コロナ禍の日本救うため、徳川家康らがAIでよみがえる 笑いだけでなく現代への批評性も シネマプレビュー 新作映画評

AI要約

武内英樹監督が手掛ける「もしも徳川家康が総理大臣になったら」という映画は、笑いと涙と独特の急速テンポで観客を楽しませる作品だ。新型コロナウイルスが日本に流行し、AIでよみがえった歴史上の偉人たちが描かれるストーリーで、家康役の野村萬斎や竹中直人、GACKTらの個性豊かな演技に注目だ。

もう一つの作品「DitO」は、父と娘による家族の再生物語を描いた作品で、結城貴史演じるボクサーとその娘の絆がテーマになっている。日本・フィリピン合作であり、異文化の中で繰り広げられる物語は感動的で美しい映像も楽しめる。

どちらの作品も26日から全国公開となるので、映画ファンはお見逃しなく。

コロナ禍の日本救うため、徳川家康らがAIでよみがえる 笑いだけでなく現代への批評性も シネマプレビュー 新作映画評

公開中の作品から、映画担当の記者がピックアップした「シネマプレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。

■「もしも徳川家康が総理大臣になったら」

「翔んで埼玉」や「テルマエ・ロマエ」などヒット作を次々に手掛ける武内英樹監督が、同名の小説を映画化。笑いと涙と独特の急速テンポで、今回も観客を快調に楽しませる。

新型コロナウイルスが流行する日本の窮地を救うため、AI(人工知能)でよみがえった徳川家康ら歴史上の偉人たちが組閣。国民に支持されるが、裏にはあるたくらみが隠されていた。

家康役の野村萬斎を筆頭に、偉人役には竹中直人、GACKT…とインパクトのある顔ぶれをそろえた。

竹中はNHK大河ドラマでも演じた豊臣秀吉を〝怪演〟。織田信長を超える魔王ぶりを発揮するが、悪乗りなどではなく、これが萬斎家康の清廉さを引き立て、ひいては作品の核となる現代の日本への批評と、未来へ託す希望の表現につながる。面白おかしいだけの作品ではない。

ヒロインの浜辺美波は、未熟だが誠実な新人記者の役を好演。観客の目線に一番近い存在として、この突拍子もない物語で迷子にならないようガイドの役割をうまく果たしている。

26日から全国公開。1時間50分。バリアフリー上映あり。(健)

■「DitO」

父と娘による家族の再生物語に新たな佳作が加わった。ボクシングが捨てられず妻子を日本に残し、フィリピンで独り生きる神山英次(結城貴史)のもとを突然、娘の桃子(田辺桃子)が訪れ、母(尾野真千子)が亡くなったと告げる。

主演の結城が監督も務めた。英次がボクサーとして再起を図るのは手垢がついた展開だが、結城と田辺は抑制を利かせ、父娘は対立するのではなく互いを優しく見守る。尾野の「恐れるな、うつむくな、拳を上げろ」というせりふも効果的に響く。また、フィリピンの乱雑な町並みと壮麗な自然風景をとらえた映像は色彩豊かで美しく、物語に抑揚を付けている。日本・フィリピン合作。

26日から全国順次公開。1時間58分。(健)