『西園寺さんは家事をしない』楠見の“変化”を松村北斗が好演 西園寺さんに芽生えた感情

AI要約

西園寺一妃と楠見俊直が“偽家族”お試しを検証する『西園寺さんは家事をしない』の第3話では、共同生活が効率的で良い影響をもたらすことが示される。

楠見の家族に対する姿勢や心境の変化、そして西園寺さんの家族に対するわだかまりも描かれ、関係性の複雑さが浮き彫りになる。

異なる背景と性格の登場人物たちが絡み合いながら、家族のあり方や葛藤が丁寧に描かれている。

『西園寺さんは家事をしない』楠見の“変化”を松村北斗が好演 西園寺さんに芽生えた感情

 共同生活に留まらず西園寺一妃(松本若菜)と楠見俊直(松村北斗/SixTONES)親子が“偽家族”お試しを検証することになった『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)第3話。

 これは決して結婚やルカ(倉田瑛茉)の母親代わりという話ではなく、「家事にしろ育児にしろみんなでやった方が効率的」だからこそ、気の使わない関係性が必要で、チームになろうという西園寺さんからの発案による。そしてその目論見通り、楠見が作ってくれた朝食を食べた西園寺さんは仕事も絶好調。楠見もルカのあれこれを1人で抱え込む必要がなくなり、朝の貴重な時間も体力も温存でき、仕事が捗る。

 「迷った時は不安でもワクワクする方へ行きたい」という西園寺さんの方針が、婚姻関係だけによらない共同体の結びつき、血縁関係に頼らない子育てという壮大な社会実験に挑戦できているのが興味深い。楠見自身も半信半疑のこの検証期間なのだから、彼の亡き妻・瑠衣(松井愛莉)の母親の里美(奥貫薫)の目には全く理解不能に映るのは当然のことだ。

 いかにも厳格な雰囲気が充満する里美は、はなから楠見が一人で娘を育てるのは無理だと決めつけ、自分が孫を引き取ると言い出す。それに腹を立てるのはわかるが、ここでも楠見は「本当の家族じゃないんで」と一蹴してしまう。彼は頑なに「本当の家族」にこだわりすぎているようにも思える。そんな里美を“偽家族”ハウスに招き入れ、泊まるようにまで促す西園寺さんもまたぶっ飛んでおり、楠見とは対極にいる存在だからこそ、これはこれでバランスが取れているのかもしれない。

 しかし、西園寺さんもまた専業主婦で、家庭のこと一筋だった母親が家を出て行ってしまった過去も相まってか、父親との間にはわだかまりを抱えているようだ。他人の家庭のことは放っておけなかったたり、客観的に冷静に見られるのに、いざ自分の家族のこととなるとなぜか素直になれなかったり、照れ臭さもあるのか向き合うことを避けようとしてしまったり、後回しにしてしまったりする。家族って厄介だ。

 “家族”はただでさえ閉じられてしまいがちな関係性だからこそ、西園寺さんのように少し距離のある人間がそこに加わることで、開けた関係性にしていけた方が健全なのかもしれない。西園寺さんのお節介が功を奏し、里美と瑠衣やルカのことを話し合える関係性を築けた楠見はまた一枚鎧を脱ぎ捨て、柔和な表情を見せることができていた。楠見も楠見で、近くにいたのに妻が亡くなってしまったことをどこか自分のせいだと負い目に感じているところがあったのかもしれない。だからこそ誰にも頼らず自力で娘を育て上げようと頑ななまでに姿勢を崩せなかったところもあるのだろう。

 硬派で何事もそつなくこなしているかに見えて、不器用さも滲む楠見役を好演している松村は、楠見が周囲に対して作っている見えないバリアを上手く表現している。だからこそ、言葉少なで一見つっけんどんな印象を与える楠見の中で巻き起こる心境の変化を、相手との距離感の違いで自然と見せてくれている。

 これまでは西園寺さんから誘われても断っていた晩酌を楠見自らが誘い、2人してグラスに移したビールで乾杯するシーンが観られて安堵した。こんな大人だけのリラックスした時間を楠見が持てたのは1年ぶりなのではないだろうか。そして、あんなに効率至上主義の西園寺さんに唐突に恋心かもしれないこれまでとは異なる感情を芽生えさせられるのも、全て心の内は見せてはくれない松村扮する楠見ゆえだと納得できる。

 さて、“偽家族”には大敵にも思える好意の種に西園寺さんはどう向き合うのか。彼女と前職の元同僚だったことが明かされた料理系YouTuber・カズト横井(津田健次郎)とのプロジェクトも始動するようだが、横井の存在感もさらに増していきそうだ。