北野武監督、ベネチア国際映画祭で照れくさそうにスタンディングオベーションを制止「反応がすごく良かった」

AI要約

北野武監督の映画「Broken Rage」が、「第81回ベネチア国際映画祭」アウト・オブ・コンペティション部門に選出され、イタリアで初上映。作品のテーマは「暴力映画におけるお笑い」で、北野監督が監督、脚本、主演を務めた。映画はクライムアクションとコメディータッチのセルフパロディーに分かれ、ビートたけしが主人公の殺し屋を演じる。

公式記者会見では北野監督が新たな挑戦について語り、浅野忠信と大森南朋がコメント。北野監督は「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの」と述べ、作品の意図を説明。浅野は北野監督との仕事について、北野監督の真摯な姿勢に感謝し、大森は北野監督との撮影現場について振り返った。

北野監督は公式上映後、ファンの反応や作品の冒険性についてコメント。浅野と大森も喜びを表明し、イタリアのファンの愛情に感謝。ベネチア国際映画祭との関わりや独自のアプローチについて言及した。

北野武監督、ベネチア国際映画祭で照れくさそうにスタンディングオベーションを制止「反応がすごく良かった」

北野武監督の映画「Broken Rage」が、「第81回ベネチア国際映画祭」アウト・オブ・コンペティション部門(特別招待作品)に選出され、イタリア現地時間の9月6日に初上映。それに先立って行われた公式記者会見とレッドカーペットに、北野監督、浅野忠信、大森南朋が登場した。

■作品のテーマは「暴力映画におけるお笑い」

2025年にPrime Videoで世界配信を予定している本作は、Amazon MGMスタジオ製作のAmazonオリジナル映画で、ベネチア国際映画祭への正式出品は日本の配信動画作品として初の快挙。

その作品性で世界中から称賛を浴び続ける北野が監督、脚本、主演を務め、彼の構想を基に「暴力映画におけるお笑い」をテーマに制作された。

■ビートたけしが主人公の殺し屋・ねずみ役に

前半では、警察とヤクザの間で板ばさみとなった殺し屋が生き残りをかけて奮闘する、裏社会を舞台に繰り広げられる骨太のクライムアクションに。後半は、同じ物語でありながら、前半と同じ物語をなぞるコメディータッチのセルフパロディーになっており、主人公の殺し屋・ねずみをビートたけしが演じる。

浅野と大森は、麻薬捜査の覆面捜査官としてネズミに捜査協力をさせようとする刑事役を担当。さらに、麻薬売買を取り仕切るヤクザの親分は中村獅童、その若頭は北野組常連の白竜が演じ、劇団ひとりや長谷川雅紀(錦鯉)、馬場園梓、鈴木もぐら(空気階段)らお笑い芸人も北野組初出演を果たしている。

■記者会見では北野監督が新たな挑戦について語る

世界初上映に先立って行われた公式記者会見とレッドカーペットには、北野監督、浅野、大森が登場。公式記者会見には、世界中から100人以上の報道関係者が詰め掛けて満員となった。

北野監督は「劇場の人向けではなく、テレビ画面で見る人に向けて今までやってみたかったことをテストでやってみた。気楽に撮ってみたら、まさかこんな(ベネチアに来る)ことになるとは。もっと真剣にやるべきだったな」と、作品が生まれた経緯を“北野節”交じりに明かし、会場を沸かせる。

62分の尺の中で2部構成となっていることに、「実際にインターネットを見たりして、意外に規制が外れて『よくこんな悪口が言えるな』と楽しく見ているが、スピード感に飲まれているのか、(本作の編集にあたり)映画の“間”じゃなくてインターネットの“間”になった」と、実験的な作品になったと語った。

北野監督の新たな挑戦を感じられる中でも、「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの。人に対する衝撃という意味では、お笑いも暴力である。暴力的なものなのか、愛なのか、日常的なものなのか、見る人によって違うのは映画や絵画などのアート。人が気付いていないことを、これが暴力だ、これが愛だとピックアップするのが大事なんだと思う」と持論を展開。

スタンダップコメディアンからキャリアを始め、お笑いの頂点に立ちながら、世界有数の映画監督として今なお活躍する北野監督だからこその観点で、“暴力におけるお笑い”というテーマについて伝えた。

■浅野忠信「(北野監督は)真っすぐな目で向き合ってくださっている気がする」

浅野は、北野監督との仕事について「武さんのような違うところで活躍されていた方が映画に来て、真っすぐな目で我々に向き合ってくださっている気がするんですよね。そうすると、他の映画監督とは全然違う要求をされるので、役に対して応えていく作業を現場でしていかないと、北野監督が認めてくれないということが分かったので、役に対する取り組み方が変わったなと。前作の『首』にしても、今回の『Broken Rage』にしても、常に新しいことにチャレンジしている姿勢も含めて、俳優として学ぶことが多かった」とコメント。

一方の大森は、北野組の撮影現場について「武さんの横にずっといることができて、浅野くんと一緒にお芝居できて、撮影の日々は本当に毎日楽しかったです。(後半のパロディーパートの撮影では)生意気ながらも『武さんにもちょっと笑ってほしい』という気持ちで撮影に挑んだんですけど、なかなかできなくて苦労しました」と振り返った。

新たな挑戦に応えた浅野、大森について、北野監督は「この2人は、俺が将来すごく期待している人たちなんで、すごく一生懸命にやっていただいて、いずれは映画界を引っ張っていく日本の役者さんだと思ってますんで、皆さんも心に留めておいてください」と海外メディアにアピール。

会場からは拍手が起こり、記者会見終了後には、北野監督が記者たちからサイン攻めに遭うシーンも。その後に行われたレッドカーペットでも、記者たちからの熱烈な「キタノコール」に迎えられていた。

■照れくさそうにスタンディングオベーションを制止した北野監督

公式上映が行われたメイン会場のSALA GRANDEには、北野監督の新作を待ちわびたファンが世界中からベネチアへ押し寄せ、1032席が埋め尽くされた。上映中は笑いと拍手の渦が起き、世界中のファンが歓喜。上映後には、熱狂に包まれたに観客から惜しみない拍手と歓声が送られ、スタンディングオベーションが6分を過ぎたところで北野監督は照れくさそうにそれを制止。

世界初上映を終え、浅野は「お客さんにものすごくウケていたのでホッとしましたし、監督も喜んでいらっしゃいました。僕が日本の試写会で見た時に感じた『面白い! 面白い!』という感覚が正しかったことが確認できて良かったです」を心境を吐露。

大森は「イタリアのファンの方は北野監督の世界観をよくご存じなのだと思いますが、こんなにも愛と喜びを持ってこの映画と向き合っていただけるんだと思い、非常にうれしかったです」と喜びを語った。

■北野監督「Broken Rage」上映後コメント

「ベネチア国際映画祭」には何度も来ているけど、今回はその中でもトップ3に入る程、反応が良かった。「HANA-BI」の時よりもスタンディングオベーションはこっちの方が長くて、面積とか体積で言えば、今回のが一番良かったなと思います。

「Broken Rage」はあまりにも映画らしくない、冒険した作品なので、「大丈夫かな?」と思ったけど、反応がすごく良かった。

「ベネチア国際映画祭」は、映画では無名だった武にグランプリをくれたので、自分たちが育てたという感覚を持ってくれてるんじゃない?

ベネチアでグランプリを取っても、あまり進化のないことをやっていたらファンに飽きられちゃうから、またチャレンジしてるところを見せないと。1本1本、ベネチアのファンがこの映画を見たらどう思うか?ということも意識しながら作っています。