【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】セクハラ、パワハラ、ジェンダー差別の嵐!『ロイヤルホテル』

AI要約

LiLiCoさんがオススメする映画『ロイヤルホテル』は、フィンランドから来たバックパッカーがハラスメントや差別に直面するストーリー。

作品は現代の社会問題をリアルに描き、女性視点で描かれた友情や人間関係も注目のポイント。

酒場を舞台にした作品であることから、ジェンダー間のハラスメントを考えさせられる映画。

【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】セクハラ、パワハラ、ジェンダー差別の嵐!『ロイヤルホテル』

TV『王様のブランチ』で2001年から映画コメンテーターとして出演するほか、マルチに活躍されているLiLiCoさん。これまでも数々の映画をナビゲートしてきたLiLiCoさんに、「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画について語っていただきます。

学生の皆さんが夏休みに入り、いよいよ本格的なレジャーシーズンですね。とはいえ、この酷暑……。はい、私は毎日汗だくです! ということで、涼しい映画館で観たい、オススメの作品をご紹介しますね。今回は1作品。タイトルはホテルのようですが、ホテルが舞台ではない『ロイヤルホテル』です。

フィンランドからバックパッカーとしてオーストラリアに来たハンナとリブ。彼女らは親友同士で、楽しい節約旅行をしていましたが金欠状態に。たどり着いた荒れ果てた田舎町にあった古いパブ「ロイヤルホテル」に滞在し、バーテンダーとしてワーキングホリデーを楽しもうということに。

ただの接客業……と思いきや、彼女たちを待ち受けていたのは壮絶なセクハラ、パワハラ、ジェンダー差別の嵐! 客はもちろんのこと、店長は常に酔っ払いで、彼女らを守るどころかハラスメントの連続。即辞めたいのはやまやまながら、ふたりにはお金がないので出ていくわけにもいかず。

リブはその状況に溶け込んでなんとかやり過ごすことができたものの、まじめな性格のハンナはハラスメントや差別発言を受け入れることができず、どんどんと孤立していきます。やがて親友同士だった彼女らの関係にも変化が……。

私も日本に来たばかりの若い頃に、飲食での接客アルバイトをしていただけに分かるんですが、酒場でのハラスメントはどの国に行っても当たり前にありますよね。おまけにこの作品の舞台となっているのは、シドニーやブリスベンのようにジェンダーの平等が当たり前ではない、『プリシラ』に出てくるような砂漠の田舎町。

そもそも男尊女卑が顕著で、男たちは女性の扱いに慣れていないし、慣れる気もありません。そういうところで暮らしている男性がどうなるかといったら、想像どおりですよ。男としての権威を誇示するだけ。本当にバカバカしい価値観だけど、あるんですよ、今でも。

この映画で出てくるハラスメントは本当にさまざま。ケンカや性差別はもちろん、ドラッグ問題などなど本当にありとあらゆるハラスメント、バイオレンスが繰り広げられます。でも、これって今の社会にも必ずあること。当たり前、と思ってしまうのは簡単なんだけど、これを喫緊になくしていくべき問題と思わないといけないですよね。それが若い女性ふたりをターゲットにすることで、問題が分かりやすく表現されているんです。

また、このふたりの関係にも注目。そもそも彼女ら親友同士っていってるけど……きっと10年後には友だちでも知り合いでもなくなってるよね、と思うはず。この環境がそうした、と思うかもしれませんが、私はそうでもないと思います。

本当に心許す友だちというのは、価値観を共有できる人。そうでないと、どこかで歯車が合わなくなるし、それをストレスに感じるようになってギクシャクしちゃうもんですから。人間関係の育み方、選び方についても考えさせられると思いますよ。

同じく酒場を舞台にした女性映画といえば、『コヨーテ・アグリー』があります。こちらはめちゃポジティブだし楽しい青春もので、私が大好きな作品です。だけど、そこにもちょっとしたハラスメント描写があるので、酒場にまつわる……いやジェンダー間にまつわるハラスメントはいつの時代もあるんだな、ということを分かっていただけると思います。ぜひ、『ロイヤルホテル』を観た後にでもチェックしてみてくださいね。

(C)2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW

取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己

『ロイヤルホテル』

上映中

■LiLiCoプロフィール

1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。