VRで体験する“異変”は本能が“ヤバイ”と警告してくる……! 『8番出口VR(The Exit 8 VR)』レビュー

AI要約

2024年7月11日に配信開始となるVRホラーゲーム『8番出口VR』の先行プレイレポート。

ゲームの内容や新要素、プレイ体験などを詳細に紹介。

異変の探索難易度や臨場感、新たな異変の追加などが盛り込まれた感想。

VRで体験する“異変”は本能が“ヤバイ”と警告してくる……! 『8番出口VR(The Exit 8 VR)』レビュー

 拝啓、お母さん。俺、もうここからもう出られないかもしれません。

 2024年7月11日に配信開始となる『8番出口VR(The Exit 8 VR)』。

 「異変を見つけたら戻る。なければ進む」

 そんなシンプルなゲーム性でありながら、“異変”のランダム性や、プレイする人間が“疑心暗鬼”に陥ることでさまざまなドラマを生み出し、大流行となった『8番出口』が、ついにVRに浸食。より没入感のある“地下通路”を歩ける日がやってきた。

 「VRで体験する“異変”」。聞いただけで、なんだかすごそうである。

 今回はそんな本作を、深夜に『VRChat』でホラーワールドをひとり散策するのが趣味である筆者が先行プレイ。ルンルンで異変だらけの通路をお散歩し、感じたことを書いていく。

 本格的なレポートの前に、『8番出口』という作品を知らない読者に向けて、本作に関して簡単に説明しよう。「知っているよ」という読者の皆様は、読み飛ばしていたいただきたい。

 『8番出口』は、地下通路からの脱出を目指すウォーキングシミュレーター。操作は移動と視点操作のみで、戦闘などはなし。以下のルールにしたがって歩き続けるゲームだ。

・異変を見逃さないこと

・異変を見つけたら、すぐに引き返すこと

・異変が見つからなかったら、引き返さないこと

・8番出口から外に出ること

 舞台の通路は、進んでも進んでも同じ景色が“繰り返す”異常空間。ルールに従って8周することで初めて“8番出口から外に出る”ことができる。しかし、“異変”があるのに進んでしまったり、逆に“異変”がないのに戻ってしまうと、最初からやり直しとなってしまうため、絶対に“異変”を見逃してはならない。

■“孤独”に8番出口を求めさまよう恐怖

 VRになった『8番出口』と通常版との大きな違いであり、魅力でもあるポイントは、「自分の体(頭)を動かして周囲を見回す」こと。そして、自分の“手”も操作にあわせて動く2点にある。モニター越しに見ていた“地下通路”と、VRで体験する“地下通路”では、臨場感のレベルが別格だ。

 グラフィックこそ、通常版と同じく“そこそこ”な印象であっても、その空気感は現実と遜色がない。蛍光灯の音や足音といった音響も立体的に聞こえるため、フッと我に返った時に襲ってくる“孤独感”に「本当にここから出られないのではないか」という考えがよぎるほどだ。

 書き忘れたが、筆者は通常版『8番出口』をクリア済み。さらに、前述した通り、筆者はひとりでVRホラーを楽しむのが趣味であり、そんな孤独感が味わえるのは醍醐味とも思っている。……そんな自分でも、本作で覚えた“孤独感”はかなりのものだった。仮に、ホラーが苦手な人が異変のドツボにハマって永遠にループし始めたら、発狂してもおかしくないのではないだろうか。

 一方で、ゲームそのものの体験は、通常版と変わらぬ安心感がある。見慣れた“おなじみの案内板”を横切り、S字の曲がり角を進めば、1本の通路と反対側から歩いてくるおっちゃん。もう何度見たかもわからぬ光景に、実家に帰ってきたような感覚すら覚える。また、今回は自分の手もあるので、おっちゃんに手を振ったり、肩をポンポンすることもできて楽しい(意味はない)。ただ、「床に寝っ転がって異変を探してみるか!」と這いつくばってみたところ、一定の高さより下には下がれない仕様となっている模様。おっちゃんをローアングルで撮影できなかったのは残念だ。

■VRで体験する“異変”は一味違った

 肝心の“異変”に関しては、基本的には通常版にあったものが現れる。ポスターの絵柄が変わったり、水が流れてきたり、右側の扉が開いたり……。初見の方ならびっくりするだろうが、すでに知っている方は“見慣れた異変”の登場に「キターッ!」と思えるだろう。

 ……しかしながら、内容は同じなのに“異変を見つける難度”と、見つけた時に感じる背筋がぞっとするような感覚は、通常版とまったく異なる。もちろん、よい意味で。

 異変を見つける難度に関していえば、通常版と比較してシンプルに難しくなったと感じた。理由は、VRならではの「視野の狭さ」にある。モニターで周囲を見渡しやすかった通常版に比べて、VRヘッドセットを装着して“自分の視点”で異変を探してみると、すぐ隣のものですら見逃してしまうので不思議だ。

 たとえば、天井の蛍光灯がいびつに配置される“異変”のシーン。ほとんどの人が、一発で「蛍光灯、めっちゃ曲がってるじゃん!」と思っただろう。筆者だってそう思う。なんなら、この異変は通常版にも登場するので事前に知っているし。

 そんな筆者でさえ、実際に遊んでいる時は、“真下で見上げるまでまったく気づかなかった”のである。見つけた時には「えっ。いま、これ見逃してたの?」と驚愕した。本当に。

 “自分の視界”で探すという行為は、それくらい視野が狭まってしまうのだ。「なにかあるのではないか」と焦点を絞っていると、特に天井と足元は見落としがち。みなさんも注意して進んでほしい。

 そして、“見つけた時に感じる「ゾッ」という感覚”。文字通り“感覚”の話なので、人によって感じ方は変わるだろうが、VRホラーへの耐性がそこそこあり、通常版を予習済みの筆者ですら、VR版でホラー系の異変を見つけた時には体がぞっとしてしまった。没入感があるあまり、“異変”に対して本能が「ヤバイぞ!」と本気で警告してくるようだ。楽しくて仕方がない。

 たとえば、“通路に見知らぬスーツの男性がふたり立っている”という異変。

 通常版で体験した時には、「おっ、なんかおるやんけ」くらいでまったく驚かなかったのに、VR版では角を曲がった瞬間に現れたふたりが目に入った瞬間に「なんかやばい! 逃げろ!!」と本能に命令され、体がビクッとなった。全部知っている光景なのに、不思議なものだ。これで初見だったら……腰が抜けていてもおかしくない。自分の目と耳で感じる“異変”は、まさに“異変”であると強く感じられるものだった。

 なお、VR版で新たに追加された異変もある。ネタバレになるため内容は伏せるが、通常版をやりこんだプレイヤーほど探すのが難しいかもしれない。筆者が見つけた時には「うお……まじかぁ……」と、かなりびっくりした。ぜひ楽しみにしておいてほしい。

 そんな感じで、本能的に恐怖を覚える感覚に快感を覚えながら、ウキウキ気分で通路をお散歩してみた『8番出口VR』。試しに本気で挑んでみた1周目は10分ほどでクリア。ゲーム自体に大きな変更が加えられてはいないので、プレイタイムとしてはそんなものであろう。

 2周目以降は、“お知らせ”も登場して、異変収集にもいそしめる。いろいろな異変を探してみようとすればするほど、見落としが増えるのはなぜなのだろう。

 さあ、異変ハンターとして、今日もまた0番から歩いていこう。

 追伸:本作で“地下通路”にハマった方。ぜひ千葉県成田市・成田空港の第二ターミナルと東成田駅を結ぶ地下通路を訪れてみてほしい。きっと気に入るはずだ。