川平慈英「自分は“洋”の人間だと思っていたので驚きました」 木ノ下歌舞伎出演の経緯を語る

AI要約

川平慈英さんが木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』について語る。

古典歌舞伎の現代劇化に挑戦し、新たな自分を見出す喜びを感じる。

物語の舞台裏や役柄への取り組みについて語る川平慈英さんのインタビュー。

川平慈英「自分は“洋”の人間だと思っていたので驚きました」 木ノ下歌舞伎出演の経緯を語る

東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買 (さんにんきちさくるわのはつがい)』について、川平慈英さんに話を聞きました。

僕自身も知らない僕を作り上げてくれるありがたい日々です。

「60歳になったし、ここからはスローペースでやっていこうと思っていた矢先に、心身ともに大変な舞台が次々ときて。キツいと思いながらも、今、チャレンジしている自分が楽しいんですよね」

そのチャレンジのひとつが、古典歌舞伎の本質はそのままに現代劇として描き出す木ノ下歌舞伎の『三人吉三廓初買』への参加。オファーを受け「自分は“洋”の人間だと思っていたので驚きました」と話す。

「やろうと思ったのは、以前に『薮原検校 (けんぎょう)』という舞台を一緒にやった杉原邦生さんが演出だったことが大きいです。当時、無謀とも思えるほどの膨大なセリフに苦しむ僕を杉原さんが勇気づけてくれて、結果的にとても評価をいただけたことが大きな自信になったんです。僕の少し“やりすぎ”な癖って、木ノ下歌舞伎ワールドでは必要ないものだと思うんですよね。杉原さんは、そこも把握して全部削ぎ落としてくれて、僕自身も知らない僕を作り上げてくれる。まだまだこれから本番まで苦労する部分も多いと思いますが、それもありがたい日々です」

現代劇化とはいえ、木ノ下歌舞伎では歌舞伎独特のセリフの抑揚や言い回し、所作など踏襲されている部分も多い。そのため、本稽古の前に歌舞伎の舞台の映像を見て完全再現する完コピ稽古が行われる。

「僕の場合、ミュージカルで培われた、テンポで感情を繋げていく芝居が染み込んでいるから、間 (ま) が怖いんです。動いてナンボ歌ってナンボだったから、歌舞伎のたっぷり間を取ってセリフを言う静の芝居に最初は戸惑ってしまって。でも、完コピを経験したら、目を動かすだけの芝居や、にらみ合いの間を取った芝居が気持ちよくなってしまって…歌舞伎ハイですよね (笑) 。何気ない動きで役の凄みや重厚さを出す見せ方も学んだら、役のフィット感が全然違いました」

演じるのは、土左衛門伝吉。人情味ある男ではあるが、過去に盗賊だった脛にキズ持つ身だ。

「悪行を尽くしてきた過去があり、改心して仏に仕える身になったけれど、結局因果に勝てない。主宰の木ノ下 (裕一) さんと話したときに『川平さんを見ているとポジティブな中にどこか悲哀みたいなものを感じるので、そこが伝吉に乗り移ったら』と言われたんですよね。悲哀をただ悲哀として見せると、ちょっと薄っぺらくなっちゃうので、悲哀を暗く見せるんじゃなく、陽な中に人生の悲哀、非業な性みたいなものを出していけたらと思います」

東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買 (さんにんきちさくるわのはつがい)』 和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三という「吉三郎」を名乗る3人の盗賊がひょんなことから出会い、義兄弟の契りを結ぶ。しかし因果は巡り、3人の運命は思わぬ方向へ進んでゆく。9月15日 (日) ~29日 (日) 池袋・東京芸術劇場 プレイハウス 作/河竹黙阿弥 監修・補綴/木ノ下裕一 演出/杉原邦生[KUNIO] 出演/田中俊介、須賀健太、坂口涼太郎、藤野涼子、小日向星一、深沢萌華、川平慈英、緒川たまき、眞島秀和ほか S席9500円 A席8000円 サイドシート5500円ほか 東京芸術劇場ボックスオフィス TEL:0570-010-296 (休館日を除く10:00~19:00) 長野 (松本) 、三重、兵庫公演あり。

かびら・じえい 1962年9月23日生まれ、沖縄県出身。ミュージカル『MONKEY』でデビュー。2020年にミュージカル『ビッグ・フィッシュ』で菊田一夫演劇賞を受賞。近作にミュージカル『ナビレラ』。

※『anan』2024年9月18日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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