スポーツ自転車界隈で近ごろ流行りの携帯用電動ポンプには気を付けたい

AI要約

自転車界隈で流行している携帯用電動ポンプについて詳しく解説。

ポンプの性能や使い勝手、注意すべき点について紹介。

バッテリーの劣化や寿命について考察し、対策としてフロアポンプの活用も提案。

スポーツ自転車界隈で近ごろ流行りの携帯用電動ポンプには気を付けたい

新車を買った情報2024、私は四本淑三です。今回の話題の中心といたしますのは、この頃スポーツ自転車界隈で流行っているもの。それは携帯用電動ポンプ。

 新車を買った情報2024、私は四本淑三です。今回の話題の中心といたしますのは、この頃スポーツ自転車界隈で流行っている携帯用電動ポンプ。私も1年ほど前に買ってから、もうコレばっかり使っておりました。

 

 私が買ったのはCYCPLUSというブランドの「TINYPUMP CUBE」というもので、購入時の価格はワールドサイクルさんで税込1万2650円。今は値上がりして1万6000円くらいでしょうか。これにエアゲージが付いた「TINYPUMP CUBE AS2PRO」や「TINYPUMP CUBE AS2PRO MAX」という上位機種が登場し、違うブランドの似たような製品がAmazonにも多数出品されているという状況です。

 

 

 人気の理由は軽く小さく楽だから。私が使っているTINYPUMP CUBEの重さは97g、大きさは47 x 28 x 65mm。サドルバッグやツールカンに収納でき、携帯用の手動ポンプのように小刻みなポンピングでくたびれることもない。これでパンクも怖くないぞというものです。

 

 

 しかし、この便利グッズには意外な落とし穴があるのでした。

 

小さくても実用性は十分だから困る

 まず性能は必要十分。そして使いやすい。これが一番の落とし穴と言えましょう。

 

 

 内蔵バッテリーの充電はUSB-Cで、満充電まで約20分。700 x 25Cタイヤを80PSI / 5.12気圧に上げるまでの時間は90秒程度で、1回の充電で2本充填できるとメーカーは言っています。実際に使ってみても、これはだいたい合っています。

 

 圧送できる空気圧の上限は100PSI / 6.9気圧まで。これ以上はポンプのパワーが負けて入りません。ひと昔も前ならギリギリ実用にならない性能ですが、エアボリュームが増して3~5気圧程度で運用されている現代のロードバイクなら問題ありません。

 

 驚いたのはチューブレスタイヤのビード上げという、自転車用としては最も重い作業もこなせたこと。ブースターに空気を溜めなくても、携帯用ポンプ単体でできてしまうのですからびっくり。誰もいない大草原のど真ん中でビード上げができてしまうのですから、一時期はチューブレスタイヤのパンク対策として、スペアのチューブではなくタイヤそのものをバッグに入れていたくらいです。

 

 ただ、これはホイールとの相性にもよるでしょう。私はシマノのカーボンホイール「WH-RS710-C46」に、コンチネンタル「GP5000STR」の30Cと32C、IRC「FORMULA PRO HL TUBELESS RBCC」の30Cでビードが上がることを確認しています。 さすがにMTBのチューブレスは無理でしたが、細いロードバイクのタイヤなら何とかなる場合もあるということです。

 

 つまるところポンプに求められることは大抵できてしまう。繰り返しますが、それが大きな穴なのです。

 

非常用をうっかり常用してしまう罠

 備えあれば憂いなし。そうして買ったものですが、走行中のパンクなんて年に何度も起きやしません。日に日に宝の持ち腐れ感が高まってくる。すると本来「非常用」として購入した電動ポンプを「常用」するようになってしまうのであります。

 

 自転車用空気入れの常用とは、タイヤを交換してゼロから空気を入れること。そして走り出す前にちょい足しすることです。

 

 自転車の空気圧は、分厚いブチルチューブでもなければ時間単位で減って行きます。昔のラテックスチューブなら、一晩も経つと半分に。現代のチューブレスタイヤだって1週間も放っておけばコンマ何気圧かは減っている。シーラントも含めると結局重くなるチューブレスレディよりマシというので最近人気のTPUチューブだって、意外と空気の減りは早かったりします。

 

 だから走行前に空気圧の点検と補充は欠かせないわけですが、毎日走る人ならポンプの出番も毎日のようにやってくるわけであります。

 

 私はこれまで昔ながらのフロアポンプを常用してきたのですが、MTBを買った頃から自動車用に買ったマキタの電動ポンプを流用するようになりました。MTBのタイヤはエアボリュームが大きく、手動だと疲れちゃうんですな。

 

 

