朝ドラ『虎に翼』が大詰め、「もう終わっちゃうの?」てんこ盛りの話題はどう回収されるのか?

AI要約

異例のヒットと言われるNHKの連続テレビ小説『虎に翼』は、視聴率16~18%とは異なる熱狂を巻き起こしている。歴史に残る朝ドラの一つとして注目を集め、多くの人々の心を打つ要因を探る。

SNS上では放送開始前から期待と不安が渦巻いており、朝ドラがどこまで社会課題に切り込むのか注目されていた。オープニングや様々なテーマの振り幅が視聴者に訴え、物語に引き込んでいる。

物語は法律の世界を題材にしながらも、人間関係や社会問題にも焦点を当てて展開しており、重厚なストーリーテリングで視聴者を魅了している。

朝ドラ『虎に翼』が大詰め、「もう終わっちゃうの?」てんこ盛りの話題はどう回収されるのか?

 異例のヒットと言われるNHKの連続テレビ小説『虎に翼』がいよいよ終盤を迎える。視聴率は16~18%とそこまで目立った数字ではないものの、視聴率では測れない熱狂がメディアの報道からもうかがえる。「歴史に残る朝ドラ」と評する人もいるほど、なぜ多くの人の胸を打ったのか。「てんこ盛り」の話題がどう回収されるのか、来週の最終回を前に分析してみたい。(※放送されている回までのネタバレが含まれますのでご注意ください)(フリーライター 鎌田和歌)

● 「本当に来週終わるの?」とロス続出 異例のヒット作に当初囁かれた不安

 SNSでドラマ放送開始前の世論を検索すると、演技派・伊藤沙莉が主演を務める朝ドラ『虎に翼』に対する視聴者の事前の期待は、出演する役者や脚本家に関するものが多い。その一方ですでに、女性法曹がほとんどいなかった時代を描くことで、現代にも続く「男女平等」のテーマにどう切り込むのかを期待する声もあった。

 放送開始前日の3月31日には、新潟日報がモデルとなった三淵嘉子さんが新潟家庭裁判所の所長を務めたことに触れつつ、その際の新潟日報の見出しが「おばさん所長」だったと明かしている。以下は、このコラムからの引用だ。

 「ずいぶん無神経な言い草で、今なら問題になりそうだ ▼戦前、女性には裁判官の道が閉ざされていた。新憲法下でようやく念願がかない、女性法律家としての道を切り開いた。就任会見では「最高裁が女性の採用に消極的なことは確か」と指摘した」(新潟日報:3月31日の日報抄)

https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/383063

 戦前・戦中・戦後史をどのような視点で描くのか。また、果たして朝ドラにどこまで社会課題への問題提起を期待できるのか――。

 期待に入り混じる多少の心配を吹き飛ばしたのは、米津玄師が歌うオープニングと、シシヤマザキが手がけた色彩豊かなタイトルバックの効果だろう。『さよーならまたいつか!』は深い悲しみと希望が入り混じる歌詞であり、これに合わせてさまざまな職業の女性たちが踊る(最終回を来週に控え、NHKはスペシャル番組の公開と同時に、オープニングの完全バージョンをYouTubeでも公開した。フルバージョンの後編では、これまでの名場面が振り返られており、ここまで見守ってきた視聴者を感涙させている)。

 また、初回の冒頭で日本国憲法の第14条( すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない)が読み上げられたことで、製作陣の意気込みや姿勢が視聴者にわかりやすく伝わった。

● 一つでもお腹いっぱいに…… 重すぎるテーマがてんこ盛りの後半

 とはいえ、扱うのが法律の世界であり、朝から見るドラマとしては重たすぎやしないかという懸念もあった。しかし前半では、主人公・寅子の家族や「女子部」の仲間たちとの交流がベースにあり、ここに法曹を目指す女性の苦悩が重なることで、感情移入しつつ見ることができた。

 物語が後半になると時代が戦後に代わり、寅子も家庭裁判所の判事や所長を務めるようになる。少年犯罪に向き合う家裁の「愛の裁判所」という方針や、その後の少年法改正、原爆裁判、尊属殺人の最高裁判決、あるいはリベラル派法曹の弾圧「ブルーパージ事件」も登場する。

 加えて、寅子のプライベートから選択的夫婦別姓や事実婚についての検討、友人の男性弁護士・轟が同性愛者であることから性的マイノリティへの視座、女子部の学友だった「ヒャンちゃん」の娘が学生運動に身を投じる様子など、一つでもお腹いっぱいのテーマがてんこ盛りとなった。