DAOの第一人者で弁護士の29歳が四国で「革命」──DAOで日本再生はリアルか、幻想か?

AI要約

東京大学法学部を卒業し、大手ローファームを経て香川県に移り住んだ29歳の弁護士が、新しい形態の組織であるDAO(分散型自律組織)を活用し、地域の盛り上がりを目指す取り組みを始めた。

DAOの専門家として知られるマックさんが主催した共創DAOの立ち上げイベントには、様々な分野の人々が集まり、未来の社会を築くための議論が行われた。

暗号資産やDeFiの発展が広まる中で、合同会社型DAOを通じて資金調達や事業展開が可能となり、地方創生を含む様々なプロジェクトに活用される可能性が高まっている。

DAOの第一人者で弁護士の29歳が四国で「革命」──DAOで日本再生はリアルか、幻想か?

人口減少、高齢化、地方経済の地盤沈下、円安、国力の低下……。暗くなるような言葉が日常を飛び交い、2025年はいよいよ日本にとって経済的・社会的な「クリティカルジャンクション(重大局面)」を迎える可能性があるとも言われる。

そんな中で、組織やコミュニティの新しい形態として注目されているDAO(分散型自律組織)をベースに、29歳の弁護士が日本に「なめらかな」革命を起こそうと立ち上がった。東京大学法学部を卒業した後に入所した大手ローファームの森・濱田松本法律事務所(MHM)を辞め、香川県高松市に移り住んだ。

本嶋 孔太郎、通称「マック」さんは、高松から地域を盛り上げる潮流を作るため「共創DAO」と名づけた分散型自律組織を共同創設した。フィンテックやヘルスケア、スタートアップ、M&A(合併・買収)の法務を専門としてきたマックさんは、これまでに日本DAO協会やRULEMAKERS DAO(RMD)を共同創設し、DAOのルール作りで政府に提言してきた。

国内でDAOに最も精通する専門家の一人だ。

6月1日、マックさんは高松城跡近くのビルで共創DAOの立ち上げイベントを開いた。瀬戸内海に浮かぶ小さな島で町興しに挑む実業家、国内外で活動する投資家、政治家、起業家、インスタグラマー、プログラマー、経済産業省職員、欧米のスタートアップ創業者……参加者はオンライン参加を含めて約140人で、会場に準備された席は埋まった。

「AIはスピードを上げてさらに発展し、テクノロジーが人の生活により強く影響するようになる。その時、人は何をすべきだろうか?単に市場の限られたパイを取り合う争いや、金を儲けるだけの社会ではなく、平和を徹底的に維持しながら、新たな価値を人が創造できるコミュニティをつくる方法とは何かを、日々考えてきた。そのきっかけとして、共創DAOの今日の日を迎えた。高松を中心とする瀬戸内海のような豊かな場所を、新しい社会の聖地、DAOの聖地にできるのではないだろうか」

マックさんがこう述べると、6時間に及ぶこの日のイベントが始まった。

そもそもDAO(Decentralized Autonomous Organizationの頭文字をとった略語=分散型自律組織)という言葉が頻繁に聞かれるようになったのは、ブロックチェーンを基盤技術にする暗号資産(仮想通貨)や、銀行などの仲介業者が存在しない金融サービス「DeFi(分散型金融)」などの業界が世界的に発展してきたことがある。

例えば、暗号資産(仮想通貨)のビットコイン(BTC)には、その運営を維持するための特定のリーダーや社長は存在しない。世界中に散らばる「マイナー」と呼ばれる者が、取引データをブロックチェーンに保存する作業を行い、その報酬をビットコインで受け取る。

ビットコインの時価総額は1.35兆ドル(約210兆円)を超え、現時点で最も成功した自律分散型プロジェクトと言える。

今年4月、金融商品取引法の内閣府令が改正・施行され、日本では合同会社を活用したDAOが設立できるようになった。今後期待されているのは、合同会社型DAOを通じて、ブロックチェーン上で発行する社員権トークン(Equity Token)を販売して資金を調達し、その資金を元手に、その他トークン(暗号資産やFT)と組み合わせて事業を展開することだ。

どういうことかと言うと、調達した資金を元手に事業を開始し、DAOの事業価値や保有する資産価値を向上させる。その際、貢献度に応じてリワードトークンを無料配布(エアドロップと呼ばれている)する。事業が一定水準に成長し、トークンが流通した時点で、そのトークンを暗号資産として暗号資産取引所で販売(IEOと呼ぶ)し、さらなる資金を調達する。

さらに、DAOを拡大させて暗号資産の使い途も拡大させ、その暗号資産を暗号資産取引所に上場させ、DAOと暗号資産で回るエコシステム(トークンエコノミー)を作り上げる。

1日のイベントでは、地方創生に絡む事業をDAOをベースに検討している参加者が目立った。