松本幸四郎が挑む「京極歌舞伎」 ミステリー作家初脚本「狐花」 歌舞伎座で8月上演

AI要約

ミステリー小説家、京極夏彦(61)が初めて歌舞伎のために書き下ろした「狐花葉不見冥府路行」が八月納涼歌舞伎で上演される。

「狐花」は「百鬼夜行」シリーズに連なる謎解き物語で、洲齋を主人公とする作品。

歌舞伎界に新たな風を吹き込む「京極歌舞伎」が幸四郎演じる洲齋を通じて実現される。

松本幸四郎が挑む「京極歌舞伎」 ミステリー作家初脚本「狐花」 歌舞伎座で8月上演

ミステリー小説家、京極夏彦(61)が初めて歌舞伎のために書き下ろした「狐花 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)」が8月4日、東京・歌舞伎座で開幕する「八月納涼歌舞伎」第3部で上演される。京極の「百鬼夜行」シリーズの主人公で古本屋を営む京極堂こと中禅寺秋彦の曽祖父、中禪寺洲齋の時代を描き、洲齋を松本幸四郎(51)が勤める。

■「夢の夢の夢」

「狐花」は累計発行部数1千万部を超える「百鬼夜行」シリーズ、そして直木賞など文学賞3冠を果たした「巷説百物語」シリーズに連なる謎解き物語。洲齋は今年6月に刊行されたシリーズ完結編「了(おわりの)巷説百物語」(KADOKAWA)にも登場するキャラクターだ。

7月上旬に東京都内で開かれた取材会で、幸四郎は「京極さんの作品を歌舞伎で上演できるのは、夢の夢の夢ぐらいに思っていた。それがやっと実現するときがきたということで、本当に興奮している」と喜んだ。

京極の作品について「小説でありながら優しいというか、怪しいというか、艶っぽい音楽が聞こえてくるような感じがする。歌舞伎とは違う色彩的な美しさを感じた」と印象を語った。

脚本を初めて読んだときは「せりふ劇に音楽が乗っかっているような、シェークスピアの作品のような、世話物ではない世界観だと思った」という。「いわゆる〝京極歌舞伎〟という、この世にこれまで存在しなかった歌舞伎を新たに作るという姿勢で取り組みたい」と意気込む。

■変わってこそ伝統

一方、今回初めて歌舞伎の脚本を手掛けた京極は「歌舞伎自体は何度も見ていて、歌舞伎の台本もよく読んでいた。〝お化け系〟の人だと思われているが、ミステリーも書いている。歌舞伎を作るなら、歌舞伎でないとできない仕掛けを考えようと思った」という。具体的な内容については「これ以上言うとネタバレになるので」と苦笑いを浮かべた。

歌舞伎への造詣も深い京極は「歌舞伎の舞台の間合いや所作などは、中禅寺秋彦のせりふのリズムに、かなり強い影響を与えていると思う。ほかのキャラクターのせりふや動きとは明らかに違う部分」とした。

その上で今回、中禅寺秋彦の曽祖父の洲齋を主人公にした理由について、「ある意味で必然的だった。(自身の作品の中には)落語的なキャラクターとかいろいろあるが、他の人は出しにくい。いちばん〝間合い〟みたいなものに近しいキャラクターとして造形されている」と明かした。