三谷幸喜監督「映画の中でしか見ることができない、行くことができない場所を表現したい」

AI要約

三谷幸喜監督の最新作映画「スオミの話をしよう」が公開に向けて話題となっている。映画の内容や制作について三谷監督自身が語っており、作品の特徴や終盤のミュージカルシーンに注目が集まっている。

三谷監督は今回の作品で演劇っぽい映画を作ることを意識し、主要シーンが寒川の豪邸で展開される舞台のような演出を行った。非日常的でファンタジックな世界観を表現することに重点を置き、豪華なセットや特異な空間を作り上げた。

映画の見どころの一つであるミュージカルシーンには、長澤まさみをはじめとする出演者が多くの練習を重ねて臨み、ダンスや歌を披露している。練習に積極的に取り組んだことで、見応えのあるシーンが生まれた。

三谷幸喜監督「映画の中でしか見ることができない、行くことができない場所を表現したい」

 三谷幸喜監督(63)の5年ぶり9作目となる映画「スオミの話をしよう」(脚本も担当)が13日公開される。公開を控えた心境や、終盤のミュージカルシーンについて語った。(近藤正規)

 脚本家・演出家・映画監督、役者などさまざまな顔を持つ。最新作が公開間近となり「やっぱり緊張しますね」と言うが、自身のホームグラウンドである舞台や、脚本を担当する連続ドラマの〝初日〟を迎える感覚とは違うようだ。「舞台とは全然違う。舞台は1カ月後に初日を迎えるとなったときに、不安とか関係なく稽古でとにかく作り上げていかなきゃいけないと、みんなで知恵を出し合って必死になって作っている感が強い。連続ドラマの第1回が放送される時は、まだ(脚本の)最終回を書き上げていない。大河ドラマは特にそうですけど、第1回の時は第二十何話を書いたりしているので、まだ全然完成形でもないし、不安度で言うと最も大きい」と説明する。

 今作は主人公・スオミ(長澤まさみ)の夫・寒川の豪邸で三分の二のストーリーが展開される。「今まで以上に演劇っぽい映画を作ってみよう」と考え、撮影も長回しで舞台のような映画に仕上がった。「台本を書いている時から、寒川の屋敷が中心になるだろうなと思ったので、この映画の全精力を傾けたいというのがあった。いろいろな映画は当然あっていいし、現代日本のリアルな姿を描く映画だって当然あってもいいし、なきゃいけないとも思うんだけど、僕が作るものはあまりそこにはいかなくて、どっか日常ではあるんだけど少しファンタジックな空気が流れていたりとか、映画の中でしか見ることができない、行くことができない場所みたいなものを映画で表現したい」

 さらに「非日常的な空間みたいなものが多分僕が作るべき映画のシチュエーションなんじゃないかなっていう思いがあったので、できるだけゴージャスにした。何がゴージャスかというと、天井が高いとか照明が多いとか、いろいろ美術さんとも相談して、できるだけ華やかに見える場所を作ろうと、あまり日本映画にない世界観でやろうというところから意見が出来上がった」と語る。

 劇中終盤での見どころは長澤を中心とした圧巻のミュージカルシーン。スオミを愛した男たちを演じた西島秀俊や、坂東彌十郎などもダンスを披露。事前にかなりの練習を重ね収録に臨んだ。「あまり踊ったり歌ったりする経験のない方々もいましたけれども、当日に早めに来てもらって、簡単な動きをつけて、ちょこちょこっと踊ってもらうレベルだったら多分それはできないことはないと思うが、付け焼き刃で作ったものはやっぱりそれが見えちゃう。これはみんな結構練習したんだな、稽古したんだなと見ている人が感じてくれるぐらいのものを作りたいと思ったので、クランクインの1カ月ぐらい前から皆さんに集まってもらって稽古を重ねました」と明かした。

 ◆三谷幸喜(みたに・こうき) 1961年7月8日生まれ、東京都出身。日本大藝術学部演劇学科在学中の83年に劇団「東京サンシャインボーイズ」を結成。脚本家・演出家・映画監督として活躍し、舞台やドラマ、映画などで数々のヒット作を手がける。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では第41回向田邦子賞を受賞。2022年からTBS系報道番組「情報7daysニュースキャスター」(土曜午後10時)で総合司会を務める。今年7月に東京サンシャインボーイズを30年ぶりに復活させることを発表し話題となった。

 ◆「スオミの話をしよう」 三谷監督にとって「記憶にございません!」(19年)以来の映画。大富豪の妻・スオミが行方不明になったことから、夫が住む豪邸にスオミの4人の元夫も集結。スオミを愛した5人の男たちは誰が一番愛していたのかなど安否そっちのけで熱く語り合うが、それぞれの思い出のスオミは見た目も性格もまるで別人だった…。出演は長澤のほか、スオミの元夫役で西島秀俊、松坂桃李、遠藤憲一、小林隆、現在の夫役で坂東彌十郎など。

◆三谷幸喜監督の手がけた映画◆

公開年 タイトル

1997年 ラヂオの時間

2001年 みんなのいえ

2006年 THE 有頂天ホテル

2008年 ザ・マジックアワー

2011年 ステキな金縛り

2013年 清須会議

2015年 ギャラクシー街道

2019年 記憶にございません!

2024年 スオミの話をしよう

*監督作品のみ。いずれも脚本も担当。「ラヂオの時間」「清須会議」は原作も担当