自宅の自作ハイスペック環境でAI学習が可能に? GIGABYTEが「AI TOP」シリーズ製品群を一挙に投入 Intelの「新型CPU」対応マザーボードも

AI要約

GIGABYTEがCOMPUTEX TAIPEIで新製品発表会を行い、AI TOP構想を発表。

AI TOPは家庭用デスクトップPC向けのAI学習ソリューションで、ユーティリティー、ハードウェア、チューターの3要素から構成されている。

AI TOPでは高性能マザーボード、グラフィックスカード、SSD、電源などが用意される。また、AIに関する情報提供を行うチューターサービスも提供される。

自宅の自作ハイスペック環境でAI学習が可能に? GIGABYTEが「AI TOP」シリーズ製品群を一挙に投入 Intelの「新型CPU」対応マザーボードも

 GIGABYTE(ギガバイト)は6月3日(台湾時間)、COMPUTEX TAIPEIに合わせて新製品の発表会を実施した。特に注目を集めたのが「AI TOP」なる新構想だが、それ以外にも注目すべき新製品が複数登場している。

 この記事では、本発表会の模様をお伝えする。なお、発表会や展示会場で紹介されていた製品の日本における展開は未定となっている。

 発表会の冒頭、あいさつに立ったエディー・リンCEOはAI(人工知能)について語った。

 プレゼンテーションにおいて引用されたBloombergのレポート(2023年6月)によると、2022年度は400億ドル規模だった生成AI市場は、2032年までに1.3兆円規模にまで成長するという。平均で年率42%という高い成長率で、まさしく“ビッグビジネス”といえる状況だ。

 現在、生成AIはクラウド(遠隔サーバ)ベースのものが多いが、今後は企業内限定のプライベートクラウド、あるいはエッジ(オンプレミス/オンデバイス)で稼働するものも増えるだろう。昨今訴求が強まっている、NPU(※1)搭載の「AI PC」は、オンプレミスの生成AIが普及するきっかけになるかもしれない。

(※1)Neural Processing Unit(ニューラルプロセッサ):AIプログラムでよく使われる推論演算に特化した演算ユニット

 しかし、カスタマイズされた生成AIの利用を巡っては、「技術的な障害」「限られた予算」「セットアップの手間」「セキュリティやプライバシーの問題」「AIモデルの事前トレーニングと更新」といった乗り越えるべき課題もある。

 そこでGIGABYTEが提案するのが「AI TOP」である。これは“家庭の”デスクトップPCでAIの利用に必要な学習をできるようにするためのソリューション群で、大きく分けると「ユーティリティー」「ハードウェア」「チューター」の3要素からなる。

AI TOP Utility(ユーティリティー)

 ユーティリティーは、家庭でAI学習をしやすいようにするためのダッシュボードだ。プライバシーに配慮しつつ、シンプルなワークフレームを提供するという。

 利用できる生成AIエンジンは多岐に渡るものの、リリース時点での対応言語は英語のみだという。「せめてフロントエンド(UI)だけでも日本語にできないものですか?」と聞いてみたのだが、発表にこぎ着けたという段階であるためか、他言語への対応については未定のようだ。

AI TOP Hardware(ハードウェア)

 ハードウェア製品は、家庭(自宅)で学習できるようハイスペックなものを取りそろえている。具体的にはAI TOPの名を冠するマザーボード/グラフィックスカード/SSD/電源が登場する。

 いずれも、電力効率を重視した他、学習作業に耐えうる高耐久性、アップグレード(パーツの交換/増設)のしやすさや組み立てやすさを重視しているという。

【マザーボード】

 マザーボードは、AMDのRyzen Threadripper 7000シリーズに対応する「TRX50 AI TOP」と、Intelの第5世代Xeonプロセッサ(開発コード名:Sapphire Rapids)に対応する「W790 AI TOP」の2製品が登場する。

