「マイナカードで避難所入り」は10倍早い――政府、防災のデジタル化加速へ

AI要約

デジタル庁が防災DXの取り組みを進め、避難者支援業務のデジタル化に成功。

2024年度までにデータ連携基盤のプロトタイプの実証も予定。

令和6年能登半島地震を踏まえた取組みとして、被災者マスターデータベースの構築を目指す。

「マイナカードで避難所入り」は10倍早い――政府、防災のデジタル化加速へ

 河野太郎デジタル大臣は4日、閣議後会見において、避難者支援業務のデジタル化についてコメントした。マイナンバーカードの利用によって避難所の入所手続きを約1/10の時間に短縮するなど、実証実験で成果が出ており、今後は横展開を図っていく。

 本稿では、実証実験の概要を含め、デジタル庁が進める防災DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取組みを紹介する。

■ デジタル庁における防災DXの取組み

 デジタル庁の国民向けサービスグループでは、関係省庁や地方自治体、民間企業などと連携を図りながら、住民支援に向けた防災アプリの開発などを進める。また、これを支えるデータ連携基盤の構築もあわせて進めている。

 データ連携基盤のイメージとして、アプリやサービス間でのデータ連携を図り、防災アプリなどで「ワンスオンリー」を目指す。ワンスオンリーとは、一度提出した情報を二度入力せずに済むようにすることを指す。

 また、データ連携基盤の設計や構築にあたっては、新総合防災情報システムとのデータ連携も図られる。

 2024年度には、データ連携基盤のプロトタイプの実証も実施される予定。マイナンバーカードやマイナポータルなどを活用し、氏名・住所・性別・生年月日の基本4情報のほか、避難準備などの各フェーズで発生する個人情報の入力についてワンスオンリーを実現する。

 また、防災分野で優れたサービス・アプリを各自治体が円滑に検索・調達するための「防災DXサービスマップ・サービスカタログ」について、今後もマップやカタログを更新し、環境を整備していく。

■ 実証事業について

 デジタル庁では、発災直後の自治体業務のうち、避難所運営などの業務効率化を図る「避難者支援業務のデジタル化に係る実証事業」を実施している。

 2024年2月には、広域災害を想定した避難者支援業務のデジタル化による効率化や、マイナンバーカードの有効性について実証実験が実施された。

 実証実験の会場は横浜産貿ホール マリネリア。小田原市、南足柄市、大井町、松田町、山北町、開成町の2市4町を被災自治体として想定した。

 2023年10月から続いて2回目の実証実験となり、マイナンバーカードアプリの試作版やSuicaによる入退所管理の実証のほか、LINEミニアプリの利用も検証された。

 加えて、発災前の事前避難が可能な風水害を想定し、ガス警報器「スマぴこ」やスマートフォンアプリ「cmap」「ツナガル+」との連携の有効性も検証した。結果として、避難所入所手続きの効率化などが確かめられたという。

 マイナンバーカード(パスワード入力)で避難所へ入所した場合には、入所手続きに要する時間を約9割削減。また、マイナンバーカード(顔認証本人確認)、マイナンバーカード搭載スマートフォンでも、8割以上の業務削減効果が確認された。

 今後の展開として、実証結果の報告を公表するとともに、実証の中で開発したプログラムなどを、一定の条件のもとでオープン化する。また、検証成果を踏まえ、避難所運営システムの「モデル仕様書」を整備するなどし、早期の社会実装や横展開を図っていく。

■ 令和6年能登半島地震を踏まえた今後の取組み

 大きな被害をもたらした令和6年能登半島地震を踏まえた取組みとして、「被災者マスターデータベース」の構築を目指す。発災直後から、市町村の区域を越えて被災者情報を集約し、共有する目的がある。

 また、マイナンバーカードを用いたオンライン申請手続きに対応する行政サービスの拡充を図り、携行率の向上などにつなげる。加えて、Suicaを用いた避難者状況把握のシステムについて、マイナンバーカードでも同様のしくみを実現する。

 そのほか、大規模災害の発生時に民間のデジタル人材などを派遣するしくみとして、災害派遣デジタル支援チーム(仮称)制度の創設が検討される。あわせて、GSS(ガバメントソリューションサービス)の導入も進められていく。