松村北斗の“父親”の佇まいの説得力 倉田瑛茉との“クランクアップロス”を勝手に心配

AI要約

松村北斗が演じるシングルファーザー楠見俊直と娘の愛情深い関係性が描かれる『西園寺さんは家事をしない』。楠見の父親としての姿や日常生活、偽家族としての新たな展開が描かれる。

松村北斗の演技による楠見の表情豊かな変化や家事を担当する姿、偽家族としての生活開始を契機に起こる新たな展開に期待が高まる。

楠見が西園寺さんの部屋に現れるコミカルなシーンや、楠見としての新たな感情や役割が描かれる第2話までの展開が要約されている。

松村北斗の“父親”の佇まいの説得力 倉田瑛茉との“クランクアップロス”を勝手に心配

 『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)が放送される前、松村北斗が倉田瑛茉を抱っこする姿がSNSに流れてきた。朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)をきっかけにして『すずめの戸締まり』、『夜明けのすべて』など、筆者が観てきた作品全てで確かな信頼感を生んできた松村に対して父性を感じさせるその姿は意外であり、観たいという強い動機になっていた。

 『西園寺さんは家事をしない』で松村が演じる楠見俊直は、4歳の娘・ルカ(倉田瑛茉)と暮らすシングルファーザー。アメリカから帰国してきた楠見は西園寺一妃(松本若菜)が勤めるアプリ制作会社「レスQ」にエンジニアとして入社することになるが、住んでいたマンションが火事になってしまい、あろうことか娘と漫画喫茶を転々。仕舞いには夏風邪をもらった楠見親子を西園寺さんが家に迎えることとなる。

 家と言っても、西園寺さんが購入したマイホームについている賃貸物件に楠見親子を次の住まいが見つかるまでの間、仮で暮らしてもらうというもの。会社の上司と部下であり、大家と店子のような関係性から、生活の中で抱える気遣い、ストレスを解消するため、西園寺さんが前例のない関係として偽家族になることを提案。7月23日放送の第3話から、いよいよ偽家族としての生活がスタートする。

 第2話までで印象的なのは、やはり松村の父としての姿だ。会社を定時退社して保育園に預けたルカを迎えにいき、ご飯を食べさせ、風呂に入れ、寝かしつけた頃には夜遅く。仕事、家事、育児の忙しない日々を送る楠見からは、「僕が一人で立派に育ててみせます」という妻・瑠衣(松井愛莉)を失ったことによる使命感にも似た覚悟を感じさせるが、その根っこにはルカへの愛情がある。一方のルカは4歳という年頃もあり駄々をこねて父親を振り回してしまうこともしばしばだが、公式サイトのプロフィールには「パパのことが大好き。とにかく大好き。」という愛らしい紹介文が記載されている(ちなみに、飼い犬のリキの「西園寺さんのことが大好き。とにかく大好き。」という紹介文との対比になっている)。

 その相思相愛の関係性は、冒頭で触れた記者会見だけでなく、事前番組やSNSで公開されているメイキングなどから、撮影裏でもまるで本物の家族のようなスキンシップを取っていることが分かる。休憩中には第2話の劇中に登場したリキ用のスーパーボールで遊んだり、父の日には倉田が松村にフォトフレームと似顔絵をプレゼントしたり、松村が倉田に撮影内容をレクチャーする場面も。その距離の近さは、クランクアップの時を想像すると胸が苦しくなってしまうほどだが、松村が倉田に向ける優しい眼差しはそのまま楠見としての芝居の中に生きている。

 アメリカ帰りの天才エンジニアで、ロジカルズバズバ男子として、パソコンを操りながらビジネス英語を話したり、初日の出勤早々に西園寺さんたちに挨拶代わりとして企画にダメ出しをしたり。カタカナの多い難解なセリフに、監督からは1.25倍速で話すようにディレクションが入っていたほど。ミステリアスでクールという第一印象は松村のパブリックイメージとも通ずる部分があるが、それは第1話の序盤のみで、第2話まででも様々な表情を見せてくれている。

 「変です、異常です、普通じゃありません」が口癖の楠見は、こうあるべきという父親像に縛られてもいる。それは西園寺さんからすれば自己犠牲とも捉えられ、実際に楠見は家事と育児に忙殺されていた。彼はルカを西園寺さんに預けた夜に「解放された」という思いが込み上げてきた。押し殺していた感情、ダメな父親(であっていい)としての姿を初回では印象付けていた。

 第2話では恩を受けてばかりの西園寺さんの部屋に「家事(火事)の恩返し」として現れる少々コミカルな姿。楠見は気づけば西園寺さんと一緒にいることで徐々に表情豊かに、柔らかくなってきており、洗濯機を開け中に入っていた西園寺さんの下着類に慌てる一幕もあった。偽家族として生活が始まることで、これから事件が起きることは必須。西園寺さんが最も踏み込まれたくない、シルバニアファミリーの部屋を楠見はどう受け止めるのか。そして、何やら西園寺さんと過去に何かがあったカズト横井(津田健次郎)の登場によって、さらなる楠見としての松村の芝居が引き出されていきそうだ。