「奇跡の歌声」天性の男性ソプラノ歌手・岡本知高が学校訪問コンサートを続けるワケ「“さよなら”というのが悲しくなるくらい、子どもたちと楽しい音楽の時間を過ごしています」

AI要約

天性の男性ソプラノ歌手である岡本知高が学校訪問コンサートについて語る。最初のコンサートは大学1年の時で自己満足のためのステージだったが、子どもたちの反応にがっかりし、親しみやすい曲を歌うことに決めた。

学校訪問コンサートでは子どもたちとの距離感を大切にし、選択式の質問や楽しい時間を共有することで、子どもたちの興味を引きつけている。子どもたちとの関係を楽しみながら維持している。

岡本知高は芸術を押しつけず、子どもたちとの音楽の共有を大切にしている。コンサートを通じて、子どもたちに楽しさや音楽の素晴らしさを伝えることを意識している。

「奇跡の歌声」天性の男性ソプラノ歌手・岡本知高が学校訪問コンサートを続けるワケ「“さよなら”というのが悲しくなるくらい、子どもたちと楽しい音楽の時間を過ごしています」

 奇跡の歌声とも呼ばれるクラシック音楽歌手の岡本知高。世界的にも希有な「天性の男性ソプラノ歌手」として、その歌声はジャンルの垣根を超えて人々を魅了してきた。CDデビュー20周年を迎え、テレビ番組への出演やコンサートツアーと精力的に活動している岡本知高のチェンジとは?【第4回/全5回】

 岡本さんが大事にしている活動のなかに、学校訪問コンサートがある。これまで小学校や中学校、高校、短期大学に訪問してきた。もしかしたら、コンサート自体を初めて見るかもしれない学生たちの前で、歌声を披露するきっかけは何だったのだろうか。

「僕が習っていた声楽の先生が、校長先生を務めていた小学校に“歌いに来ませんか”と声をかけてくださったのがきっかけでした。ちょうど大学1年のときで、それが正確には僕の初めてのソロコンサート。

 そのときに僕が大学で習っていた難しい曲を歌ったんです。今思い返すとそれはもう上手く歌おうとする自己満足のためのステージだったから、観客の子どもたちが退屈して、ざわざわするんですよ。

 その反応にがっかりして、先生に“もう一度、歌う機会をください”と直談判した。そのときは人気のアニメの曲や、学校の校歌を歌ってみました。子どもたちにとっても、知っている曲をソプラニスタが歌うとこうなるっていうのがわかると興味を持ってくれて、話す内容にも反応をしてくれるようになってきたんです」

――学校訪問コンサートでは、どういう部分が印象に残っていますか?

「僕が“世界で一番好きな食べ物は餃子なんだけれど、みんなは何が好き? ”って聞いたら、子どもたちが一斉にバーって答えてきた。学校訪問コンサートで学んだことは、子どもたちにはイエスかノーという選択式の質問しかしてはいけないっていうことですね(笑)。

 僕は、就職活動もしたことがないし、子どもみたいな天真爛漫な心を持ったまま大人になってしまった。だから子ども達との距離感も、大人と子どもという感覚を抱かなかったんです。大人のお客様は僕にとってはお金を払ってコンサートに足を運んでくださっている。

 でも、子どもたちは学校の芸術鑑賞会という名目でコンサートを“見せられている”から、僕にとっては一番の難敵だったわけです。僕にとっては、それが楽しかった。いつも“さよなら”というのが悲しくなるくらい、子どもたちと楽しい音楽の時間を過ごしています」

 学校訪問コンサートには、岡本さんならではの哲学があった。

「芸術って素晴らしいとか、歌ってこんなに楽しいって押し付けるのがすごく嫌なんです。好きな服を着た歌うことが好きなお兄ちゃんが、大人になってソプラノの声で歌っている。それを子どもたちが見てくれている。

 それが僕にとっての名刺代わりというか、学校訪問のコンサートなんです。だから大人向けの公演と、感覚としては何ら変わらないと思っています。音楽の先生って子どもたちに与える立場だと思うんですが、僕は子どもたちと音楽の共有をしたい」