中村鷹之資、野村裕基と「二人三番叟」 自主公演「翔之會」は「何もかもが勉強」

AI要約

若手歌舞伎俳優の中村鷹之資が恒例の自主公演「翔之會」を開催する。今年は狂言師の野村裕基と共演し、能楽堂にちなんだ演目に挑む。

鷹之資は「翔之會」を始めたきっかけや過去の舞台での挑戦、裕基との共演について語る。

両者は互いの演技から刺激を受け、未来の古典芸能を担うことへの思いを共有している。

中村鷹之資、野村裕基と「二人三番叟」 自主公演「翔之會」は「何もかもが勉強」

 踊りに定評がある若手歌舞伎俳優の中村鷹之資が、古典の大作に取り組む恒例の自主公演「翔之會」を8月12日に東京・国立能楽堂で催す。9回目の今年は、狂言師の野村裕基と踊る「二人三番叟(ふたりさんばそう)」や、「棒しばり」など能楽堂にちなんだ演目に挑む。

 「翔之會」は鷹之資が14歳の時、踊りの名手で人間国宝だった父、五世中村富十郎の三回忌をきっかけに始め、これまで父が得意とした「うかれ坊主」「船弁慶」「二人椀久」などに挑戦。7回目の2022年に踊った「船弁慶」は、翌年の歌舞伎座公演につながった。鷹之資は「会を作るところから、何もかもが勉強になります」と手応えを語る。

 能楽の師匠である片山九郎右衛門の紹介で知り合った裕基とは1999年生まれの同い年。鷹之資は「芸の道を志す者同士、同じ舞台で一緒にやりたいねと話していた」と言う。それが実現したのが今年1月。裕基の父、野村萬斎が石川県立音楽堂でプロデュースした「萬斎の新春玉手箱」で、「二人三番叟」を踊った。今回はその再演となる。

 歌舞伎には狂言由来の演目も多く、五穀豊穣を祈る「三番叟」はその一つだ。1月の「二人三番叟」では三味線演奏を入れず、狂言に寄せる形で上演した。鷹之資は「われわれ(歌舞伎)の『三番叟』が柔らかいとするならば、狂言の『三番叟』は硬く、鋭い。体の使い方の違いを楽しんでいただけたらと思って作りました」と話す。

 実際に演じてみると、互いに刺激も受けた。鷹之資は「裕基さんは体から発せられるパワー、空間をグッと支配する力がすごい。大地のエネルギーが感じられた」と振り返り、裕基は「鷹之資さんは体の重心がしっかりしているので、型が崩れない。体の幹が大事だと再認識した」と話す。今回も互いの呼吸をしっかり合わせていくつもりだ。

 ジャンルは違えども、共に古典芸能の未来を担うことへの思いは同じ。鷹之資は昨年、「刀剣乱舞 月刀剣縁桐」「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」「流白浪燦星(ルパン三世)」などの新作歌舞伎に相次いで出演し、「きちっとしたものをやれば、今の方々にも響く」と実感した。「古典を守って、これからの時代の方々にも見て、楽しんで、感動していただけるものを作るのが私たちの使命」と強調する。

 裕基も「父が狂言の身体性などを生かした作品を作ってきたように、僕もいずれできたら」と語りつつ、「今はいろんな経験をしていかなくては」と気を引き締めた。

 翔之會の「棒しばり」では、先輩俳優の尾上松緑の指導を仰ぎ、その息子の尾上左近と共演する。7歳下の左近について「芸に対して真面目で、一緒に踊ると楽しい。これからも一緒にやっていきたい役者さんです」と期待を込める。ほかに、「刀剣乱舞」で共演した琵琶奏者の長須与佳が「扇の的」などを演奏する。(時事通信社・中村正子)