″最強裏番組″パリ五輪に挑んだ″各局の戦略″とは…24年夏ドラマで「見るべき作品はズバリこれ!」

AI要約

今年の夏ドラマはパリ五輪との競合で視聴率が低調な中、TBS系の『笑うマトリョーシカ』や月9の『海のはじまり』が好調なスタートを切っている。

『海のはじまり』は新鮮なキャストと早期スタートが功を奏し、TVer登録者数やコア視聴率でトップの成績を残している。月9枠と日曜劇場枠が今夏の2強として定着し、安定した人気を獲得している。

一方、日テレとテレ朝は旧ジャニーズタレントの起用に慎重な姿勢を見せ、苦戦を強いられている。視聴者の期待に応える作品作りに追われる中、リメイク作やオリジナルドラマなどさまざまな戦略を展開している。

″最強裏番組″パリ五輪に挑んだ″各局の戦略″とは…24年夏ドラマで「見るべき作品はズバリこれ!」

旅行に花火大会に祭りと行楽に出かける機会が多く、じっくり見てもらいづらい夏ドラマ。ことに今年は″最強の裏番組″パリ五輪があるため、『笑うマトリョーシカ』(TBS系)が開幕1ヵ月前の6月28日に放送を開始するなど、各局、対策を練って臨んでいる。

「それでも五輪を見る人が多く、全体的に視聴率は低調。初回に最高視聴率を出した後に失速する作品が多いという印象です。リアルタイムで五輪、見逃し配信でドラマを視聴するのが、この夏のトレンドですね」(キー局プロデューサー)

ゆえにテレビマンは今夏、TVerお気に入り登録者数とコア視聴率(13~49歳男女の視聴率)を羅針盤としているのだが、「フジテレビとTBSの看板枠、″月9″と″日曜劇場″の2強がいよいよ定着してきた」と放送作家は分析する。

2強の一角である月9『海のはじまり』は、7月1日放送開始という早期スタートに加え、『Snow Man』の目黒蓮(27)、有村架純(31)という強力キャストでTVer登録者数は断トツの159万6000人。コア視聴率も2位につける成功を収めている。

「目黒、村瀬健プロデューサー、風間太樹監督、脚本・生方美久という布陣は、社会現象になった『silent』と同じ。なかでも注目は風間監督ですね。赤楚衛二(30)と町田啓太(34)を一躍スターダムにのし上げた『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)を見ればわかるように、男性の弱さや心の揺らぎを”愛おしい存在”として撮らせたら当代ナンバーワンの監督でしょう」(ドラマウォッチャーの川田美尋氏)

同じくウォッチャーの北川昌弘氏が指摘するように、6歳の娘・海を演じる泉谷星奈(いずたにらな)(7)の可愛すぎる演技にノックアウトされた中年男性視聴者が続出しているのも、ヒットの要因だろう。

登録者数1位は譲ったが日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)は世帯視聴率が唯一の二桁超えで、かつコア視聴率も1位と高値安定している。

「大規模なオーストラリアロケを敢行したり、チェ・ジウ(49)がゲスト出演したり、画作りが韓流ドラマなみにリッチ。主演の二宮和也(41)の脇を固める俳優陣も、竹内涼真(31)、内野聖陽(55)、小泉孝太郎(46)に趣里(33)、田中みな実(37)と多彩。これだけでも見る価値がある」(キー局プロデューサー)

2強に共通しているのは、主演が旧ジャニーズだということ。テレビマンたち一押しの『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)でも『SixTONES』の松村北斗(29)が存在感を見せている。

「おじさま人気の高い主演の松本若菜(40)とは年が離れているので、松村ファンたちは安心して見ていられる。女性ファンが多く、声優としても活躍している津田健次郎(53)をキャスティングできたのも大きい。原作はラブコメなのにうまく現代日本にマッチしたストーリーとしてドラマ化している」(放送作家)