 但し自動車用のポンプですからポンプヘッドは米式バルブが標準。仏式のMTBやロードバイクにはアダプタをかます必要があり、空気を入れる前に余計な儀式が増える。さっさと出かけたいのに何かもう面倒くさい。あ、でもあれなら、ひょいと取り出し一発で使えるじゃないか。だから気軽に使っちゃうんですよねぇ携帯用を。

 

常用すると劣化するバッテリー

 気軽に使って何がダメかと言えばバッテリーです。

 

 先に申し上げた通り、バッテリー容量はロードバイクのタイヤ2本分程度。でも容量が小さいおかげで充電時間も短く、20分もあれば満充電です。出かける前に空気をちょい足ししても、モバイルバッテリーを接続してバッグに放っておけば問題ありません。

 

 つまり充電と放電を短いインターバルで繰り返すわけで、これがまずバッテリーの劣化を早めます。それに加えて電動ポンプの発熱量がすごい。

 

 

 どの程度の発熱かといえば、対策としてアルミの筐体に最初からシリコンカバーが被せられているくらい。連続して2本も入れると使い捨てカイロのような温かさ。バルブを挿入する口金もそれ以上に加熱するので、TPUチューブの樹脂製バルブには溶融の危険があるとされ、それを回避するため専用のエクステンダーを経由して使えと但し書きがあります。その熱がバッテリーの劣化にどの程度影響するかは不明ですが、決して良い方向には働かないはず。

 

 

 それを1年使った結果、最初のうちは30Cのタイヤを前後4気圧まで上げられていたものが、2本目となると最近はちょっと厳しくコンマ5気圧ほど届かない。タイヤ1本充填できればパンク対策には十分で、いずれにしてもモバイルバッテリーを携行しますから問題はないのですが、確実に劣化は進んでいる様子。

 

 そこで理不尽さを感じるのはUSB「充電」はできても「給電」はできないこと。給電できれば内蔵バッテリーの消耗を抑えつつ使えるはず。むしろバッテリーを内蔵しない、USBの5Vだけで動くポンプがあってもいいように思いますが、いかがなものでしょうか。

 

非常の備えは常時にあり

 内蔵バッテリーが寿命となれば、電動ポンプもゴミ箱行きです。最近の自転車の電装品は、そんな後先考えないエコでも何でもないものばかりで困ったものですが、そもそもが非常用。常用しないのが当たり前。それが長持ちさせる秘訣です。はい、失礼しました。

 

 そこで私は2点、新たに買い物をしました。

 

 

 ひとつはポンプヘッドの「airbone ZT-A15」。自動車の米式バルブと、自転車の仏式バルブを切り替えられる仕様で、着脱操作はシンプルかつ確実。バルブを差し込み、バルブヘッド外周のスリーブをクルクル回して固定。そしてスリーブを引き上げるとスパッと外れます。

 

 差し込むとバルブのネジ山に合わせた爪が出てくる仕組みで、プロ用エアゲージのゲージボタルでおなじみ旭産業のソケットチャックと似たような仕組みですな。

 

 これをマキタ純正のポンプヘッドと差し替えました。おかげで仏式バルブアダプターは不要となり、自動車のポンプとしても今まで通り使える。Amazonで2370円。革新とコスパの台湾製。ありがとう。

 

 

 ふたつ目の買い物は伝統的フロアポンプ「SILCA」のガスケット。私はSILCAのポンプに、スピルバーグのE.T.でお馴染みクワハラバイクワークスのヒラメヘッドという、超ド定番の組み合わせで四半世紀ほど前から使っていました。

 

 このガスケットはハンドルを押し下げる方向には気密性を保ち、持ち上げる方向には解放弁として働くという、優れたアイデアを単純な形にまとめたもの。このガスケットが天然のレザーで、放っておくと硬化してしまうんですな。電動化の煽りでしばらく使っていなかったため、押し込んでもスカッと抜けて空振り。それで交換です。今はSILCAの本社もアメリカに移ったようですが、いまだイタリア時代の補修部品を切らしていないのが偉い。型番は「SILCA 731 LEATHER WASHER 28」で、Amazonで1714円。安い。

 

 

 もちろん交換したら元通りの性能に。ワンタッチで着脱できる仏式最強のヒラメも無問題。「SILCAとヒラメは一生物」という人の噂は今のところ間違っておりません。これでなんらかの災害で長期間の停電に陥っても自転車を走らせることはできる。伝統のイタリア製と信頼の日本製。ありがとう。

 

 このスーパーエコなポンプを日々のちょい足しに、タイヤ交換やMTBにはマキタを使うことにして、携帯用電動ポンプはバッグに忍ばせてゆく所存です。それではまた。

 

文● 四本淑三 編集● ASCII