24H2は一般公開されておらず、入手可能なのはCopilot+ PCにプレインストールされた場合のみとなる。その意味では24H2にいち早く触りたい場合には、現状Copilot+ PCを購入するしかないことになる。

■ 15.6型OLEDパネルとSnapdragon X Eliteを搭載したASUS Vivobook S

 ASUSのVivobook S 15(S5507Q)は、本日から販売が開始されたCopilot+ PCの一製品になる。15.6型OLEDパネル(2,880×1,620ドット)をディスプレイとして採用し、32GBメモリ、1TBストレージというスペックになっている。

 SoCとして採用されているのがSnapdragon X Eliteの4つのSKU(X1E-00-1DE、X1E-84-100、X1E-80-100、X1E-78-100)のうち、最下位のSKUになるX1E-78-100だ。

 CPUのコア数とGPU、そして45TOPSのNPUという基本的な構造は上位SKUと同じだが、クロック周波数などが大きな違いになっている。上位のSKUでは12コアすべてが有効な時に最大で3.8GHzまでのブーストアップできるが、X1E-78-100は3.4GHzまでとなる。

 また、上位SKUではシングルコア、デュアルコアだけの時に4GHz越えができるようになっており、特にシングルスレッド時の性能が向上するようになっているが、X1E-78-100はその機能が用意されていない。

 Snapdragon X Eliteの特徴は、Qualcommが自社開発したOryonという名称のCPUが採用されていることだ。加えて、ArmがDynamiQやbig.LITTLEなどの名称で呼んでいるヘテロジニアスなCPU構成(Intel的な言い方をするならハイブリッド・アーキテクチャ)では、「プライムコア」と呼ばれているシングルスレッドの性能に特化したCPUコアだけで12コア構成になっている。

 従来、Arm系のプロセッサの弱点は、シングルスレッドの性能が低いことだった。CPUのシングルスレッドは、OSやアプリケーションの起動に聞いてくるもので、ユーザーの体感に直結している。

 しかし、Appleが自社設計したMシリーズではその弱点を払拭する高速なArmプロセッサが設計されて、x86プロセッサに匹敵、ないしは上回るようなシングルスレッドの性能が実現された。

 QualcommのOryonもそうしたトレンドを踏襲しており、シングルスレッドでx86プロセッサと互角か上回る性能を実現し、しかもそのCPUコアを12基搭載することで、マルチスレッドで高い性能を実現しているわけだ。

 ただし、ピーク時の性能は上がったが、その分ピーク時の消費電力も上がっている。Vivobook S 15のACアダプタは90Wの出力を実現しており、65Wなど一般的なUSB Type-CのACアダプタだと電力が足りないという表示が出てしまい、フルに性能が発揮できない。

 15.6型のOLEDという大型でかつ消費電力の高いOLEDのパネルを採用していることも大きな要因だと考えられるが、それでもdGPUを搭載していないSoCのみのノートブックPCとしては90WのACアダプタが必要な事実はSnapdragon X Eliteのピーク時の電力が高いことを示唆している。

 ただし、それがバッテリ駆動時間に影響しているのかと言えば、そうではない。確かにピーク時の消費電力は高いが、同時にArm系CPUは、アイドル時の消費電力が低くなっているが、このSnapdragon X Eliteもそれは同様だ。ノートPCはバッテリ駆動時の間、大半の時間CPUがアイドルになっているため、バッテリ駆動時間が極端に短いなどは心配する必要はないだろう。

■ Snapdragon X Eliteは最下位SKUであるのにもかかわらずM3比1.64倍、Core Ultra比1.88倍という超弩級性能を発揮

 それでは、実際にベンチマークプログラムを利用して、Snapdragon X Elite(X1E-78-100)の性能をチェックしていきたい。ベンチマークに利用したのはCPUがCinebench 2024とGeekbench 6、GPUがGFXBench 5という3つのベンチマークプログラムだ。これらのベンチマークを利用したのは、いずれのベンチマークプログラムもArmネイティブ版が用意されており、CPUやGPUの性能を正しく計測できるからだ。

 Arm版Windows(Windows on Arm)では、x86 ISAのプログラムをArmに動的にバイナリ変換して動かす仕組みが入っているが、それによりオーバーヘッドが生じる。そのため、そうしたベンチマークを使って計測するのはフェアではないため、いずれもx86版とArm版の両方があるプログラムに限ってベンチマークを行なっている。

 なお、注目のNPUに関しては現時点では3つのプラットフォームで同じように動くAIベンチマークがなかったため、(Geekbench MLはQualcommのNPUには未対応)、今回はテストしていない。

 比較対象として用意したのはASUSから提供されたCore Ultra 7 155Hを搭載した「ASUS Zenbook 14 OLED (UX3405)」、筆者の私物になるApple M3を搭載した「MacBook Air(13-inch, M3, 2024)」、同じく筆者の私物となるMicrosoft SQ2(Qualcomm Snapdragon 8cx Gen 1の高クロック版)を搭載した「Microsoft Surface Pro X」(2020年型)の3製品になる。

