空音央監督「お客さん第1号、よろしゅう」長編劇映画デビュー作「HAPPYEND」日本初上映

AI要約

空音央監督の長編劇映画デビュー作「HAPPYEND」が日本初の一般上映とトークショーを開催。

映画は近未来の日本を舞台に、友情やアイデンティティを描いた作品。

メーンキャストのほとんどが演技未経験だったが、世界3大映画祭に出品されるなど高い評価を受けている。

空音央監督「お客さん第1号、よろしゅう」長編劇映画デビュー作「HAPPYEND」日本初上映

 空音央監督(33)の長編劇映画デビュー作「HAPPYEND」(10月4日公開)の、日本で初の一般上映とトークショーが17日、都内で行われた。世界3大映画祭の1つ、ベネチア映画祭(イタリア)オリゾンティ部門に出品し、2日(日本時間3日)に世界で初上映。日本での公開に先立ち、国内で初めて一般上映された。

 空監督は、23年3月に71歳で亡くなった音楽家の坂本龍一さんの次男。23年には坂本さんのコンサートドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto - Opus」を手がけ、坂本さんが13年に最高賞の金獅子賞を争うコンペティション部門の審査員を務めた、ゆかりのベネチア映画祭でお披露目している。

 「HAPPYEND」は、空監督が7年の年月をかけ、日米のスタッフとともに作り上げた。近未来の日本が舞台で、幼なじみの高校3年生ユウタとコウが、仲間との5人組でつるんでいた高校3年時に、学校に忍び込み、とんでもないイタズラをする。そのことで、佐野史郎(69)演じる校長が激怒し、四六時中、生徒を監視するAIシステムを導入。そのことで、コウは自らのアイデンティティーについて考え始め、ユウタとの関係はぎくしゃくし始める。

 空監督は、製作の経緯について聞かれると「かなり自分の高校、大学時代の体験だったりをベースにしています」と明かした。「5人の仲間とは仲良くしていましたけど、大学に入り、政治性が芽生え、自分や友達の政治性で、突き放し突き放され…。今の自分はともだちのおかげ。距離を置かなければならないのは正当な理由があって…友情の崩壊は悲しい気持ちとして残っていて、映画にしたいと思った」と語った。

 ユウタを演じた栗原颯人(24)とコウを演じた日高由起刀(20)はダブル主演で、互いにオーディションを受けた際はモデル事務所に所属。今作が俳優&スクリーンデビューで、いきなり世界3大映画祭の舞台に立った。この日の舞台あいさつも初体験だったという。

 栗原は「当時、モデル事務所に入って2カ月でお話をいただいた。台本も演技も初めてで新鮮。音央さんから『ユウタってどうか?』と聞かれたから『僕、そのままです』と」と振り返った。そして「カメラの前で、人に囲まれて演じる…緊張感もあったんですけど(役として)自然にいるのは共通で思っていたこと。幼なじみ(という役どころで)距離を縮めるのが自然にでき、のびのびお芝居できた。すごくうれしかった」と撮影を振り返った。

 日高は「キャスティングいただいた時、モデル事務所に入っていて(栗原と)同じくらい。高校卒業から2カ月…俳優は、いつかやってみようと思った」とキャスティング当時を振り返った。演じたコウは、在日コリアンの役どころで「共通する部分…祖母が韓国の地が入っている。ルーツが同じだった。演じるより、いかに自分を出せるか? すごくやりやすく、演技に関わることができた」と語った。

 空監督は、仲良し5人組を演じたメーンキャストのうち、4人が演技未経験だったと明かした。撮影前には、オンラインからリアルと、入念にワークショップを繰り返したという。その助言を与えてくれたのは、ベネチア、ベルリン(ドイツ)カンヌ(フランス)の世界3大映画祭と米アカデミー賞で受賞経験を持つ、濱口竜介監督(45)だと明かした。「自分は元々、カメラ側の人間。編集もやったことがあるけれど、演技の演出はやったことがない。キャスティング、し終えた段階で(メーン)5人のうち4人が演技未経験。濱口竜介さんにアドバイスを受けた。『信頼関係を抱けるように、リラックスしてやった方が良い』と」と振り返った。

 この日が日本初上映だっただけに、空監督は「日本で一般のお客さんにお見せするので、うれしいと同時に緊張」と語っていたが、多くの拍手を受けると笑みを浮かべた。「お客さん第1号になっていただき、ありがとうございます。見ていただいて、幸せ…ここまで来るのに、長い時間がかかった。よろしゅうお願い致します」と感謝した。