パリ五輪閉会式で話題のトム・クルーズ、50m落下アクション以上に輝いたものを記者は見た

AI要約

トム・クルーズのパリオリンピック閉会式でのパフォーマンスは話題を呼んだ。ワイヤアクションやバイクでのスタジアム出口など、彼の代表作を彷彿とさせるシーンが多数あった。

クルーズは日本のファンとの交流に熱心であり、来日時にはファンサービスのために時間を惜しまない姿勢を示している。コロナ禍の中でもファンとの交流を大切にする彼の人間性が光っている。

金メダリストの日下尚もクルーズとの握手を喜び、ファンサービスの大切さを証言している。クルーズの姿勢は、舞台の上だけでなく、日常の中でもファンに夢を与え続けている。

パリ五輪閉会式で話題のトム・クルーズ、50m落下アクション以上に輝いたものを記者は見た

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム>

 11日(日本時間12日)に行われたパリオリンピック(五輪)閉会式での、米俳優トム・クルーズ(62)のパフォーマンスが話題を呼んでいる。会場のスタッド・フランス第3コーナーの屋根の上から、約50メートル下の競技場に落下した圧巻のワイヤアクションは、代表作「ミッション:インポッシブル」で演じるスパイ組織IMFのエージェント、イーサン・ハントのようだった。

 また、4年後に44年ぶり3回目の五輪を開催するロスのカレン・バス市長からオリンピック旗を受けとると、自らバイクを運転してスタジアムを出て行った。そのバイクに乗る姿しかり、その後、流れた事前撮影された映像で、飛行機に乗り込み、スカイダイビングでロスに降り立ったシーンなど、もう1つの代表作「トップガン」で演じた天才パイロット、マーヴェリックをほうふつとさせた。クルーズ自身、12日(日本時間13日)にインスタグラムのストーリーズを更新し、過去作のシーンを重ねたリール動画を投稿しており、そのあたりは自覚しているのだろう。

 そんなアクションばかりに視線が集まる中、記者が注目したのは、スタジアムに降り立ったクルーズが、選手たちとハイタッチし、自撮りしてキスもしながらステージに向かった姿だった。その姿が、来日する度に「皆さんにお会いしたかったです。本当にお越しくださいまして、ありがとうございます。アリガト」と口にするなど、大好きだと公言する日本と日本のファンに対するそれと、全く同じだったからだ。

 近年、クルーズが来日する度に、会見やイベントを取材してきた。会見では、時間が許す限り日本のメディアの質問に応じる。真剣に答えるあまり、1つの質問に対する回答が10分以上に及んだことも少なくない。ファンと直に接することができるレッドカーペットイベントなどのイベントになると、さらに拍車がかかる。炎天下だろうが、寒かろうが、風雨が激しかろうが、ファン1人1人と接し、会話し、握手し、スマートフォンの自撮りにも応じる。

 クルーズが、パリ五輪閉会式で各国代表選手とハイタッチする姿を見て、すぐ脳裏に浮かんだのが、22年5月24日に横浜港大さん橋で行われた主演映画「トップガン マーヴェリック」(ジョセフ・コシンスキー監督)ジャパンプレミアだ。そもそも同作は19年公開の予定だったが、18年に製作の都合で、20年6月(日本は7月)への公開延期が発表。さらに20年に入り、全世界がコロナ禍に陥ると、同4月2日には日本公開が同12月25日に延期と発表。同7月に、は全米公開が21年7月2日に1年、再延期。さらに同8月には、日米同時公開が同11月19日に決定も、同11月には22年5月27日に延期された。

 そんな経緯もあり、クルーズの来日は18年7月の「ミッション:インポッシブル/フォールアウト」以来、3年10カ月ぶりと少し期間が空いた。待望された24回目の来日だったが当時、まだ新型コロナウイルス感染拡大の懸念があり、主催者側は感染拡大防止の観点から、<1>サイン<2>握手<3>写真撮影はOKだが、接近しての自撮りの2ショットの自粛を参加者に求めた。

 ところが、クルーズは自らファンの元に歩み寄ると、1人1人に身ぶり手ぶりを交えて語りかけた。NGのはずだったハイタッチや、ファンの自撮りにも応じた。英語でクルーズに語りかけ、感激のあまり涙する女性ファンも相次いだ。

 一方で、コロナ禍ということもあり、レッドカーペット脇に立つことができたファンは限定400人だった。それでも、クルーズは午後6時30分過ぎまで、おおそ1時間強にわたって、全長93メートルのレッドカーペットの、両サイドで待ち受けるファンと交流した。

 ただ、4ケタ規模のファンを集めてイベントをやっていたコロナ禍以前は、ファンと交流する時間は2、3時間に及んだ。クルーズはファン1人1人との交流を続ける姿と、パリ五輪閉会式で各国代表選手とハイタッチした姿が重なった。

 パリ五輪レスリング男子グレコローマン77キロ級金メダリストの日下尚(23=三恵海運)は、日本へ帰国の途に就くシャルル・ド・ゴール空港で取材に応じた際「びっくりしました。握手してもらった」と、閉会式でクルーズと握手したと明かした。「金メダルより絶頂でした。『トップガン』は5回は見てるんですよ」と興奮しつつ振り返った。

 金メダリストを喜ばせた握手をはじめとしたファンサービスを、舞台の大小を問わずやる。ファンに夢を与え続けるクルーズの姿勢、人間性の方が、ド派手なワイヤアクション以上に輝いて見えた。【村上幸将】