 TRX50 AI TOPは、その名の通りAMD TRX50チップセットを搭載しており、最大4枚のグラフィックスカード、最大2TBのDDR5 RDIMMメモリ、最大4枚のM.2 SSD(RAID0対応)を搭載できることが特徴だ。10GBASE-T規格対応の有線LANポートも2基備える。

 W790 AI TOPも、その名の通りIntel W790チップセットを搭載しており、最大4枚のグラフィックスカード、最大2TBのDDR5 RDIMMメモリ、最大6枚のM.2 SSD(4スロットがPCI Express 5.0、2スロットがPCI Express 4.0規格)を搭載できる。2基のThunderbolt 4(USB4)ポートも備える。

【グラフィックスカード】

 グラフィックスカードはAI処理のワークロードに合わせて以下の3種類の製品が用意されている。いずれも最大4枚取り付けることを想定して後方排気設計となっていることが特徴だ。

・RTX 4070 Ti SUPER AI TOP 16G(GeForce RTX 4070 Ti SUPER)

・電源ユニットを1基で運用する場合にお勧め

W7800 AI TOP 32G(Radeon PRO W7800)

・AMD純正の「Radeon PRO W7800」がベースで、GIGABYTEが製造

・ファン部分にAI TOPロゴが付いている

・より多くのグラフィックスメモリが必要な場合にお勧め

W7900 AI TOP 48G(Radeon PRO W7900 Dual Slot)

AMD純正の「Radeon PRO W7900(デュアルスロット)」がベースで、GIGABYTEが製造

・ファン部分にAI TOPロゴが付いている

・さらに多くのグラフィックスメモリが必要な場合にお勧め

【SSD】

 生成AIでは、高速なデータの読み書きができるSSDも必要となる。そこでGIGABYTEは「AI TOP 100E」というPCI Express 4.0接続M.2 SSDを用意した。容量は1TBか2TBから選べる。

 いずれの容量もコントローラーはPhison Electronics製で、同社がLLM(大規模言語モデル)での利用に最適化したハードウェア/ソフトウェアのハイブリッドソリューション「aiDAPTIV+(アイダプティブプラス)」に対応している。シーケンシャル(連続)の読み出し速度は最大毎秒7200MB、書き込み速度は最大毎秒6500MBとなる。

【電源】

 生成AIを“本気で”動かすと、どうしても消費電力は大きくなる。そうなると電源もある程度大容量なものが求められる。

 そこで用意された電源ユニットが「UD1600PM PGS AI TOP」だ。1つの家庭用コンセントから取れる電流量を踏まえて、その名の通り最大1600Wの出力に対応している。サーバ用電源で使われる高品質パーツを採用しており、電力効率が特に優れた電源にのみ与えられる「80 Plus Platinum認証」も取得している。

 最大出力を考慮すると、これなら4基のグラフィックスカードを搭載するRyzen Threadripper/Xeonシステムでも稼働できそうだ。しかし、仮に日本に投入される場合、家庭用の100Vコンセントでは仕様上、最大出力が1500Wに抑えられる可能性もある(現時点では日本市場への投入は未定)。その場合、構成によっては1台で4基のグラフィックスカードを搭載するシステムに電源供給できるかどうか、微妙な情勢になるかもしれない。

AI TOP TUTOR(チューター)

 3つ目の柱となるチューターは、その名の通り生成AIを利用する上で必要な情報をコーチングしてくれるチャットサービスだ。チューターの運用にも、AIが使われているという。

 例えば「予算に応じたマシン構成を教えてほしい」「どうやってセットアップするの?」など、質問するとチャットで返してくれる。

 家庭内で機械学習(マシーンラーニング)を行うかといわれると、個人的には今のところない。しかし、クラウド(サーバ)でやっていることがいずれ個人でもできるようになるなら「ちょっとやってみるか」という人は出てくるだろう。

 そういう先を見据えて、個人でも導入しやすい(導入できうる)環境を提供するのがAI TOPという取り組みだ。名前通り「AIにおけるトップ」を目指す、GIGABYTEなりの宣言ともいえる。