 こうしたSoCの性能は、システム側の熱設計に依存する。同じSoCであっても、より高いTDP(Thermal Design Power)でも動作するようにOEMメーカーが設計すればそれだけ性能は高くなる。従って、あくまでこの性能というのは、今回搭載されたシステムの熱設計で実現できる性能であって、SoCのピーク性能ではないことはお断わりしておく。

 今回の例で言えばASUS Vivobook Sは15.6型だが、そのほかの競合は14型ないしは13型であり、筐体がより小さくなるので、熱設計的には不利だ(そもそもSurface Pro Xはファンレス設計)。

 テスト環境は以下の通りで、結果はグラフ1~グラフ3になる。

 結論から言えば、従来のSnapdragon 8cxシリーズの弱点だったシングルスレッドの性能が低いという問題は、Oryonを採用したSnapdragon X Eliteでは完全に払拭されている。初代Snapdragon 8cxベースのMicrosoft SQ2と比較してCinebench 2024でも、Geekbench 6でも倍の性能になっていることはそのことをよく表わしている。

 しかも、今回テストしたSnapdragon X Elite/X1E-78-100は、ラインナップの中で唯一ない最下位SKUになる。上位SKUの場合にはシングルスレッドの性能がさらに引き上げられている可能性が高い。

 また、プライムコアが12コアあるというSnapdragon X Eliteの特長を生かして、高いマルチスレッド性能を実現しているのも特筆すべきだ。マルチコア時の負荷があまりかからずファンもあまり回らないGeekbenchのマルチスレッドスコアは置いておくとして、マルチスレッド時にほぼCPUが100%使われているCinebench 2024のマルチスレッドの結果は印象的で、Core Ultra 7 155Hに対して1.88倍、Apple M3に対して1.64倍という性能は非常に印象的で、普段からCPUで処理をすることが多いユーザーであれば、大きな生産性の向上が期待できる。

 その一方、GPUに関しては、Apple M3がダントツで、それに次いでCore Ultra 7 155HのIntel Arcが1番手、Snapdragon X EliteのAdreno GPUはそれよりもさらに低いスコアになっている。従来のSnapdragon 8cx Gen 1相当のMicrosoft SQ2などと比較すると性能は大きく向上しているが、GPUに関してはApple→Intel→Qualcommというのが現時点での序列となる。

■ 新しいバイナリ変換機能「Prism」でバイナリ変換時も性能向上

 Snapdragon X Eliteに搭載しているCPU「Oryon」はArm ISAのCPUになる。このため、x86プロセッサが標準だった、これまでのWindowsのアプリケーションとは互換性の問題が引き続き存在する。

 Arm版Windowsには、x86命令をArm命令に変換してアプリケーションを実行するバイナリ変換機能が実装されており、今回のCopilot+ PCに採用されている24H2から新しい「Prism」という開発コードネームの新バイナリ変換機能が搭載されている。

 PrismではArmv8の命令セットに最適化されるようにMicrosoftのコンパイラが改良されており、Arm版Windowsのコンポーネントやランタイムなどが作り直されて、性能が大きく改善されている。

 Microsoftによれば、Geekbench 5/6のシングルスレッドで2倍、マルチスレッドで3倍の性能を実現していると説明しており、大きく性能が改善されている。

 また、ここ数年MicrosoftとQualcommが協力してISV(独立系ソフトウェアベンダー)に働きかけを続けてきたことで、Armネイティブでバイナリを提供するISVが増え続けている。Webブラウザで言えばFirefoxやOperaなどのほか、最近ではGoogle ChromeのArmネイティブ版の提供が始まっている。また、ビジネスパーソンにとって重要なTeamsとZoomは、いずれもArmネイティブ版が用意されている。

 Microsoft 365アプリ(いわゆるOfficeアプリ、Word/Excel/PowerPoint/Outlookなど)はやや特殊な状況で、内部的にはx64、外見はArm ISAという「Arm64EC」という仕組みを利用した準Armネイティブなアプリになっており、タスクマネージャーなどを見ると「Arm64(x64互換)」として表示されている。命令セットの観点ではArmアプリだが、実際の動作はバイナリ変換を利用して動作する仕組みになっており、Prismによる高速化の恩恵があるアプリがこのMicrosoft 365アプリだと考えられる。

■ ソフトウェア互換性の課題は依然としてあるが、改善の方向に向かいつつある

 その一方、今でも互換性に問題があるソフトウェアもある。代表なのは日本語IMEだろう。

 ATOKはx64版のみ用意されており、Arm版は用意されていないし、動作の保証もされていない。Arm版Windowsにインストールすることはできるのだが、x64/x32版のアプリでは動作するが、Armネイティブのアプリでは動作しない。

