医者も恐れる病気…「腹部大動脈瘤切迫破裂」と「僧帽弁手術後左室破裂」~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.9~

AI要約

2話では心臓血管外科医が恐れる代表的な病気である腹部大動脈瘤切迫破裂と僧帽弁手術後左室破裂が取り上げられました。

腹部大動脈瘤は血管の硬化により拡大し、破裂の危険性が高まります。直径が6cmを超えると破裂するリスクも高まるため注意が必要です。

高血圧や高脂血症、糖尿病などの悪い条件が揃うと、血管の弾力性が失われてしまい、大動脈瘤のリスクが増加します。

医者も恐れる病気…「腹部大動脈瘤切迫破裂」と「僧帽弁手術後左室破裂」~『ブラックペアン』監修ドクターが解説 vol.9~

二宮和也主演で6年ぶりに日曜劇場に帰還する『ブラックペアン シーズン2』。シーズン1に引き続き、医学監修を務めるのは山岸俊介氏だ。前作で好評を博したのが、ドラマにまつわる様々な疑問に答える人気コーナー「片っ端から、教えてやるよ。」。シーズン2の放送を記念し、山岸氏の解説を改めてお伝えしていきたい。今回はシーズン1で放送された2話の医学的解説についてお届けする。

※登場人物の表記やストーリーの概略、医療背景についてはシーズン1当時のものです。

2話では我々心臓血管外科医とくに血管外科医にとって代表的な病気と、この先の未来には絶対にぶちあたるであろう、同時に心臓外科医がもっとも恐れている病気(合併症)が出てきました。腹部大動脈瘤切迫破裂と僧帽弁手術後左室破裂です。

■腹部大動脈瘤(切迫)破裂とは

心臓から出た血液は大動脈の中を流れ、中小動脈、毛細血管を経て全身の細胞に分配されます。大動脈は心臓から出ると大動脈基部、上行大動脈、弓部大動脈、下行大動脈…腹部大動脈、総腸骨動脈、大腿動脈となり足の動脈となって足先まで血液が流れることとなります。

足の付け根を触るとドクドクと血管が拍動しているのですが、それが大腿動脈です。

今回はお腹にある腹部大動脈が瘤となってしまった腹部大動脈瘤の患者さん(小山)が救急搬送されてきます。腹部大動脈は通常は2~3cm程の直径です。健康な大動脈の壁はゴムのように弾力があり、多少血圧が上昇しても、その圧力を受け止めて滑らかに血液が流れるようになっています。

しかし、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、タバコ、ストレス、家族歴…血管に悪い条件がそろうと、血管は弾力性を失っていってしまいます(動脈硬化)。動脈が硬くなると、血液の流れる圧力を受け止めきれずに動脈は拡大してきてしまいます。

一般的に硬くなると丈夫になるように思われますが、動脈の場合は硬くなる=脆くなるのです。風船と一緒で、大きくなればなるほど破裂の危険性が増します。どんどん大きくなって直径6cmを超えると1年間で約10%の方で破裂してしまうというデータもあります。