視聴率や再生回数とともに、テレビマンが重視しているのが「SNSでの反響」だ。川田氏は「松本の上司役の藤井隆(52)が利いている」と言う。

「彼がいることで同じ枠で放送されていた『逃げるは恥だが役に立つ』を想起する人が多い。家事が苦手な主人公という設定で『私の家政夫ナギサさん』を思い出している人も少なくない。どちらも”あの楽しかったドラマと似ている”とポジティブな評価に繋がっている。枠を使った実にうまい戦略だと思います」

◆日テレ&テレ朝「苦戦の理由」

テンポが遅い、設定や展開に既視感がある、主演の小池栄子(43)の英語が酷い……等の声が上がっている宮藤官九郎脚本の『新宿野戦病院』(フジ系)だが、

「『誰の命も平等に、雑に扱う』という『新宿野戦病院』のテーマは『〇〇をしていない人は助けられなくても当たり前』という自己責任社会への問題提起として有効です。人の命を選別して芸術的に救う『ブラックペアン2』と比較して見ても面白い」(ライターの大山くまお氏)

と、ウォッチャー諸氏の評価は高い。

ちなみに作品の舞台は歌舞伎町だが、メインのロケ地は横浜。

「さすがのクドカンも、全編歌舞伎町ロケという無茶は回避したようです」(制作会社幹部)

「外ヅラはいいが中身が空っぽの政治家役を櫻井翔(42)に演じさせたことが成功。視聴率も後伸びしている」と大山氏が推す『笑うマトリョーシカ』だが、制作サイドは「全体的な嘘っぽさに没入できないと思います」と否定的だ。

「政治監修をしているのは『サンデージャポン』で政治解説をしていた国会王子こと、TBSラジオの元国会担当記者です。トラブルを起こして表舞台から姿を消した末に退社。フリーで活動しているそうですが、TBS社内では『あいつに頼んだのが失敗では?』なんて声も上がっています」(キー局プロデューサー)

今期、目立っているのが、日テレとテレ朝の苦戦だ。制作会社幹部は一つの要因として「旧ジャニーズ事務所とズブズブだった反動」を挙げる。

「世間の批判を恐れてか、旧ジャニーズタレントの起用に及び腰になっている。かつて″J枠″と言われ、彼らの指定席となっていた日テレの看板枠、土曜夜9時に持ってきたのは小芝風花(27)と大島優子(35)出演の『GO HOME~警視庁身元不明人相談室~』です」

日テレはドラマ化を巡って人気漫画『セクシー田中さん』作者が自死するという別の問題にも直面している。

「人気原作のドラマ化が難しくなった日テレは、オリジナルドラマを作らざるを得なくなった。先の『GO HOME』には『半沢直樹』の脚本家が参加、『マル秘の密子さん』は『ブラックペアン』シーズン1の脚本家らの書き下ろしです。ただ、数字的には苦戦しています」

やはり旧ジャニーズ事務所と関係良好だったテレ朝は、ゴールデンでの旧ジャニーズタレントの起用を避けている。

テレ朝関係者はこう呟いた。

「4月クールは、性加害問題が弾ける前にキャスティングされていた木村拓哉(51)主演の開局65周年記念ドラマ『Believe―君にかける橋―』などが話題になりましたけど、夏ドラマは定番の『科捜研の女』と『南くんが恋人!?』らリメイク作でお茶を濁してお休みモード。これもある種の五輪対策ですよ」

人気韓流ドラマのリメイク作『スカイキャッスル』(テレ朝系)は「松下奈緒(39)、木村文乃(36)に比嘉愛未(38)と女優陣は充実しているし、見ごたえもある」と北川氏は太鼓判を押すが、初回2位だった世帯視聴率が大きくダウン。

「ロケ地や衣装、小道具もさることながら画作りのリッチさが本家と比べると段違いに貧しく感じる。お茶を濁して作れる作品ではないのに……」(大山氏)

各局の思惑を知りつつ、良作を堪能していただけたら幸いである。

『FRIDAY』2024年8月23・30日合併号より