 既に述べたようにMicrosoft 365アプリは、内部的にはx64、外見はArm ISAという「Arm64EC」であるため、実質的にはx64アプリで、ATOKはMicrosoft 365アプリでは動作するが、ArmネイティブなMicrosoft Edgeでは動作しないという中途半端な状況にある。この問題を解決するにはATOK自体がArm64対応になる必要がある。

 ほかのサードパーティIMEも同じような問題を抱えており、Google IMEはインストール時にエラーが出てしまい、そもそもインストールできない。筆者は「慣れこそ最大のUX」(慣れているものがユーザーにとって一番使いやすいものだ)と常に言っているつもりだが、IMEのように、一番使う時間が長いソフトウェアが使えないというのはユーザー体験的に大きな課題があると考えられるため、日本マイクロソフトには早期に解決に向けた努力をしていただくことに期待したいところだ。

 AdobeのCreative Cloudに関しても、現状ではArm版Windowsでは動くアプリが少ないのが現状だ。x86版のCreative Cloudではすべてのアプリケーションが利用できる。それに対してArm版のCreative Cloudでは「Photoshop」、「Lightroom」、「Lightroom Classic」、「Fresco」、「Acrobat」の5つのアプリケーションしか利用できなかった。

 しかし、最近になってPremiere Pro(およびその必携ツールのMedia Encoder)が使えるアプリのリストに加えられており、Premiere Proが利用できるようになった(ただし、インストールされるのはx64版)。5月20日にMicrosoftが米国で行なった記者会見では「InDesign」、「After Effects」、「Illustrator」の3つのArm版Windowsへの対応予定と明らかにされており。x86版と同じような充実度になるのも時間の問題になっている。

 このように、ソフトウェアの互換性問題に関してはゼロになったなどと楽観的なことを言うつもりはないが、以前よりははるかに状況がよくなったことは事実だ。結局こうしたソフトウェアの互換性問題は、ユーザーが何を使っているか次第で、十人十色だろう。MS-IMEを使っていて、Microsoft 365とWebブラウザ、それにビデオ会議ツールが動けば良いというユーザーにとってはArmに乗り換えてももはや何も問題はない。

 Creative CloudをノートPCでもバリバリ使っているというユーザーにとっては今少し時間がかかるだろうし、筆者のようにサードパーティのIMEを使っていてそれがどうしても譲れない一線であるユーザーにとっては、移行は難しいだろう。

 ただ、1つだけ言えることは、こうした新しいアーキテクチャにISVが対応しないのは、「鶏と卵」問題であって、インストールベースが少ないと、メーカーにとって対応する意味がないため動かない。しかし、今回Copilot+ PCでMicrosoftがそこをドライブしようとし始めたことで、環境が変わり、インストールベースが増える可能性がある。その意味ではで、筆者のように死活的に重要なアプリ(IME)がArm版Windowsに対応していないというユーザーはそこに期待したいところだ。

■ Copilot+ PCのアプリケーションは魅力

 Vivobook S 15を利用して、Snapdragon X Eliteの性能などを確認してきた。CPUの性能はAppleのMシリーズと比較しても、IntelのCore Ultraと比較しても圧倒的に高い性能になっており、CPU性能の高さがSnapdragon X Eliteの最大の魅力と言える。

 では、どんなユーザーがこの製品を買うべきなのかと考えれば、「既にArm版でソフトウェアの互換性が問題なく、高いCPU性能やCopilot+ PCのアプリケーションに魅力を感じているユーザー」ということになるだろう。

 Microsoft 365やWebブラウザ、TeamsやZoomなどがPCで使うアプリケーションだというユーザーにとっては、もはやArmかx86かということはMS-IMEを使っている限りは気にする必要はないだろう。

 MicrosoftはこれまでArm版Windowsに何度も挑戦して、その都度失敗してきたというのは誰もが知っている歴史だろう。古くはWindows CEから始まり、Windows Mobile、Windows 8の時代にあったWindows RTを経て、Windows 10の世代でx86からArmへのバイナリ変換機能を実装するなど、何回もチャレンジを行なってきたが、正直どちらも成功したというにはほど遠い状況だった。

 今回が以前と状況が違うのは、「性能で我慢する必要がなくなった」というのが大きいと感じている。今回はベンチマークからも分かるように、「速い!」というコメントしか出てこないのが大きな違いだ。その意味で、Copilot+ PCは、Arm版CPUということがネガティブからポジティブに変わった最初のArm版Windowsと言い換えても良いだろう。確かにソフトウェアの互換性にはまだまだ課題があるが、それでも解決の9合目ぐらいまでは来ているなというのが筆者の偽らざる感想だ。

 そこを個人がきちんと評価した上で、Copilot+ PCが提供する新しいユーザー体験という「夢」を買ってみるのも十分にありなのではないだろうか。